第4章 論理ツリーへの展開:最終ページ(8)
4.3.4 深く幅広いアイディアを創出するには
課題の解決策を検討する場面では,どのような課題であっても基本的にはロジックツリー,言い換えればフレームワークを用いた論理展開によって,目的に合った解決策の枠組みを設定して,具体的なアイディア(解決策)を考えるというアプローチとなる.
課題にも解決策の方向に関して制約条件の狭いものから,制約条件が無いに等しい,あらゆる可能性を検討するようなものまでいろいろな性格の課題がある.本小節では,制約条件の比較的少ない課題を取上げて,可能な限り幅広いアイディア創出につなげるためにフレームワークを豊かにするためのポイントについて学ぶ.
常に成り立つと考えられる分類コンセプトの設定の仕方というものがあるとすると,それは本質,つまり「原理」に着目した分類である.通常,本質に焦点を当てた分類を使うと明確で必然性の高いフレームワークを作成することができる.それは原理の異なるものはあくまで異なる枠組みに置かれるようになるからだと考えて良い.
この課題では「明り」が光を発する原理に着目すれば,明確で「切れ」の良い分類が可能になる.
フレームワーク作成に関して普遍的な言い方をすると,上位階層ほど,可能な限り分類対象に対して直接的な切り口を使い,間接的な切り口を使わないようにするということである.本質・原理に着目すると自ずと直接的な分類となる.
不適切な分類の1つは,MECEでない分類であるが,MECEであってもいくつかの不適切な分類というのがある.
・目的に合っていない分類
・必然性の乏しい分類
・切り口が不明確な分類
・抽象度が状況に適していない分類
・問題先送り型の分類
例えば,本課題において「明り」を「使う場所」や「使う目的や用途」で分類するのは,分類対象にとって間接的な分類であるため,上記の「切り口が不明確な分類」となり勝ちである.本課題のように「明り」一般など,抽象度の高いテーマをいきなり用途で分類するというのは,元々無理がある脚注4-11).
勿論,誤解のないように補足しておくが,例えば,照明器具販売のカタログ作成を目的として「明り」の分類をするというのであれば,抽出される「明り」にも外形デザインや特徴で識別されるような用途による分類や使う場所での分類というのは決してマズイものではなく,むしろ適切であろう.
さて,上位の方で使えそうな切り口というのは,課題に対して本質的で大きく分類するために適切な抽象度の明確な切り口であり,単に,たまたま思いついた切り口は,目的達成志向的な切り口とならない場合が多い.
ただ,時には異質なものを最初に分離するための切り口を使うことことが思考を整理するために助けになる場合もある.例えば,例題4-9のフレームワーク作成において,「明り」の本質に迫る「光を発する原理」に焦点を当てて分類の切り口を設定するような場合に,「レーザー」のように他のものとは異質の原理が使われている「明り」は,比較的上位で切り離して考える方がわかり易い.
一方,たまたま思いついた切り口というのは,上位の分類として必然性の乏しい,例えば,「太陽である」と「太陽ではない」といった発想の切り口である.このような発想に立って,下位の分類を展開して行くと,多くの場合に下記のようなイメージのフレームワークになる.
>太陽ではない
>電球である
>電球でない
>蛍光灯である
>蛍光灯でない
>蛍である
>蛍ではない
上記のフレームワークはどの階層においても「A」と「非A」のMECEな組合せとなっているが,常に「A」は必然性の乏しい,思いつきレベルで決定されており,次にどのような「A」が登場するのか見当がつけられない状態である.「非A」の中に残りの問題を積み残したまま展開されて行く,言わば問題先送り型のロジックツリーなのである.
やや言い過ぎかもしれないが,問題先送り型のロジックツリーはどのように形態を整えても何の役にも立たないだろう.せっかく切れ味の良いはさみを持っていても,良く考えもせず無闇に使えば紙くずを散らかすだけである.
