解決策の創出

第4章 論理ツリーへの展開:続きページ(5)→戦略案創出のための枠組みを設定する

4.2.3 課題解決策を創出する

問題解決においては,いかなる問題であれ,課題化まで進めることができたならば,その先は「論理展開」によって課題解決策を創出して行くことになる.つまり,課題の解決策立案プロセスの最初は解決策を創出するための「枠組みの設定とアイディア出し」,具体的にはロジックツリーによる論理展開を行い,解決策の入るべき枠組みを作成し,更にその中身を抽出ないしは考案するのである.第1章の「4.2節 解決アイディアを出して絞り込む(解決策立案プロセス)」部分をもう1度参照していただきたい.

時には枠組みの作成にとどまる場合もあるが,適切な課題解決策が創出できるかどうかは,いかに適切な枠組みが設定できるか,いかに上位概念である枠組みからアイディアを発想,あるいは情報収集することができるかによる.

では,課題解決への活用例として,わかりやすい題材を使った例題でロジックツリーによる論理展開に取組んでみよう.読者の皆さんも1日くらい時間をかけてゼロからロジックツリーを考え,展開していただきたい.

枠組みを使って課題解決アイディアを抽出する

まず,わかりやすい技術課題に取組んでみよう.

例題4-3 鉄板の切断方法について,どのような方法があるか検討するためのロジックツリーを作成せよ.

「厚さ何mmの鉄板を±~mmの精度で」といった条件が設定されていない課題であり,あらゆる切断方法の可能性を幅広く検討する必要がある.具体的な「鉄板の切断方法」を調査し,それらを並べてみるとどのような上位概念を考えて分類すべきかが見えて来るはずである.金属ノコギリのようなもので切断するとか,薄い鉄板であればシャーリング・マシンでスパッと切断できるし,レーザー加工機で鉄板を部分的に溶かして切断することも可能であることなどがわかる.

多少熱心に調査すれば,ボトムに挙げられる具体的な「鉄板の切断方法」として

シャーリング,金属ノコギリ,レーザー切断機,サンドブラスト切断,酸素ガス溶断,カッターナイフ等の刃物,回転砥石(グラインダー),高圧水ジェット切断,フライス盤加工,火薬・爆薬,プラズマ切断機,放電加工機,イオン・電子ビーム切断機,エッチング加工機

あたりが抽出できるであろう.通常はこの程度の情報収集の後に,異なる具体的な事柄どうしに共通するものを見出して,それを上位概念としてグルーピングするというステップを何度か実施して階層的なロジックツリーの形態を作成する.その際に,可能な限り視野を広げ,かつMECEな分類となるように注意を払おう.

例えば,一旦次のようなグルーピングを実施して

>機械力学的に切断する
→シャーリング,金属ノコギリ,サンドブラスト切断,カッターナイフ等の刃物,回転砥石(グラインダー),フライス盤加工
>圧力的に切断する
→高圧水ジェット切断,火薬・爆薬
>溶解・熔解して切断する
→レーザー切断機,酸素ガス溶断,プラズマ切断機,放電加工機,イオン・電子ビーム切断機,エッチング加工機

更に,上位および下位のグルーピングを実施して階層化しても良いだろう.ここで,ロジックツリーとして完成するまで,そのような検討を進めて行く際には,個々の具体的な「切断方法」に関する原理についての理解が欠かせないことに気がつくのではないだろうか.

個々の具体的な「切断方法」について深く理解すれば,適切な上位概念形成(グルーピング)が可能になるということである.上位概念をMECEに配置しながら,ある程度ツリーができると,今度は作成されたツリーの枠組みに収まる新たな具体的方法が想起されるようになるだろう.

この先は解答例を参照いただくということにして,上位の階層にどのような分類が適切であるかに関して少しばかり触れておこう.
切断原理から少し離れてロジックツリーの第2階層に

>道具を使用して切断する
>道具を使用しないで切断する

という分類を設定したらどうだろうか.

確かにMECEだが,相手が鉄板なので「>道具を使用しないで切断する」という分類側にはあまり多くの切断方法が登場してくるはずがないと,まずは考えられるのではないだろうか.つまり「>道具を使用しないで切断する」側の分類はMECEであることを確認するための単なる形式的な分類になってしまう可能性がある.

最初に具体的な切断方法を挙げずにトップダウン・アプローチだけで分類を考えてしまうとこのような結果に陥る場合が多い.また,上記分類には分類枠組み定義の曖昧さも存在する.「道具を使用しない=素手で」という定義で良いか,それとも「道具を使用しない=切断のための形のある物体を使用しない」と考えるのかなどと迷う可能性もある.

更に,前者の定義の場合には,薄い鉄板ならば素手で切断できるが厚い鉄板では同類の切断方法でも押さえ器具を使用して切断することがないのか,後者の定義の場合には,例えば鉄板を溶解させる強酸性の液体を用いて道具を使用しないで長い時間をかけて切断するような方法と,加熱した強酸性の液体を用いて道具を使用して噴射させながら切断するような方法との分類上の分離に意味があるのかといった問題に直面することになる.

従って,少なくとも分類定義を明確にし,明確な分類の下位で用いるなら良さそうだが上位の分類においては適切ではないと考えた方が良い.
そういう意味では,下記分類

>人力で切断する
>人力以外の力で切断する

なども同様に「ノコギリで切断する」のようなものはいずれの分類にも登場してくる可能性があるので,普遍性の乏しい,曖昧な分類ということになるであろう.

>物理的方法で切断する
>化学的方法で切断する
>生物的方法で切断する
>物理的な方法で切断する
>化学的な方法で切断する
>上記の組合せ方法で切断する

というような分類例が挙げられる.

