問題解決に役立つロジカルシンキング(論理思考)を基礎から学ぶ。

問題の定義

第2章 問題解決の主役:続きページ(1)→次のページ(2)へ

2.1 問題とは「現状」と「あるべき状態」とのギャップ

「問題解決」について学ぶ第一歩として,そもそも「問題」とは一体何かを整理しておく必要がある.「問題解決」という場合の「問題」とは「広義の問題」を指しており,次の2 つがある.

  • 1) 狭義の「問題」に相当する問題

製品・サービスの品質問題,販売不振や事故・トラブルの発生など,現状の「困った事態」が想定される問題である.これらの問題には必ず特定の原因がある.

  • 2) 広義の「問題」に含まれる問題

次期商品の開発,新たな技術の確立やある製品の売上を2 倍にするなどの「問題」である.それは例えば,物理学や数学で「次の問題を解きなさい」などというのと同じであり,「困った事態」が想定されるわけではなく,単に「課題」と言ってもよいだろう.

さて,ここで取り上げる「問題解決」であるが,それは上の2つの問題を視野に入れている.例えば,製品の故障問題であれば,問題解決によって現状の困った状況を脱し,故障問題の解消された状態となるだろう.新たな技術を確立するという問題であれば,「問題解決」によって,現状の未確立の状態から,ゴールとしての技術の確立された状態に至ることになる.

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これらを踏まえると,「問題」を共通に捉え,広義の問題に対して次のように定義することができる.

【問題とは】
「現状」と「あるべき状態」とのギャップである

すると問題解決の目的は「あるべき状態」に到達することであり,「現状(現在の状態)」とのギャップを具体策の実行によって実際に埋めることが「解決」ということになる.これを図示すると図2.1 のようになる.

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図2.1: 問題の定義と解決の関係

「問題」によっては「あるべき状態」をゴールや目標などと置き換えることも可能である.
こうして,「問題」を定義すると,私達の仕事の大半が「問題解決」であるということが頷けるであろう.あるべき状態が「配管の漏水がない状態」,「月に7 台の車が売れている状態」,「キーボード操作でロボットの腕を制御すること」,「ヒト造血幹細胞による造血技術の確立」であったり,「新規モバイル商品事業ビジョン」であったりするのだ.商品開発における設計業務のような仕事も「問題解決」である.

2.2 原因のある問題と原因のない問題がある

広義の問題であれば,相当に幅広い問題が考えられるということはある程度想像できるに違いない.本節では私達が直面するであろう,あらゆる問題を視野に入れて分類しておくことにしよう.何故分類するかと言うと,それは問題の種類によって解決アプローチの仕方が異なり,それぞれに適した問題解決の方法が考えられるからである.

前節の説明で,これらの問題は,狭義の問題である「原因のある問題」(例:製品の品質問題,販売不振や事故・トラブルの頻発などの困った事態)と広義の問題に含まれる「原因のない問題」(例:次期商品の開発,ある製品の売上を2 倍にすることなどの課題)の2 種類に分類することが可能であることがわかる.同時に,すべての「問題」は「原因のある問題」か「原因のない問題」のいずれかに含まれる脚注2-1)ということもおわかりいただけると思う.

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では,「原因のある問題」にはどのような問題があるだろうか.知り得る限りの「原因のある問題」をリストアップして,類似の性格のものをまとめ,いくつかのタイプに分けるという作業を実施すれば何種類かの問題に分類することができるはずだ.「原因のない問題」についても同様である.そのようにして多くの「原因のある問題」,「原因のない問題」を分類すると,おおよそであるが,1 つの見方として,下記のように問題の典型的なタイプで大別することが可能である.

問題の種類のタイプ別分類例
1)原因のある問題
・現象型の問題:現象として見えている多くの良くない状況
・発生型の問題:特定化された困った問題または予定と異なる事態
・構造型の問題:原因と結果が絡み合って生じている良くない状況
2)原因のない問題(=課題)
・設定型の問題:実現すべきこと,達成すべき課題
・創造型の問題:新たなことを創出するような創造的課題

これから先の説明では上記の分類名称を用いることにする.他の分類の仕方も考えられるが,ここでは上記分類が比較的わかりやすく,それぞれに適した問題解決アプローチの方法が異なるので都合が良いのだとご理解いただきたい.「原因のない問題」の方では「課題」と記載しており,「原因のある問題」の方では「課題」とは記載していないが,やがて,解決策を考える段階では「課題」化することになるので,言葉の感触についても少し注目しておいていただきたい.
図2.2 には「問題」のタイプ別分類とその概略的説明および問題例を解決のための要所となるステップとともに示した.

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図2.2: 問題のタイプ別分類と解決のための要所となるステップ

実のところ,問題を捉える人の,考慮に入れる時間的スパンの長さと視野の広さによっても,問題がどのタイプに該当するかという判断は影響を受ける.また問題の中には静的な問題と見て差し支えない場合もあるが,一般的にはどのような問題もその状況は時々刻々と変化しているのだ.その上,「原因のある問題」においては原因によって生じたいくつかの現象が,2 次的な原因となり,更に新たな複数の現象を生じさせているといった広がりを伴うものである.従って,例えば,「原因のある問題」を3 つの典型的なタイプに分類したが,状況が変わると,あるいは問題に関する見方を変えると,「発生型の問題」が,実は「構造型の問題」であったり,「現象型の問題」と捉えられるようなことがあり得るのである.
つまり,同じ「問題」であっても,状況や見方によりその「問題」がどのタイプに該当するかが異なるのだ.しかし,すべての「問題」は上記分類のいずれか,あるいはそれらのmix したものに該当するという捉え方をしていただきたい.例えば,「ある事業の戦略の見直し」というのも,いずれかの「問題」に該当する.その際の状況が,もし,「何故か製品の売上が低下しており,現在の事業が不振で,戦略の練り直しが必要である」といった状況であれば,問題となる売上低下の本質原因を明らかにし,本質原因に対して手を打つことは不可欠であろう.すると,その問題は「発生型」の問題として解決に取組むことになる.そうではなくて,「事業は順調であるが,更に拡大したい」という状況であれば,「設定型」の問題として戦略案を考えることになる.あるいは新規の事業を展開するという場合には,「創造型」の戦略案創出が問題解決の方向となるという具合に捉えれば良い.

このように考えて,「さあ,これから問題解決に取組もう」というときには,その瞬間の時点において問題が上記分類のどのタイプに該当するのか,できる限り広い視野で検討していただきたい.しかし,状況や見方によって変わるというのだから,それは正確でなくても”おおよそ”でも構わない.どの分類に該当するのかがどうしてもわからないときには,感覚的に「この型に 該当するのかな」と考えていただいても良いだろう.懸案の問題がどのタイプに相当するかなどというのはさほど重要なことではない.実際,典型的なタイプに該当する問題ばかりではない.発生型の問題は比較的識別しやすい方であるが,現象型と構造型の区別は必ずしも明確にできない場合が多く,中には混合型とでも言えるような問題もある.なお,図の最下段に示した解決 のための要所となるステップは問題のタイプによって異なるが,本節ではまだ詳細を説明することができないので,ここではまだ「解決アプローチの方法にはいろいろあり,問題によって適したやり方が違うんだ」という理解で良いだろう.

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