問題解決に役立つロジカルシンキング(論理思考)を基礎から学ぶ。

終わりに

将来を担う若手読者の皆さん!身近な問題解決に取組み,実践体験を通じて本質を見極める論理思考力と対人力を磨き,真の問題解決者となろう。

論理思考の基礎から応用まで:終わりに

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おわりに

近年,世界は100 年に1度とも言われる大規模な経済危機(リーマンショック)に直面した.2011年3月には東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し,多くの尊い人命と家屋,公共インフラ,産業基盤を失い,未曾有の被害を蒙った.その上,原子力発電所の被災は放射性物質が関係する広範囲の二次災害にまで及んでいる.
ほかにも広く社会に目を向けると,私達は,現在,地球規模での資源・エネルギー問題,人口増加と食糧に関する問題,環境汚染・温暖化の進展に関する問題,民族・地域紛争や格差に関連する問題,国内においては人口高齢化の進展と国家財政の破綻等の解決困難な様々な問題に直面している.私達は災害からの復興を含め,これらの問題をいずれ解決すること,ないしは少なくとも拡大防止することを避けて通ることができないが,どれも大きな問題であり,容易なことでは解決できそうもない.

従って,まずは身近な事柄でも良いが,日常的におかしいと思うこと,何故あのようなことが起きているのか,世の中の理不尽・不正義を正したい,この先どうなるだろうか,どうしたら良いか,自分は何をなすべきかといったことに関心を持っていただきたい.問題に関する感性や思いを持って自分の問題として捉えることが出発点である.世の中で常識となって誰もが疑いを持たないことや暗黙の前提条件としているようなことについても,ゼロベースで見直してみるといった感覚も欠かせない.

しかし,だからと言って問題意識を持っても,大上段に構えて「問題だ」と騒ぐ前に,私達一人ひとりが真の問題解決者となるべく,「思考能力」,「対人能力」を日常の仕事や職場の内外に存在する問題解決を通じて伸ばして行くことが,これら大きな問題の解決に向けて備えることになるはずである.そのためには意識して能力を磨くことが欠かせない.評論家やマスコミからの情報を鵜呑みにして,識者の意見を聞いてただ頷いているだけでは「思考停止」しているに過ぎない.「思考能力」を向上させなくては何の役にも立てないのだ.

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問題解決に向けた論理思考力を磨くということに関連して,将来を担う若手読者の皆さんにお伝えしたいことが2点ある.

第1点は何事も試練を積まなければ決して上達しないということである.誰でも試練を積むことによって論理思考力は確実に向上する.最初は下手(へた)でも構わないので,意識して実務で何度も使うよう努力すべきである.それが,第1歩である.日常的な問題解決において常識や過去の成功体験に囚われず,ゼロベースで自分の頭で柔軟に思考し,意識してロジカル・シンキングを駆使して取組んでいただきたいのである.

その際にどんなに机上で思考を巡らせていても,現場に身を置き,現実を直視し,事実を正しく認識しなければ始まらないということは百も承知のことと思う.黙っていないで自分の意見を述べ,本音で語り合うことも大事だ.次第に,現場の状況がわかって問題解決に参画して行く機会が多くなるだろう.やがて,前向きな姿勢と意欲さえあれば,何度も現場の問題解決に粘り強く取組むことによって経験も豊富になり,大抵の問題であればどんな問題も解決できる自信が持てるようになるに違いない.そのことは大変素晴らしいことだ.しかし,論理思考で考えるならすぐにわかると思うが,問題にもいろいろあり,問題解決の道筋がいくつも考えられるのである.

そこで,第2点は常に目的を達成すべく問題の本質に目を向けるということである.果たしてそれらの問題は再発しないような本質的解決が図られているだろうか.もぐら叩きに終始していないか.表面に見えている問題ばかりを解決することに取組んで経験を積んできた人は,真の問題解決者とは距離がある.現場対応だけで問題解決体験を積んでいる人は,解決の状態にしても「本当のところ,あるべき状態のゴールに到達した解決であるのか」,「最適な解決の道筋を選択したのか」については不問にしている傾向がある.