しかし,もっと明確で切れの良い分類方法は,例えば,切断される「鉄板」に焦点を当てた

>切断に際して相状態を変えない
>切断に際して相状態を変える

といった分類だと思われる.

解答例をご覧いただきたい.もちろん,この解答例とは異なるロジックツリーであっても一向に差し支えないが,中身との対応に違和感がなく収まりが良い分類というのは必然的に形成されるツリーとも言え,直感とも対応する傾向があるのでわかり易いものだ.

解答例
前提条件:

  1. 切断可能な板厚・切断精度・切断にかかる時間等に関係なく可能性のある切断方法のすべてを対象とする
  2. 2つ以上の切断方法の組合せは除外する

なお,下記ツリーの最下位命題部分に記した●印は分離切断を,無印は除去切断を意味する.(分離・除去切断については後で触れる)
-鉄板の切断方法-

>相状態を変えずに切断する
 >機械力学的に切断する
  >機械的に刃物で切断する
   >刃物で切削する→旋盤加工,フライス盤加工,ドリル加工(穴連結)
   >●刃物で切断(せん断)する→シャーリング,プレス型(打ち抜き),鋏
   >刃物で鋸引きする→鋸盤,金属ノコギリ,コンターマシン等
   >●刃物で引き切りする→カッターナイフ等の刃物
  >機械的に刃物以外で切断する
   >硬い物質で破壊する→回転砥石(グラインダー),ヤスリ,ダイアモンドカッター等
   >●破断する(紙のように)→破断機
   >●繰返し折って切断する→折り曲げ機
 >圧力的に切断する
  >爆破エネルギーで破断する
   >●爆破により破断する→火薬・爆薬
  >物質の運動エネルギーで切断する
   >液体ジェット流で切断する→高圧水ジェット切断,アブレッシブジェット切断
   >固体衝突で切断する→サンドブラスト切断
>相状態を変えて切断する
 >熱的に液化・気化して切断する
  >機械的熱エネルギーで溶断する
   >機械摩擦熱で→?
   >振動熱で→超音波加熱融解
  >化学反応熱エネルギーで溶断する
   >酸素との反応熱で→酸素ガス溶断
   >物質燃焼熱で→ガス燃焼溶断機
  >電気的熱エネルギーで溶断する
   >アークで溶かして→アーク切断機
   >プラズマで溶かして→プラズマ切断機
   >プラズマで気化させて→超高温プラズマ加熱
   >放電加工で→放電加工機
  >電磁的熱エネルギーで溶断する
   >レーザー光で→レーザー切断機
   >イオン・電子ビームで→イオン・電子ビーム切断機
   >スパッタリングで→イオンビームスパッタリング装置
 >化学的に溶解させて切断する
  >化学溶解で
   >ウェットエッチングで→エッチング加工機
   >ドライエッチングで→ドライエッチング装置
  >電気化学分解で切断する
   >電解研磨で→電解研磨装置

ところで,この課題を検討された読者の皆さんはその過程で「切断するとはどういうことか」と考える機会があったのではないかと思う.技術課題の多くの場合には「本質はどういうことか」を考えた上で,ロジックツリーを作成するとレベルの高いものが作成され,従って,新しい技術の創出の可能性が開かれるものである.

固体の「切断」というのを原子レベルで捉えると,2つの部分に切断するというのは,元の固体をつなげている原子を除去するか,原子どうしの結合を引き離すかということであり,図4.12のように「除去切断」または「分離切断」の2通りになる.

切断の本質
図4.12: 切断の本質

すると,ロジックツリーは,例えば第2階層を

鉄板の切断方法
>切断部の一部分を除去する
>切断部の一部分を除去しない

として展開できることになる.

しかし,実は上記分類でそのまま実際のロジックツリーを構成すると,現実としては「>切断部の一部分を除去する」分類に含まれる切断方法が圧倒的に多いので,ロジックツリーを作成する上では必ずしもそれほど素晴らしい結果になるというわけではないが,原理的なところを認識しておくことは「切断」方法を検討する上で大変役に立つ.

例えば,目的によっては除去切断の範疇で「(走査しながら高速の重イオンを衝突させて)鉄の原子を1個ずつ除去する方法」,「(スリット状に中性子線を照射して)結合の弱い原子に核変換させ除去する方法」などが発想できるだろう.

なお,この課題では「鉄板の切断方法」としてどのようなものを選択すべきかに関しては要求していないが,そのことに言及するには,各切断方法を評価する必要がある.そのような場合にも評価の観点をツリー化して枠組みを作成し,ロジックツリーの右側の評価スペースに切断方法と評価の観点のマトリクス表という形態で完成させることができる.

評価の観点としては,例えば

鉄板の切断方法に関する評価の観点
 >対象寸法範囲
   >対象板厚範囲
   >対象板面寸法範囲
 >切断性能
   >寸法精度
   >切断面精度
   >切断速度
   >切断面仕上がり
 >切断操作性
   >安全性
   >熟練性要求度
   >準備容易性
   >操作容易性
   >再現容易性
 >切断コスト
   >設備コスト
   >稼動コスト
   >作業コスト
   >保守コスト
 >その他
   >適用材料汎用性
   >設備設置製
   >環境影響度

といった枠組みが考えられる.

新規用途の可能性について検討する

一般的な技術や物など,特定または非特定の題材に対してどのような用途があるかを幅広く検討する課題である.本項では例題の解説を通じて,適切な分類の切り口を設定する際のポイントを捉えていただくことを狙っている.多くのスペースを割くので自分でもExcelシートを使って解答作成に取組み,十分に吟味しながら読み進んでいただきたい.

例題4-4 用済みの新聞紙の再利用(新たな用途)について,どのような可能性があるか検討したい.その目的にあったロジックツリーを作成せよ.