ロジックツリーのところでも触れたが,フレームワークを作成する際に共通して言えることは,フレームワーク作成場面で,「あまり良くないかな」と感じたら,実はそれが大事な契機だということだ.「何か変かな?」,「どちらの分類になるのか」,「イマイチしっくり来ない分類かな」など良く考えなくてはならない状況に直面したときに,その矛盾というか,曖昧さを解決する思考が求められるわけで,それを克服する度にフレームワークの水準が向上するのである.
目的と状況に応じた分類を使えば宜しいので,切り口には何の制約もないが,納得の行かない分類にしないように切り口を考える,表記を明確にするなどに関して「知恵」を働かせる必要がある.
切り口の設定に関するポイントについては,ロジックツリーのところでも説明済みなのでこのくらいにして,ここでは,フレームワークを豊かにするにはどうすれば良いかに関して具体的な例を使って紹介しておくことにしよう.
例えば,まず,次のようなある分野「人工界に見られる高温物質・物体からの発光」に属するいくつかの具体的な「明り」3点を挙げたとして,ボトムアップにより,十分なフレームワークに仕上げて行くということを実施してみよう.
人工界に見られる高温物質・物体からの発光→白熱電球,マッチの燃焼,火打石による火花 |
次に,挙げた3 点の「明り」について上位概念を考える.
人工界に見られる高温物質・物体からの発光 |
>通電加熱による←白熱電球 |
>燃焼加熱による←マッチの燃焼 |
>摩擦加熱による←火打石による火花 |
上位概念に従い,いろいろな具体例を考えて追加する.
人工界に見られる高温物質・物体からの発光 |
>通電加熱による→白熱電球,電気ストーブ,電熱器 |
>燃焼加熱による→マッチの燃焼,ろうそくの炎,炭火,ガス燈,たいまつ |
>摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花 |
同じグループの具体例を良く眺め,識別可能な中間の上位概念を形成する.
人工界に見られる高温物質・物体からの発光 |
>通電加熱による |
>照明器具←白熱電球 |
>非照明器具←電気ストーブ,電熱器 |
>燃焼加熱による |
>個体の燃焼←マッチの燃焼,炭火,たいまつ |
>液体の燃焼←ろうそくの炎 |
>気体の燃焼←ガス燈 |
>摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花 |
作成した中間の上位概念に従い,下位の具体事例を考えて追加する.
人工界に見られる高温物質・物体からの発光 |
>通電加熱による |
>照明器具→白熱電球 |
>非照明器具→電気ストーブ,電熱器 |
>燃焼加熱による |
>個体の燃焼→マッチの燃焼,炭火,たいまつ,マグネシウムの燃焼,花火 |
>液体の燃焼→ろうそくの炎,石油ストーブの炎,アルコールランプ |
>気体の燃焼→ガス燈,アセチレンガス燈,石炭ガスの燃焼炎 |
>摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花 |
更に上位概念を考え,上位概念に従い,新たな明りを追加する.新たな「>固体の燃焼」の具体例を考える場合に,「>金属の燃焼」という枠組みがあれば「鉄の酸素による燃焼」といった具体例が考えやすくなるだろう.
人工界に見られる高温物質・物体からの発光 |
>通電加熱による |
>照明器具→白熱電球(懐中電灯,赤外灯,野外照明灯・・・) |
>非照明器具→電気ストーブ,電熱器,電気コタツ・・・ |
>燃焼加熱による |
>個体の燃焼 |
>金属物質の燃焼←マグネシウムの燃焼,鉄の酸素による燃焼・・・ |
>火薬類の燃焼←マッチの燃焼,花火,爆薬 |
>炭素系物質の燃焼 |
>動植物←炭火,たいまつ,焚き火,薪・・・ |
>化石燃料←石炭の燃焼,コークスの燃焼 |
>液体の燃焼→ろうそくの炎,石油ストーブの炎,アルコールランプ,提灯 |
>気体の燃焼→ガス燈,アセチレンガス燈,石炭ガスの燃焼炎 |
>摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花,車輪ブレーキの火花 |
このように,元の3つのアイディアが25個程度になっており,上位概念の形成と下位の具体的な事柄の発見を繰返すことによって,フレームワークを豊かにして行くことができる.元の3つのアイディアの上位概念から出発したので,例えば,「原子核反応による発光」,「高温物体からの発光」などは落ちてしまっているが,このようなことを避けるためには,「>その他の発光による」という枠組みを残しておくことも配慮しておくとよい.