問題の本質に目を向け,本質に対峙することの重要性はいつの時代,どこの世界でも変わらない.現場・現実を重視すると同時に,論理思考力を意識して磨いていただきたい.

次に,誰であっても身近な問題解決に自信が持てるようになったなら,真の問題解決者となるべく自分の担当業務を超えたところにも目を向けるべきである.企業の中ではたとえ1人で解決策を考えることができたとしても,解決策の実行となると他の人の協力が不可欠になる課題が多い.実行段階では「対人能力」も使うことになる.それでも担当業務の範囲であれば,通常は,日常的に接している人達との関係であり,それほど難しいことにはならないだろう.

しかし,外部環境の変化が激しい現代の企業の中には,むしろ,担当業務を超えたところに多くの問題が山積している.企業の体質が外部環境の変化に適応できていないのだ.「思考能力」に加えて「対人能力」を磨く機会はいくらでも存在するということである.
自分の担当業務を超えて,率先して有志を結集し,それらの問題解決に取組むべき状況が至る所に存在する.多忙を極める状況の中で,誰かに頼まれるわけでもなく,自ら進んでそのような担当業務外の問題解決に取組むということは,少なくとも仲間を巻き込むだけの情熱と共感喚起能力を必要とする.問題解決に取り掛かれば,意見の対立に直面するが,妥協でなく納得レベルで対立を克服する度に思考力と対人力を磨くことになる.多くの困難を乗り越えて問題解決に至る過程で関係者の仲間意識が醸成され,成果とともに大事な事柄や本質が共有されることになる.このような問題解決を幾度も仕掛けて達成すると,はじめは冷やかに見ていた無関心な人々も,いつの間にか大いに成果を喜び,活用している状況になるものである.

例えば,人材育成という課題1つを取ってみても,「人材育成を経営課題として最重要視している」という企業トップは多いが,本当にあるべき人材育成を考え,継続して望ましい人材を育成する仕掛けや投資を実施している企業は少数にとどまるのが実態である.少し収益が悪化すれば,人材育成のような経費を真っ先に縮小してしまう企業は決して珍しくない.そのような状況の中で,自分の業務の他に,例えば,グローバル人材の育成という重要課題を取り上げ,課題解決に取組もうとする人が果たしてどれだけいるだろうか.それは人事部の仕事だと言う人もいるかもしれないが,人事部が昔ながらの人事部研修を実施しているならば,彼らにとっては人材育成は既に実施しており,新たな仕掛けの必要性を感じないだろう.

容易に解決できる問題ばかりではない.むしろ,容易に解決できない問題ばかりであろうが,それこそが真の問題解決者に近づく機会であり,必ず解決することができることを信じて,矛盾する事柄の克服にチャレンジして欲しい.

第二電電を創業し,1999年にイー・アクセスを立ち上げた千本倖生さんは,当時の日米のインターネット環境を比べ,米国では常時接続が普通なのに,日本では料金が高すぎて常時接続できないという矛盾に直面し,その矛盾を克服しようと思い立ったのだそうだ.この矛盾の解決はきっと社会のためになり,大きなビジネスになると確信されたのだ.千本さんも「矛盾のあるところにはチャンスがあり,最近,若い人が社会起業家となりNPOを立ち上げている例が良く見られる.貧困や子育てなど社会的な矛盾や課題を解決しようという動きである.ビジネスも同じで,矛盾のあるところには解決すべき課題があり,それがチャンスとなる.(2015/4/6付朝日新聞)」と述べられている.

企業や社会における問題を解決し,人々のより健全な生活のために新たな価値を生み出す役割を担うのはやはり人である.世の中には多くの人がいるが,誰にもその役割を担い,活躍する意義と機会がある.問題を解決し新たな価値を生み出す役割を担おうとする人にはその中心的存在となっていただくことを期待しており,本講座がその後押しとなることを願っている.そのような読者の皆さんには真に会社や社会の問題解決に役立つ能力を身につけて活躍していただくことを切望してやまない.

<完>

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