この課題にはどのように取組んだら良いだろうか.最も普通のやり方は,まず,実際に新聞紙の再利用方法を具体的に挙げてみること(ボトムアップ・アプローチ)である.「用済み新聞紙の再利用」ということであり,題材はそれほど特定化されていないので幅広い用途が考えられる.

例えば,

メモ紙,しおり,紙飛行機,ハナ紙,焚(た)き付け,グランドシート代わり,テーブルカバー,タンス引出しの底敷き,凧の足,カーテン代わり,紙ふぶき

という再利用方法が挙げられたとしよう.

これらの再利用法を眺めて,何らかの共通する事柄を見出すと,例えば,新聞紙を「切らないで利用する」利用法と「切って利用する」利用法という共通点に気づくのではないだろうか.しかし,同時に「焚(た)き付け」という「切らないで利用する」か「切って利用する」かはどうでも良い,異質の利用法があることにも気がつくはずだ.

このようなときに,深く考えるチャンスが訪れる.「焚(た)き付け」を含めて明確に分類できる切り口を考えるのである.「焚き付け」に利用すると利用後は「新聞紙」ではなくなっているが,他の利用法ではそのようなことはないという点に気づけば,適切な切り口が想起できるであろう.

そこで,まず,例えば,

>新聞紙を新聞紙のままで再利用する
>新聞紙を切断しないで再利用する
→グランドシート代わり,テーブルカバー,タンス引出しの底敷き,カーテン代わり
>新聞紙を切断して再利用する
→メモ紙,しおり,紙飛行機,ハナ紙,凧の足,紙ふぶき
>新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する
→焚き付け

という具合に分類して整理することができる.今度は同じ枠組みの内部について更に深く眺めてみるのである.「>新聞紙を切断しないで再利用する」・「>新聞紙を切断して再利用する」いずれの利用法にも「>新聞紙を広げた状態で再利用する」ものと「>新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する」ものがあるということに気づくのではないだろうか.

一方,「>新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する」利用法には「焚き付け」以外には考えられないだろうか.常識的にも「再生紙」,「紙粘土」などが考えられるであろう.

そこで,例えば,次のように展開してみよう.

>新聞紙を新聞紙のままで再利用する
>新聞紙を切断しないで再利用する
>新聞紙を広げた状態で再利用する
→グランドシート代わり,テーブルカバー,カーテン代わり
>新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する
→タンス引出しの底敷き
>新聞紙を切断して再利用する
>新聞紙を広げた状態で再利用する
→メモ紙,しおり,ハナ紙,凧の足,紙ふぶき
>新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する
→紙飛行機
>新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する
→焚き付け,再生紙,紙粘土

もしかすると,この辺で新聞紙を円筒状に巻いて「チャンバラ棒」や新聞紙をクシャクシャに丸めて「ボール代わり」にして子供の頃に遊んだことを思い出すかもしれない.これらもどこかに収まるはずである.

そこで,やはり,この矛盾を解決する思考を働かせる必要が生じてくる.「>新聞紙のシート状の形状を変えないで利用する」・「>新聞紙のシート状の形状を変えて利用する」といった上位概念を設定すると「チャンバラ棒」や「ボール代わり」を後者の方に置くことができる.

と,このような思考とロジックツリーの展開を繰返して完成させて行くことになる.ここまでの説明で,もしかすると「焚き付け」という再利用法を最初に思いつかなかったらどうなるのかといった疑問が生じるかもしれないが,心配には及ばない.

多くの場合に,最初に具体的な事柄を考え,次にそれらの上位概念を考え,再び具体的な事柄を考えるという進め方をして行くと途中で新たなアイディアや可能性が見出され,ロジックツリーの切り口や表記に矛盾が生じてくるので見直しの必要性に気づくことになる.そのような矛盾に突き当たり,その矛盾を解決するときに思考が深まると同時にロジックツリーの水準が向上するのである.

従って,例えば,ロジックツリーの上位階層は初めから適切な分類表記が考えられるわけではなく,何度か見直して表記を適切化する,更に上位階層を設定するなどの作業が欠かせないものとご理解いただきたい.

MECEなツリーを構成してしっかりと論理展開するには8~10階層ほど必要であると思うが,上位階層を設定する際の基本的な考え方は参考になるのでここでは解答例を紹介する前に上位階層(特に第2階層)の設定のポイントについて学んでおこう.

読者の皆さんは最上位命題「用済みの新聞紙の再利用方法」に対して,第2階層に相当する最初のツリーをどのように構成しただろうか.この先に読み進む前に,少なくとも自分の頭で考えて本課題のロジックツリーを作成してみていただきたい.特に最上位命題直下の第2階層をどのように構成したら良いか,是非「これでどうだ!」という自分の案を考えて記述しておいていただきたい.

ついでながら,他の人はこの例題に対してどのように考えるかに関しては読者の皆さんも興味があるのではないだろうか.

参考までに,筆者が新入社員から部課長クラスまでの技術者を対象とした数社の企業内研修において,受講者合計46人に課した宿題解答に記載されて提出されたロジックツリーの第2階層(中には第2階層だけでは意味がわからない場合には第3階層まで)を以下にランダムに並べてみたのでご覧いただきたい.作成された第2階層に対して筆者からコメントを差し上げながら,どのような上位階層を構成したら良いのかを掴めるようにしたい.