例題4-9のフレームワークは解答例の表4.9を参照していただきたい.
課題:ほんの僅かな光でも目で見て明るさを感じることができれば「明り(あかり)」だとすると、この世の中にはどのような「明り」があるだろうか。
前提条件:
- ほんの僅かな光でも目で見て明るさを感じる「明り」を「発光体」とする
- 外部からの一次光を反射または透過して光を発しているように見えるものは発光体に含めない(月光、虹、宝石、「明り」があるところで見える物など)
- 光を発する生物は外部から取り込んだ栄養素やエネルギー源によって発光するが、自ら発光する発光体の分類に含める(蛍など)
第1階層 | 第2階層 | 第3階層 | 第4階層 | 第5階層 | 第6階層 | 第7階層 | 第8階層 | 具体例 | 備考・補足的内容説明 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
どのような「明り」があるか | 発光体は外部からのエネルギー供給によって光を発する | 光共振によらない光を発する | 外部から供給されるエネルギーは電磁波または電磁粒子である | 発光体が固体である | 発光体が外部からの紫外光により励起され、可視光を発する | 励起光を遮断すると発光を停止する | 励起紫外光の発生に放電を用いない | 蛍光体 | 大気中でも起こる。蛍光塗料、蛍光材(剤)、蛍光顔料、蛍光ペン用インクなど |
励起紫外光の発生に放電を用いる | 熱陰極蛍光灯(HCFL) | 放電管内で生じた励起原子が基底状態に戻る際に発生する紫外線が蛍光体を励起して蛍光を発する | |||||||
冷陰極蛍光灯(CCFL) | 発光メカニズムはHCFLに類似 最近ではLEDに置き換わりつつあるが、LCDのバックライトに使われている | ||||||||
プラズマディスプレイ | 原理的にはセルごとに制御可能な微小放電管面に塗布された蛍光体を管内の気体放電により励起して発光させる | ||||||||
励起光を遮断しても発光を持続する | りん光 蓄光性夜光塗料 | りん光は禁制準位間の遷移。 蓄光とも呼ばれる現象。N夜光塗料(アルミン酸ストロンチウム系、放射性物質ラジウム・プロメチウム系)が代表的。 | |||||||
発光体が外部からの電子により励起され、可視光を発する | 電子線照射によって励起される | ブラウン管(CRT) | 真空中で電子ビームを蛍光体に照射することによって、励起された蛍光体から光が放出される | ||||||
FED、SED | 基本原理はCRTに同じ | ||||||||
電界により励起される エレクトロルミネッセンス | 電子注入によって励起される(注入型EL) | LED(発光ダイオード) | 電極から半導体に注入された電子と正孔は異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、PN接合部付近にて禁制帯を越えて再結合する。再結合の際にほぼ禁制帯幅(バンドギャップ)に相当するエネルギーが光として放出される | ||||||
有機EL(有機LED) | 有機ELでは有機物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子によって発光する。 | ||||||||
電子衝突によって励起される(真性EL) | 無機EL | 電界により加速した電子が半導体内で発光中心に衝突、発光中心を励起させて発光する。 | |||||||
発光体が外部からの放射線により励起され、可視光を発する | 自発光性夜光塗料 | 蛍光体に混合してある、放射性同位元素の自然崩壊エネルギーを蛍光体励起に用いる | |||||||
発光体が気体・プラズマである | 発光体が人工的な放電現象により励起され可視光を発する | 気体アーク放電による | 金属原子の高圧蒸気を使う | 高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ | 水銀とアルゴンガス、水銀にメタルハライドの組合せ=各種メタルハライドランプ(ハロゲンには通常、ヨウ素、臭素が用いられ、メタルにはNa、Li、、Tl、In、Ga、K、Sc、Dy、Nd、Tm、Ho、Th、Feなど。他に金属ハロゲン化物の分子の連続スペクトル発光を利用するもの:SnI2、SnBr2、InI、InBrなど。) | ||||
