今から15年くらい前では、コンサルタントでさえMECE(ミッシーorミーシー)を知らない人がいるという時代でしたが、今日では、ロジカルシンキング(論理的思考)を学んだ人であれば、ロジックツリーやMECEを知らない人はいないでしょう。

きっと、あなたもご自分でMECEなロジックツリーを作成されたことがありますね。でも、あなたは、ご自分で作成したロジックツリーに満足できていますか?

ご承知のように、何らかの目的に対して、ロジックツリーを作成する必要がある場合に、MECEであっても、目的に適したロジックツリー展開ができているとは限らないという現実があります。実際、研修などを実施した際に、例題を出題してみると、とても使い物にならないロジックツリーを作成している場合が多く見られます。

この記事では、MECEにも触れながら、どうしたらゼロベースから目的に適したロジックツリーを作成できるようになるのか、ロジカルシンキング(論理的思考)における典型的なロジックツリー作成の例題を取り上げながら、少しでもヒントになる事柄について簡単にご紹介したいと思います。

ロジックツリー、MECEについてはこちらもご覧ください。→ロジックツリーの作成
ロジックツリー展開においては、本記事でご紹介する事柄以外に“次元を揃える”といったことも必要になりますが、「次元」についても詳しく説明しています。

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1.MECEはロジックツリー作成の“基本のキ”

1)MECEは必要条件!

MECEというのは

MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive(相互にダブリがなく、全体としてモレがない)

という英語の頭文字を並べたもので、日本語で言えば「ダブリもモレもない」という意味ですね。

MECEに関しては、今では猫も杓子もというくらい、ビジネス・パーソンの間では広く知られるようになりましたが、実はMECEには論理的な意味合いがありますので確認しておきましょう。MECEの概念は次の「排中律」が下支えしていると考えられます。

論理学においては、基本的な論理法則の一つに次の

排中律:X はAであるか、Aでないかのいずれかである。

という法則があり、「無限」などを扱わない形式論理学では、この法則は正しいとされています。

排中律は、「如何なるものも“Aであるもの”か“Aでないもの”のいずれかである」というように重なりがなく、ちょうど足して100%になるように分けられること(ダブリがなくモレのない分割)を保証しています。

MECEの概念は「Aと非A」に限らず、“ダブリがなくモレのない分割”として拡張されていますが、ゼロからロジックツリーを考える場合に「Aと非A」という分割は、常にMECEであり、大変役に立ちます。

ところで、どうしてロジックツリー展開はMECEでなければならないのでしょうか。

ロジックツリーの上位と下位の関係は、論理的に常に等価の関係(同等・イコールの関係)でなければなりませんので、MECEであることは当然の必要条件であるとも言えます。モレがあれば、不足部分が生じるわけですし、ダブリがあれば、余分な重なり部分が存在することになりますので、信頼の置けないロジックツリーになってしまいます。

2)MECEが使えないとどうなる?

論理学的な下支えのあるMECEが、ロジカルシンキングを活用する際に、盛んに用いられるようになったのは、便利で、明快で、わかりやすい分割概念を提供してくれるからだろうと思われます。ロジカルシンキングを体系的に学んだ人であれば、MECEは理解しており、ロジックツリーの作成の際には、何とかMECEな展開を心がけていると思います。

しかし、ロジカルシンキング研修を実施すると、普段「なぜなぜ分析」を活用している受講者や少しばかりロジカルシンキングをかじった人などが参加してくる場合があり、ロジックツリー作成の演習では、MECEでないロジックツリーを平気で作成する傾向が見られます。

「なぜなぜ分析」についてはこちらもご覧ください。→どこがマズい?なぜなぜ分析

例えば、次の例題に取組んでいただくと、そのことがわかります。

例題
「信号待ちで停車していた前車に後続車が追突した事故」が起きた。この事故原因を抽出するためのロジックツリーを作成しなさい。
但し、事故を起こした車両には、自動ブレーキ機能は搭載されていないものとする。

参考解答例:
主語は省略していますが、「主語=後続車の走行ないしは運転手」(以下同様に省略します)を前提として

一見、これで良さそうに見えますが、第2階層

  • ブレーキをかけるのが遅かった
  • ブレーキをかけたがスリップした

は最上位命題「信号待ちで停車していた前車に後続車が追突した」に対して、MECEではありませんね。

どちらも「ブレーキをかけた」ことになりますが、ブレーキをかけていなかった可能性があります。つまり、本来、第2階層では「追突する前にブレーキをかけた」、「追突する前にブレーキをかけなかった」といったMECEな分割が必要であり、例えば、「わき見運転をしていて、ブレーキをかけずに追突した」といった原因が抜け落ちてしまいます。

つまり、MECEを理解しないでロジックツリー展開すると、モレ(時にはダブリも)が生じてしまうということです。

2.ロジックツリーは切り口が命!