> 1 枚を細分化しないで使う
> 1 枚を細分化して使う
> 1 枚毎にばらさない
>本来の用途として使用
>本来の用途以外で使用
>新聞紙そのものを再利用する
>新聞紙のインクを再利用する
>新聞紙そのものを再利用する
>新聞紙のインクを再利用する
>新聞紙の繊維質(パルプ)を再利用する
>裁断して利用する
>裁断しないで利用する
>破壊的利用
>非破壊的利用
>コンテンツを再利用
>コンテンツは不要
>手を加えずそのままで再利用する
>手を加えてから再利用する
>防虫のため
>防虫のためではない
>他の物と交換する
>他の物と交換しない
>情報源として利用する
>道具として利用する
>資源材料として利用する
>それ以外の利用方法
>リユース(再利用化)
>リサイクル(再資源化)
>新聞紙の有効活用(利便性)
>資源として活用(資源性)
>情報を利用する
>情報を利用しない
>再利用できる
  >新聞紙をそのまま利用する
  >新聞紙を別のものに作り変え利用する
>再利用できない
>リサイクル(再生)する
>リサイクル(再生)しない
>紙を利用する
>内容を利用する
>屋内利用
>屋外利用
>家庭外で利用
>家庭内で利用
>そのままのカタチで利用
>カタチを変えて利用
>素材をそのまま使う
>素材を加工する
>溶解加工無し
>溶解加工あり
>記事読む
>読むこと以外
>新聞紙のまま利用
>新聞紙の紙質を利用
>加工しない
>加工する
>エネルギーとして利用する
>エネルギーとして利用しない
>道具を使用しない
>道具を使用する
>そのまま加工(原料に戻さない)
>原料に戻す(分解)
>素材として利用
>情報として利用<
>元の素材のまま利用する
>加工を加えてから利用する
>加工する
>加工しない
>吸わせる(吸水性を利用)
>吸わせない(吸水性を利用しない)
>自分で再利用する
  >燃やす
  >燃やさない
>自分で再利用しない
  >資源ごみに出す
  >資源ごみに出さない
>主に家の中で利用する
>主に家の外で利用する
>紙の性質を利用する
>新聞紙特有の性質を利用する
>新聞紙を情報ツールとして見る
>新聞紙を紙として見る
>再利用する
  >燃やす
  >燃やさない
>再利用しない
>加工する
>加工しない
>新聞紙を切断せずにそのまま使用する
>新聞紙を切断して使用する
>再生利用(リサイクル)
>再使用(リユース)
>燃える機能を用いる
>燃える機能を用いない
>自分で使用する
  >実用的である
  >実用的でない(遊びに使用)
>自分で使用しない
>形状を変えないで使う
>形状を変えて使う
>そのまま使う
>形状を変えて使う
>そのまま使う
>再加工する
>情報
>紙
>その他

いろいろな例があって興味深いと思うが,読者の皆さんはどうお考えになったであろうか.どれが正解などということはないが,ある程度の大まかな良し悪しについては言及できる.

分類表記には微妙な点もあり,必ずしも体系的に重複なく説明できるわけではないが,少なくとも上位階層における分類について言える幾つかのポイントとなることを記しておく.

1)上位階層には適度に抽象度・包括度の高い切り口を設定しよう.

抽象度・包括度の違いに注目しながら類似の分類例を比較してみよう.例えば,「>新聞紙を加工して使う」・「>新聞紙を加工しないで使う」といったオーソドックスな分割を取り出してみると,次のような第2階層

> 1 枚を細分化しないで使う
> 1 枚を細分化して使う
>溶解加工無し
>溶解加工あり

では,「細分化」や「溶解」といった具体的な「加工方法」を限定しているが,次のような第2階層

>手を加えずそのままで再利用する
>手を加えてから再利用する
>元の素材のまま利用する
>加工を加えてから利用する

においては,具体的な「加工方法」を限定していないことがわかる.良く考えると気がつくと思うが,「加工方法」には「細分化」,「溶解」だけでなくいろいろ幅広い方法があるので,第2階層には後者の方が明らかに包括度が高く適している.上位階層には適度に抽象度・包括度が高い切り口を使用することが望ましい.

2)上位階層ほど明確さが求められ,本質を考えることが役に立つ.

次のような比較的オーソドックスな同種の分類における「適切性」ないしは「明確さ」という観点で眺めてみよう.

>新聞紙をそのまま利用する
>新聞紙を別のものに作り変え利用する
>素材をそのまま使う
>素材を加工する
>紙を加工する
>紙をそのままの状態で利用する
>そのままのカタチで利用
>カタチを変えて利用

ここで,いずれ下位に登場するはずの,どちらに含まれるかわかりにくい利用例,例えば,「溶かして使う」,「燃やして使う」という利用法について考えてみる.

「>素材をそのまま使う」・「>素材を加工する」の分類は比較的明確であるものの,「溶かして使う」のは後者に含まれるだろうが,「燃やして使う」のはどちらに該当するのだろうか.「>紙を加工する」・「>紙をそのままの状態で利用する」の分類に関しても同じような疑問が生じるに違いない.

一方,「>新聞紙をそのまま利用する」・「>新聞紙を別のものに作り変え利用する」あるいは「>そのままのカタチで利用」・「>カタチを変えて利用」という分類では「溶かして使う」,「燃やして使う」の両方とも分類の後者に含まれるはずだと比較的容易に考えることができる.上記分類にある,「加工する」という言葉は実は案外不明確なものなのだ.

具体的な利用法として,「切って使う」,「折って使う」などという場合には常識的に「加工する」という分類範疇に含めると思われる.では,「溶かして使う」,「燃やして使う」という場合には,それぞれ「加工する」・「加工しない」のどちらに含めるのが良いのだろうか.

「燃やして使う」は「加工しない」に入れたくなるが,「加工しない」で利用すれば利用後もまた利用できるはずである.ところが,利用後に再利用するときには新聞紙は燃えてなくなってしまっているわけで,再利用はできないのだ.かといって「加工する」分類範疇に「燃やして使う」を含めるのは違和感があるに違いない.しかし,どちらかの分類には必ず含まれるのであるから矛盾してしまう.