金属原子の高圧蒸気を使わない | アーク放電ランプ | 通称の水銀灯やキセノンアークランプなど。 キセノンランプにはショートアーク(直流)型、ロングアーク(交流)型、後者をパルス発光させるキセノンフラッシュランプ(いわゆるストロボ)がある | |||||||
気体グロー放電による | ネオン管 | 代表的なランプはネオン管である | |||||||
ECR放電による | ヘリウム光源(UV光) | マイクロ波を用いたECR(Electron Cyclotron Resonance)放電によりプラズマを発生させ、比較的高準位のUV光などを得る | |||||||
発光体が自然界に起こる現象により励起され可視光を発する | プラズマ粒子によって励起される | オーロラ | 太陽風からのプラズマ粒子によって励起された大気粒子が基底状態に戻るときに発する光である | ||||||
大気の絶縁破壊により、電子と電離イオンとが励起源となる | 稲妻、静電気による放電光、セントエルモの火(コロナ放電) | 大気間、物体間の電位差による空気の絶縁破壊により電子が放出され、放出された電子が空気中にある気体原子と衝突してこれを電離させる。電離によって生じた陽イオンは、電子とは逆方向に高速で気体分子と衝突し新たな電子を叩き出す。この2次電子が更なる電子雪崩を引き起こし、持続的な放電現象となって下層へ向って静電気放電光が飛ぶ。 | |||||||
外部から供給されるエネルギーは熱エネルギーである | 発光体が(熱エネルギー供給に直接的にかかわり、)直接的に加熱されることによって光を発する | 熱エネルギーは物理反応によって供給される | 発光体の人工的な直接加熱による | 電気的(ジュール)加熱によって | 電熱器、電気ストーブ | 多くはニクロム線ヒーターが使われている | |||
タングステン、レニウムなどのフィラメント電球 | いわゆる白熱電球、豆電球(懐中電灯) 導電体に通電し、ジュール加熱により導電体の温度を上昇させることにより、黒体輻射させる | ||||||||
ハロゲンランプ | 蒸発するタングステンフィラメントとハロゲン元素との化合・分解・還元というハロゲンサイクルにより、フィラメントの長寿命化と高輝度化が図られている | ||||||||
真空管 | 二極管、三極管、マグネトロンなど 熱電子放出を目的としているフィラメントを有するが、電球ほどの明るさではない | ||||||||
アーク放電によって | アーク灯 | 先端を尖らせた炭素の電極棒2本を向かい合わせ電圧を印加し、電極を最初に接触させてから少しだけ離すと火花が発生し、空気中を電流が流れ電極の先端が約4000℃に加熱され青白く輝き始める | |||||||
アーク溶接光 | アーク溶接の際に生じる閃光 | ||||||||
レーザ加熱によって | レーザ加工時の発光 | CO2レーザーなどで金属板を切断する際に生じる光 | |||||||
運動エネルギーが熱エネルギーに転換する現象による | 衝突によって生じる | 隕石の衝突 火打石、打撃 | 物体の運動エネルギーが短時間に熱エネルギーに転換され、衝突を受けた物質が高温になることによって光を発する | ||||||
摩擦によって生じる | 流星軌跡の残光 | 隕石や人工天体の地球への落下によって、空気との摩擦熱の発生により加熱された空気が発熱発光する | |||||||
車輪のブレーキ駆動時の発光 | 硬いものどうしの摩擦による発光(例えば線路から発せられる火花) | ||||||||
熱エネルギーは化学反応によって供給される | 燃焼(酸化)反応による | 固体の燃焼 | 花火、火薬、爆薬、マッチ、炭火、焚き火、石炭燃焼、金属の酸化、山火事など | 石炭、コークス、木材、木炭、たばこ、ろうそく、メタルハライド、線香、硫黄、リン、マグネシウムなど各種固体物質の燃焼において発せられる光 アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素、その他金属の燃焼時には何らかの特有な光が発生する | |||||