このようなとき「燃やして使う」本質を考えてみれば,結論が出てくる.「新聞紙を燃やして利用する」のは「新聞紙を燃やす」ことによって発生する熱・光・炎・煙を利用するわけである.科学的な言い方をすれば,「新聞紙を熱によって促進された酸化反応により,主として水と炭酸ガスに変化させ,その際に生ずる熱・光・炎・煙または僅かに残った灰を利用する」ということである.いわば「加工」して(そのままではなく作り変えて)利用しているのである.

つまり,「燃やして使う」は「加工する」分類範疇に入ると考えられるが,分類表現がマッチしていないのだ.「>カタチを変えて利用」(新聞紙を別のものに変えて利用する)だったらフィットするのではないだろうか.

従って,結論的に,「溶かして使う」,「燃やして使う」を視野に入れて分類を考えるなら,

>新聞紙をそのまま利用する
>新聞紙を別のものに作り変え利用する

>そのままのカタチで利用
>カタチを変えて利用←「溶かして使う」,「燃やして使う」を含む

が優れているということになる. あるいは先の分類「>紙を加工する」・「>紙をそのままの状態で利用する」を考えた解答者は更に次のような分類

>紙を加工する
>加工した後も新聞紙である
>加工した後は新聞紙でない←「溶かして使う」,「燃やして使う」を含む
>紙をそのままの状態で利用する

を設定し,明確に「溶かして使う」,「燃やして使う」分類を識別して包含するように分類表記していた.分類の明確さの必要性が認識でき,深く考えている証拠とも言える例である.

このように,「燃やして使う」本質を考えたことが役に立っているわけであり,本質を考えることは明確な分類を考える場合のポイントになるということである.一見どうでも良いことのように思い勝ちであるが,分類の上位階層ほど明確さが求められるということも合わせてご理解いただきたい.

3)上位階層には,広い視野で実用的な範囲の分類を設定しよう.

下記の例は,「新聞紙」というものをそれを構成する材料(物や情報)から捉え,構成材料に焦点を当てて分類している.類似の分類例について比較してみよう.

>紙を利用する
>内容を利用する

このような分類方法があっても結構であり,良い分類方法であるが,「用済み新聞紙」が対象だから,適切に前提条件を設定すれば「内容(新聞情報としてのコンテンツ)の利用」を除外できるので,あまり役には立たないだろう.

>情報
>紙
>その他

この場合でも「>その他」が置かれているので良さそうだが,適切な分類は必須であり,例えば,上記の2つの例では少なくとも「文字が印刷された新聞紙」(インク油のついた紙の利用,切抜き文字紙片の利用)を落とすことになる.例えば,下記であれば,MECEとなる

>素材として利用←「インク油のついた紙の利用」,「切抜き文字紙片の利用」などを含む
>情報として利用

「新聞紙」を「素材」として見れば,単なる「紙」ではないことに気がつくはずでである.下記のような分割も対象を広い視野でしっかりとMECEに捉えており悪くないだろう.

>新聞紙そのものを再利用する
>新聞紙のインクを再利用する
>新聞紙の繊維質(パルプ)を再利用する

上位にはできるだけ視野を広くして,実用的な範囲で抽象度を高く考えた分類を設定することも大事である.

4)間接的な関連性による分類を避けよう.

下記分類例は第2階層という上位階層で分類困難な切り口を使用しており,具体的な利用例を挙げて分類しようとすると,明確な線が引けない分類だということがわかる例である.

>屋内利用
>屋外利用
>主に家の中で利用する
>主に家の外で利用する

例えば,新聞紙を「敷物」として利用することを考えてみても,「屋内」,「屋外」のいずれでも利用する.どちらで利用するのだと言われても,無理な話で,実際,作成されていたロジックツリーには両方に登場していた.「紙飛行機」を作って遊ぶにしても両方で利用するだろう.

初めから大きな曖昧さを持った分類を上位に置くのは敢えて考えにくくしていることになるのだ.

もちろん,これでMECEなのだが,実質的なMECEではなく,表面的なMECEになっている.「屋内で遊ぶ紙飛行機を作る」,「屋外で遊ぶ紙飛行機を作る」という具合に決して重なることはない.しかし,それではナンセンスな話だということである.

少なくとも「新聞紙」に対して間接的な関わりに過ぎない「屋内」・「屋外」といった「利用場所による分類」は本質的に分類する切り口ではなさそうだと感じていただきたいところである.

類似の分類例としては,下記も同様である.

>家庭外で利用
>家庭内で利用

「利用分野による分類」というところだろうか.完全に利用場所で分類しているというわけでもなさそうで,「工業(業務)用途」・「家庭(民生)用途」という雰囲気も感じるが,やはり,明確な線が引けない分類である.「利用場所による分類」の他にも「用途または用途分野による分類」の場合も同様に切り口が明確にできない典型例である.

一般に「使用場所による分類」や「用途による分類」は非特定の一般対象(この例では「新聞紙」全般)に対して間接的な切り口となる傾向があり,曖昧さが避けがたいので上位階層で使用するには十分な検討が必要である.上位階層において不明確になりやすい間接的な関連性で分類するのは,できる限り避けることが望ましい.

(「間接的な関連性」というのは「新聞紙」と「屋内・屋外」との関連や「家庭外・家庭内」との関連が,「切る」,「折る」などの事柄のような直接的関連性ではないということを指している.)

一方,下位の階層で特定化された対象に対しては「使用場所による分類」や「用途による分類」などが意味を持つようになるということも合わせて認識しておいていただくと良いだろう.

下位の階層において,または相当程度に特定化された,例えば,「細長い短冊状に切り刻んだ新聞紙」に対しては,「工業用途」というのは間接的であるが,対象が特定化されているために,「パッキング材・クッション材として梱包に利用する」といった用途が,さほど無理なく抽出可能であろう.

5)本質的でない分類を避ける.

上位の分類というのは結構大事な分類なので,心血を注いで考える必要がある.下記の3つの分類例はどれもMECEであるが,無意味な分類であり,いずれも本質的ではない.

>自分で再利用する
>自分で再利用しない

下段側の分類は,「自分で再利用しようが,しまいが」課題は「再利用方法」の抽出を要求しているので不要な分類である.

>自分で使用する
>自分で使用しない

課題は,たとえ「>自分で使用しない」場合に「古紙回収に出す」としても,その先の「再利用にどのような利用法があるか考えて」と要求しているのである.つまり,「>自分で使用する」か「>自分で使用しない」かはどうでも良いことで,「新聞紙の再利用方法」としては本質的ではないということだ.

本質的でない分類と言える例が,もう1点ある.

>他の物と交換する
>他の物と交換しない

MECEであってもこのような分類が必要だったかどうかに関しては再考の余地がある.

「ちり紙交換」あたりを想定して,「>他の物と交換する」という分類を設定されたのだろうが,世の中では必ずしも「ちり紙交換」とは限らない.単に「資源ごみ」として回収されるケースもある.「>他の物と交換する」か「>他の物と交換しない」かはどうでも良いことで,その先の再利用用途という課題の本質に注目した必然的な分類を要求されているのである.

少なくとも上位階層では本質的な切り口を設定しよう.

6)必然性の高い分類を設定しよう.

本来,「必然性の高い分類」というのは,「上位命題の持つ本質的な内容や性格から,必然的に設定される分類」という意味合いであるが,このポイントについての説明は難しいので,以下の説明で多少とも感触を掴んでいただければ幸いである.

下記は「新聞紙」の特性に着目し,それぞれの特性に応じた利用法を抽出するという考え方で分類を考えた例である.(あるいは一部は「新聞紙に対して何らかの操作を加える」分類である.)

>吸わせる(吸水性を利用)
>吸わせない(吸水性を利用しない)
>燃やす
>燃やさない
>燃える機能を用いる
>燃える機能を用いない

対象物の機能や特性による分類は,本来,直接的で明確であり悪くはないが,特性というのは際限がないほど考えられるので,特性を適切に分類するのは難しく,多くの場合苦しめられる傾向がある.

上記例は一方の分類の抽象度が低すぎて偏りが大きく,特に「>吸わせる(吸水性を利用)」・「>吸わせない(吸水性を利用しない)」という分類は第2階層に登場する必然性がない.思いつきや当てずっぽうの分類でなく,上位階層においては重要さなど必然性のある分類切り口を設定することが望ましい.

ただし,この「用済み新聞紙の再利用法」という課題の場合,「>燃やす」・「>燃やさない」という分類は,「>燃やす」利用法が再利用法の中でも異質であると捉え,最初に異質のものを除外して考えるという発想もあるので一概に必然性がないとは言えない.

必然性の高い分類切り口というのは,「特性による分類例」の場合,抽象度の低い特殊な性質でなく,「>新聞紙がシート状の形態であるという特性を利用する」,「>新聞紙がシート状の形態であるということ以外の特性を利用する」といった,利用用途を分類した際に大別が可能な抽象度の高い切り口となるものである.

しかし,同じ「特性による分類」であっても,下記のような視点の高い分類は優れている反面,別の問題が生じることになる.

>紙の性質を利用する
>新聞紙特有の性質を利用する

例えば,「>紙の性質を利用する」分類の具体的利用例として,トイレットペーパーは紙であるが,その「水で容易にくずれる性質」を利用すると,課題「用済み新聞紙の再利用法」の要求を超えることになる.また,新聞紙も紙であり,どのような性質が「>紙の性質」であって,「>新聞紙特有の性質」ではないのか,あるいはその逆を識別するのは困難な場合もある.

なお,対象物である「用済み新聞紙」の機能や特性を並べてみると,「重さがある」,「体積がある」,「面積がある」,「厚さがある」,「吸水性がある」,「可燃性である」,「断熱性がある」,「気体を通しにくい」,「非導電性である」,「防音性がある」,「広げて叩くと音がする」,「光を遮る」,「容易に切断できる」,「薄い」,「丸めることができる」,「折りたたむことができる」,「食べても毒ではない」,・・・と際限がないほど挙げることができそうだということに気づくであろう.

7)分類切り口は自分の頭で考えて設定しよう.

下記は世の中でしばしば使われている省資源「3R(Reduce/Reuse/Recycle)の考え方」のうちの「Reuse/Recycle」を持ってきて分類したものと思われるが,残念ながら失敗である.

>リユース(再利用化)
>リサイクル(再資源化)
>再生利用(リサイクル)
>再使用(リユース)

課題では「用済み新聞紙の再利用」について幅広く考えていただくことを狙いとしているが,「燃料として燃やして利用する」ような利用法は,通常,「3Rの考え方」における「>再生利用(リサイクル)」・「>再使用(リユース)」のいずれの範疇にも含まれない.「再使用(リユース)」とはそのまま再び使用することを指している場合が多く,従ってMECEな分類ではないので適切な分類表現とは言えないだろう.

世間で使うポピュラーな言葉の転用では用語がマッチしなかったり,あるいは案外間違って使われていたりするので,分類の枠組みはゼロベースから自分の頭で考えて記述すべきであると言える例である.

8)上位階層にはMECEで明確な分類を設定しよう.

下記は抽象度も適度に高く,決してダメな分類ではないが,MECEと明確さという点で考え直したい分類例である.

>新聞紙の有効活用(利便性)
>資源として活用(資源性)

「>新聞紙の有効活用(利便性)」と「>資源として活用(資源性)」がダブることがなくしかもモレがない(これ以外にない)という分割になっているだろうか.「利便性」と「資源性」は同時に兼ね備えている場合,つまり,矛盾しない場合がある.例えば,「新聞紙という資源を有効に利用する」という再利用法はどちらに入るだろうか.
分類に困る例を挙げてみよう.