液体の燃焼 | 燈明、提灯、ライター、ランプなど | 石油、アルコール、植物油、ベンゼンなどの液体の燃焼において発せられる光 | |||||||
気体の燃焼 | ガスバーナー、ガスコンロ、アセチレン灯など | 水素、メタン、アセチレン、天然ガス、LPGガス、炭化水素系ガスなどの燃焼において伴う光 | |||||||
燃焼(酸化)以外の反応による | 何かあるだろう? | 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウムなどにより発火・爆発するほどの酸化反応などは単なる燃焼とは違う | |||||||
発光体が間接的に加熱されることによって光を発する | 黒体放射以外により発光する | 炎色反応により発光する | アルカリ金属、アルカリ土類金属など | 気体などが燃焼する高温炎の中に特定の元素を含む化合物を晒すことによって、電子状態を励起させ、それが基底状態に戻るときに特有のスペクトル光を発する | |||||
黒体放射により発光する | すべての高温物質からの発光 | 高温物質(固体、液体、気体)の発する黒体放射 固体:熱した岩石・ガラスなど 、液体:溶融金属・塩など、 気体:原理的には高温の気体状態である恒星に同じ | |||||||
外部から供給されるエネルギーは化学エネルギーである | 蛍光物質が他からエネルギーを受けて発光する | シュウ酸エステルによる化学発光 | 系内に存在する蛍光物質が他の分子などからエネルギー移動して励起され、蛍光物質の発光が観測される間接化学発光である 過シュウ酸エステル化学発光ではシュウ酸誘導体と過酸化水素との反応に伴って、共存する蛍光物質が発光するので、過シュウ酸エステル化学発光での発光色は蛍光物質固有の色になる。共存する蛍光物質を変えることにより、発光色を変化させることが可能となる。 | ||||||
光共振による光を発する | すべての可視レーザー光 | 光励起、放電、化学反応、電子衝突等、さまざまな方法で行われる。光励起を用いるものの中には他のレーザー光源を用いる方法もある。また半導体レーザーでは、ポンピングは電流の注入により行われる。 | |||||||
発光体は外部からのエネルギー供給によらず自ら光を発する | 非生物発光体 | 物理反応による | 内部エネルギーは核反応エネルギーによる | 核分裂エネルギーによる | 核分裂反応が自然に起こる(地球などの惑星内部で) | 多くの小天体内部、地球の火山・マグマ・高温溶岩 | 高温マグマによる輻射 超新星爆発などにより鉄より重い元素が作られ、それらが大量に存在するタイプの恒星では内部の核分裂反応により高温状態が作られる | ||
核分裂反応を人工的に起こす | 原子爆弾、原子炉 | 原子炉では核分裂反応を制御しており、通常の状態では光を発することはなさそう | |||||||
核融合エネルギーによる | 核融合反応が自然に起こる(恒星内部における重力によって) | 多くの恒星 代表的には太陽 | 殆どの恒星は内部で主として水素がヘリウムに変化する核融合反応を起こして輝いている 太陽は最も近い恒星であり、地球にとって最大・最強の光源であろう | ||||||
核融合反応を人工的に起こす | 水素爆弾、核融合炉 | 核融合炉が実現されるとすれば、高温部分は不可欠であり光を発することになるはず | |||||||
内部エネルギーは運動エネルギーである | 運動エネルギーが熱エネルギーに転換される | 物体どうしの衝突による | 星雲・天体どうしの衝突・隕石の衝突光 | 衝突によって生じた熱による運動物体側の高温物質から光が放出される | |||||
物体の摩擦による | 流星・ロケットの大気圏突入時の光 | 当該物体が高温になることによって光を放出する | |||||||
運動エネルギーが制動輻射エネルギーに転換される | シンクロトロン放射光 | 高速荷電粒子が磁場中に飛び込んだ際に磁場により回転運動させられることにより(いわば磁場により制動を受け)、磁気制動輻射光を発する | |||||||
化学反応による | ルミノールの化学発光 | 分子単独で励起状態を形成する直接化学発光である オゾン、鉄錯体、血液中のヘミンやヘモグロビンなどにより青白い発光を生じる | |||||||