『学校で粘度細工の授業があるので紙粘度を持って登校しなければならない小学生の親が,それではと用済みの「新聞紙の有効活用」により,子供に「(紙粘土の原料)資源として活用」し,紙粘土を作らせて持たせた.』というように,上記の分類はきっと一部にダブリが生じるだろうと考えられる.他にも,どちらに該当するかに関して明確でないもの(「新聞紙をクシャクシャに丸めてパッキング材に用いる」場合など)の存在も想定される.

上位の階層にはMECEで明確な分類を設定するように考えることが大事だ.

9)「特定とそれ以外」という分類には「特定」側の抽象度に注意を払おう.

下記は基本的には「A」・「非A」であるが,「用途が具体的で明確なもの」と「それ以外」のセットで構成された分類を置いた例である.

>防虫のため
>防虫のためではない

きっと,誰もが,何故「防虫」のような用途が第2階層に登場してくるのか首を傾げたくなるに違いない.一方の「用途が具体的で明確なもの」はわかりやすいのであるが,上位分類に登場する必然性がないのでどうしても底の浅いものになってしまい,大半の再利用法が「それ以外」の方に押し込められてしまうという傾向が見られる.

このようなスタイルでロジックツリーを展開して行くと,何の脈絡もなく「それ以外」側のツリーが拡大して行くが,あたかも問題を先送りしているような形態のツリーが出来上がる 脚注4-5)

「用途が具体的で明確なもの」の分類が新聞紙の再利用に関して,重要な切り口を提供してくれる(その後の展開に多数の可能性や重要な用途が登場するなど)のであれば,大いに結構だが,そうではない場合は避けたいところである.もちろん,ダメということではないが,「目的に合った切り口で」といった目的達成志向とは距離がある.

以上のように,たかが第2階層あたりの分類に関してもなかなか難しいもので,上位階層に限定して幾つかのポイントを説明したが,この辺でとどめておきたい.もっと下位の階層の充実化を含め,最終的には最下位の具体的な事柄こそが重要なのだが,長くなるので別の例題で解説する.

下記に第5階層までの分類枠組みを示している解答例を載せた.9階層まで作成し,具体的な利用法を記述した表形式の解答例も載せてあるので,じっくりとご覧いただきたい.

前提条件:

  1. 新聞に記載されている情報の本来的利用(「切り抜き」を含む記事・解説・データ等の活用)は用済みとし,再利用に含めないものとする
  2. 上記に加え,「直接廃棄する」以外の,再加工を含む如何なる利用も再利用とする
  3. 2つ以上の利用方法の組合せは除外する

用済み新聞紙の再利用方法
 >新聞紙を単独で再利用する
   >新聞紙を新聞紙のままで再利用する
     >シート状の形状を変えないで
       >新聞紙を切断しないで再利用する
       >新聞紙を切断して再利用する
     >シート状の形状を変えて
       >型に合わせないで
         >新聞紙を折って
         >新聞紙を折らないで
       >型に合わせて
   >新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する
     >利用に際して化学的に分解しない
       >インクを除かないで
       >水洗によりインクを除いて
     >利用に際して化学的に分解する
       >新聞紙のままで熱分解する
       >新聞紙のパルプ繊維(セルロース)を酵素で分解する
 >新聞紙を他のものと組合せて再利用する
   >新聞紙は新聞紙のままで他のものと組合せて再利用する
     >紙糊で貼り合わせて
       >立体物を形成して
       >立体物を形成せず
     >紙糊以外のものと組合せて
       >木材・竹などに新聞紙を巻いて建築材にして
       >プラスチックと重ねるなど組合せて
   >新聞紙は少なくとも一旦異なるものにして他のものと組合せて再利用する
     >新聞紙のパルプ繊維をバラバラにしてそのまま再利用する
       >水分を加えて
       >水分を加えず
     >新聞紙のパルプ繊維をバラバラにして化学的に変化させて再利用する
       >化学物質・酵素を使って別の素材にして
       >化学物質・酵素を使って新たな原料にして


表4.5: 例題4-4 「用済み新聞紙の再利用法」を表記したロジックツリー解答例
前提条件:

  1. 新聞に記載されている情報の本来的利用(「切り抜き」を含む記事・解説・データ等の活用)は用済みとし、再利用に含めないものとする
  2. 上記に加え、「直接、廃棄する」以外の、再加工を含む如何なる利用も再利用とする
  3. 2つ以上の利用方法の組合せは除外する
第1階層第2階層第3階層第4階層第5階層第6階層第7階層第8階層第9階層再利用例、内容説明
用済み新聞紙の再利用方法新聞紙を単独で再利用する新聞紙を新聞紙のままで再利用するシート状の形状を変えないで新聞紙を切断しないで再利用する新聞紙を広げた状態で再利用する再利用時にも広げた状態のままである  敷物(タンス・下駄箱の中、畳の下、畑の植物の栽培時に植物の周りに敷くマルチング材料としての利用など)、カバー(対象物の保護・汚れ防止、遮光、目隠しなども)、紙としての文字やグラフィック描画用途。
再利用時には広げた状態とは異なる形態となる  包装用紙として利用する
新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する新聞の短辺または長辺と平行に折り畳んで折り畳んだ新聞紙1枚でも機能する 敷物、カバー、スペーサー、押し葉・押し花の挟み紙
折り畳んだ新聞紙1枚では機能しない 積重ねて踏み台、椅子代わりに
新聞の短辺・長辺方向とは無関係に折り畳んで  大型の折り紙として
新聞紙を切断して再利用する切断した新聞紙を広げた状態で再利用する再利用時にも広げた状態のままである切断した新聞紙1枚でも機能する単なる紙として利用する敷物、カバー、文字やグラフィック描画用途
新聞紙面上にある文字を利用する筆跡不明の文字として使用する
切断した新聞紙1枚では機能しない 紙吹雪、偽紙幣束
再利用時には広げた状態とは異なる形態となる切断した新聞紙1枚でも機能する 包装用紙、ハナ紙、トイレットペーパー(水洗式用途には使用できないが)、紙テープ、凧の足、汚れ拭き、油分・水分吸収材、クッキングシート代わり、汚れたものどうしを重ねるときのスペーサー、野菜の保存、窓拭きなど。
切断した新聞紙1枚では機能しない 短冊状に切断した新聞紙をランダムに丸めてパッキング材料として
切断した新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する新聞の折り目に沿って畳んで  団扇代わり、ちょっとした虫や蜘蛛などを叩くときにも使える
新聞の折り目とは無関係に畳んで  紙細工、紙飛行機など折り紙として
シート状の形状を変えて型に合わせないで新聞紙を折って箱状にして  ゴミ入れなど容器として
様々な形状に折って  帽子(紙製兜など)、スリッパ、即製防寒衣服など
クシャクシャに丸めて  クッション材、パッキング材。遊具のボール代わり、油・水分吸収材としても利用できる
新聞紙を折らないで筒状に巻いて1つの筒状の棒として チャンバラ棒、ゴキブリ叩き、バット、ラッパ、吹き筒
多数の筒状の棒を並べて 合体させて板状のものにして
型に合わせて新聞紙面に凹凸を形成してクッション材のような形状にイボイボを形成する  パッキング材として
容器の形状に合わせて容器の内面に沿って新聞を並べて  容器の内面保護・汚れ防止に。油汚れ等のゴミ入れ、容器など
新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する利用に際して化学的に分解しないインクを除かないで新聞紙のパルプ繊維をバラバラにしないで再利用する新聞を千切った程度で再利用する  濡れた新聞を細かく千切った程度で、掃除の際の茶殻代わりに
新聞紙のパルプ繊維をバラバラにして再利用するセルロース繊維レベルまでに完全にばらして  断熱素材として。「エコファイバー」(古新聞などの繊維をバラバラにした断熱素材)というものがある
水洗によりインクを除いて新聞紙のパルプ繊維をバラバラにして再利用するインクを除いて、製紙工程に  再生紙の原料とする。再生紙にはいろいろあるが、新聞紙、雑誌用紙、ボール紙など
インクを除いて、モールド工程に  紙製モールドの原料とする。卵容器、梱包材、鉢などのパルプモールド
除いたインクを再利用する   印刷用インクに
利用に際して化学的に分解する新聞紙のままで熱分解する炭素および水素を利用するそのままで燃やす  燃料、焚き付け、燃焼炎による明かりとする
蒸焼きにして  木炭ガスと炭にして共に燃料とする
炭素だけ利用するパルプ繊維の状態で蒸焼きにして  炭素繊維やカーボンナノチューブの原料にする←可能かどうか不明
新聞紙のパルプ繊維(セルロース)を酵素で分解する微生物による酵素分解で   ヤギなどが分解酵素によって消化して飼料となる←和紙はともかく新聞紙は怪しい
酵素(セルラーゼ等)で分解するオリゴ糖に変えて  植物が作った繊維であるセルロースはある種の酵素で分解することによって、ブドウ糖を数個つなげたオリゴ糖などに変換できる
新聞紙を他のものと組合わせて再利用する新聞紙は新聞紙のままで他のものと組み合わせて再利用する紙糊で貼り合わせて立体物を形成して張り子に貼り重ねて立体物にする各種張り子造形物  運動会の鈴割ゲーム用の鈴、催し物の張り子人形・動物など
物体の形状に合わせて張り重ねて立体物を形成し、剥がして再利用する容器として  ゴミ箱・鉢など。新聞紙を濡らして、容器形状に合わせて複数枚張り重ね、型からはずし乾燥させて使い捨て容器とする
造形モデルとして  新聞紙を濡らして、物体形状に合わせて複数枚張り重ね、原型物体からはずし乾燥させて造形モデルとする
貼りつないで、重ね、袋状に形成して   紙風船、熱気球など
立体物を形成せず貼りつないで大きな紙として   大凧用の紙として
貼り重ねて厚紙・厚板として   ベッド、テーブル板材として実用されている
紙糊以外のものと組み合わせて木材・竹などに新聞紙を巻いて建築材にして    室内の見えない部分の建築材料として使えそう
プラスチックと重ねるなど組合せて    こういう組合せもあり得る
新聞紙は少なくとも一旦異なるものにして他のものと組み合わせて再利用する新聞紙のパルプ繊維(セルロース)をバラバラにしてそのまま再利用する水分を加えて澱粉糊混練して   紙粘土として
ベントナイト(モンモリロナイト)と混練して   紙粘土として
土壁と練り合わせて   壁材に
水分を加えず大豆の絞りかすと混練して   「エンバイロン」(古新聞を粉砕し、大豆の絞りかすを接着剤として熱圧成型したボード)という板材がある
燻炭(籾殻の蒸焼き炭)と混ぜて   断熱素材に
新聞紙のパルプ繊維(セルロース)をバラバラにして化学的に変化させて再利用する化学物質・酵素を使って別の素材にして自然由来の繊維として   天然繊維に
セルロース系プラスチックとして   生分解性プラスチックに
化学物質・酵素を使って新たな原料にしてGM酵母によりアルコールへ変化させて   エタノール(バイオ燃料)
分解して生成した糖類に他の食用物質を加えて   食物・飼料

第4章 論理ツリーへの展開:続きページ(5)→戦略案創出のための枠組みを設定する