生物発光体 | 植物 | 単細胞生物 | 単細胞藻類 | 夜光虫、渦鞭毛藻の発光 | 植物プランクトンの一種。夜光虫はノクチルカシンチランスというプランクトン。 | ||||
胞子植物 | きのこ類 | ツキヨタケ | ランプテロフラビンという物質が発光している | ||||||
種子植物 | 人工発光植物 | 発光遺伝子組込み植物 | 発光酵素(ルシフェラーゼ)の遺伝子を組み込んだ植物 | ||||||
動物 | 酵素(ルシフェラーゼ)が発光基質(ルシフェリン)を発光させる | 単細胞生物 | バクテリア | 発光バクテリア | 発光酵素(例えばルシフェラーゼ)を有する。海産でイカの体表面などに生息する | ||||
共生バクテリア | ヒカリキンメダイ、マツカサウオ | 共生しているバクテリアによる発光 | |||||||
海洋生物 | 海洋性小型甲殻類 | ウミホタル | 体内に比較的安定な蛍光物質を有する | ||||||
ソフトコーラル | ウミサボテン | ||||||||
陸上生物 | 蛍 | 典型的なルシフェリン-ルシフェラーゼ(酵素)反応により発光する | |||||||
ヒカリコメツキ | 蛍と同様 | ||||||||
鉄道虫 | 頭部が橙色から赤色に、腹部が緑色から黄色に発光するホタルモドキ科の発光甲虫 | ||||||||
土ボタル(グローワーム) | キノコバエ科に属するブヨの一種で、特に幼虫の時におしりの先端が強く光る発光虫 | ||||||||
蛋白質が化学反応によって、蛍光を発する | 細菌 | 人工発光菌 | 発光遺伝子組込み大腸菌 | 発光クラゲの遺伝子を組み込んだ大腸菌の発光 | |||||
海洋生物 | クラゲ類 | オワンクラゲ | グリーン蛍光タンパク質(GFP)というタンパク質遺伝子を持つ | ||||||
サンゴ類 | オオカワリイソギンチャク | 蛍光タンパク質を持つと考えられている | |||||||
イカ類 | ホタルイカ | 10本の足のうち、発光器を持つのは2本の足だけである。そこに強い光を放つ発光器が3つ並んでいる | |||||||
トビイカ | 発光タンパク質シンプレクチンを有する | ||||||||
深海生物 | チョウチンアンコウ、ハダカイワシなど | 深海魚の半数ほどは発光生物と言われる | |||||||
陸上生物 | ? | このタイプの陸上生物もいるだろう |
以上のように,通常,ボトムに限らず,枠組みの上位概念を考える,再び下位概念を考える,情報収集する・思考するということを繰返せば自ずと豊かなフレームワークが形成される.具体的な事柄は何も,既知のものである必要はないので,枠組みに沿った新たなアイディアを考え出しても構わない.
充実したフレームワークを作成するには,異なるものどうしの間で,多様な共通するものを見出し,非共通なものを明確に峻別する能力を駆使することである.
4.4 本章のまとめ
本章では論理的思考の第2の応用分野としてロジックツリーを作成し,論理展開することについて学んだ.ロジックツリーに関する約束事の説明を通じて,目的達成志向の切り口,MECEなツリー展開,同一階層内における次元の統一等の概念と表記法を理解した.
ロジックツリー作成には論理ピラミッドと同様にトップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチがあった.トップダウン・アプローチにおいては上位目的を達成するために適した切り口による枠組みを設定することが,ボトムアップ・アプローチにおいては具体的な事柄を挙げ,異なるものどうしの間に共通することを見出すことが,そのポイントになるということを学んだ.
ロジックツリーの応用においては,発生型の問題における本質的原因の発見,課題解決策・戦略案創出のための枠組み設定,要素への分解などについて具体的に学んだ.更に,ロジックツリーは思考の枠組みとして活用することが可能であり,創造思考を支援するアイディア創出や対人力的課題解決への支援を担うフレームワーク思考の有用性についても学ぶことができた.
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