ところで、ロジックツリーの作成において、MECEという概念はある切り口で分解した場合にモレやダブリがないことを保証してくれますが,切り口の良し悪しまでは保証してくれないのです。

「なぜなぜ分析」やさまざまな「問題解決」の過程で、ゼロベースからロジックツリーを作成する必要が生じますが、どのような場合であってもロジックツリーを作成する場合には必ず目的があります。たとえロジックツリーに展開する際の分割がMECEであっても、目的に適したロジックツリーでなければ、役に立ちません。「MECEでもNG」になってしまいます。

このことについて、先の例題を、ロジックツリーの第2階層について具体的に考えながら、理解してみましょう。

例えば、次のようなロジックツリーではどうでしょうか。

上記の3つのロジックツリーは、どれもMECEに展開されていますね。しかし、追突事故には無関係ではないと思われますが、直接的な関連を見出すことは難しいのではないでしょうか。

例えば、「信号が青だった」ら、「前車は走行中と誤認識した」といった切り口が考えられます。しかし、仮にそうだとしても「停車している前車に追突した」事実が存在するわけですから、「ブレーキをかけなかった」とか、「アクセルペダルを踏み込んだ」といった事柄が、信号の色にかかわらず、いずれ登場しなくては、追突事故を起こすことがないはずですね。

他も同様に、仮に「高齢者や茶髪の若者が事故を起こしやすそうだ」からといって、あるいは「外が明るかろうが、暗かろうが」、いずれも「ブレーキ」より優先して登場する必然性がありませんね。従って、これらのツリーは追突事故の原因を抽出するために適した切り口が設定されていないことがわかります。

以上のように、単にロジックツリーに展開して検討するという場合においても、ロジックツリー作成の目的に適した切り口で展開されたものでなければ役に立たないことがおわかりいただけると思います。

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3.目的に合った切り口でロジックツリーを作成するには?

ロジックツリー作成における適切な切り口の設定は、馴れない人にはなかなか難しいものですが、面白いことにコンサルタント達は、いとも簡単に設定できてしまいます。

しかし、世の中のコンサルタント達は、どうしてそのようなことになるのか、その辺の事情に気づいていないようで、「どのようにすれば適切な切り口が設定できるか」に関して、クライアント達にも説明できていないと思われます。また、ロジカルシンキング関連書籍はコンサルタントが書いている場合が多いということもあり、やはりロジックツリーを作成する際の切り口の設定方法について、殆ど説明されていないというのが実態です。

1)目的達成志向的な切り口を設定するには?

ロジックツリーの作成においては、論理的整合性の観点からMECEに展開する必要はありますが、どのような事柄にツリー展開するかについては、制限がありませんので、大げさに言えば無数の分割方法の可能性があります。

しかし、ロジックツリーを作成するという場合は何らかの目的があって作成するわけです。更に、ロジックツリー作成の目的は、ロジックツリー展開した結果の最下位層に登場する具体的な事柄の中に目的に合った原因や項目・事柄を抽出する点にあります。従って、目的に合った原因や項目・事柄が抽出できるような切り口が「目的達成志向的」な切り口ということになります。

適切でないロジックツリーでは目的に合った原因や項目・事柄を抽出できませんので、ロジックツリーの作成においては、目的達成志向的な切り口の設定が重要なのです。

例えば、先の「信号待ちで停車していた前車に後続車が追突した事故」の原因を抽出するロジックツリーの最下位層で、高い確率で起こり得る原因の1つ、「後続車の運転手は、わき見運転をしていて、追突寸前に気づいたが、あわててアクセルペダルを踏んでしまった」程度のことが抽出できなくてはなりません。

では、目的達成志向的な切り口を設定可能とするにはどうしたら良いのでしょうか。一般的な説明としては、以下の点(重複する場合があります!)に留意して切り口を設定すると宜しいと思います。

  • 問題の事象に関わる原理・原則・仕組み・メカニズム・構成・構造等の本質に注目する
  • 問題の事象に直接的に関係する事柄を包含し表面化させる
  • 問題の事象を発生させる確率の高い事柄に注目する

順に説明します。

2)原理・原則・仕組み・メカニズム・構成・構造等の本質に注目する

何か問題となる現象の原因分析がロジックツリーの対象であれば、その現象が起きる仕組みやメカニズムが切り口を提供します。

例題のケースでは、「停車している前車の後部に、ヒトの運転で前方に動く後続車が衝突した」という単純なメカニズムですから、「ヒトの運転で後続車が停止しない状況」を抽出すれば、目的が達成し易いということになります。

具体的には

  • ヒトが停車中の前車に気づいたかどうか
  • 車の速度を変えたかどうか
  • 車や走行環境が関連したかどうか

といった事柄が切り口の候補になるでしょう。

3)直接的に関係する事柄を包含し表面化させる

「信号待ちで停車していた前車に後続車が追突した事故」が起きた原因を抽出するロジックツリーの事例では、「信号待ちで停車していた前車に追突した」事実に直接的に関係する事柄ですから、「後続車がブレーキをかけたかどうか」は極めて優先度の高い切り口になります。

更に、「ブレーキをかけたとしても、ブレーキをかけた時点で追突が避けられる状況だったのかどうか」も直接的に関連するので切り分けておかなくてはならないでしょう。

「なぜなぜ分析」ユーザーの場合、関連情報が存在しないにもかかわらず、「なぜ?」という問いかけに答えようとして影響を受けるようです。

なぜ追突した?→「前を良く見ていなかった」、なぜ?→「うとうとしていた」、なぜ?→「昨晩、遅くまで起きていて寝不足だった」、なぜ?→「帰宅後に、残業で終わらなかった仕事をしていた」、なぜ?→「資料の提出期限が今朝だった」といった具合に、「追突事故」から離れて、次々と「間接的原因」を持ち出す傾向が見られます。

原因分析に「間接的原因」を持ち出しても、関連する事実情報が存在しない限り、何の役にも立たないとお考えいただきたいと思います。

4)確率の高い事柄に注目する

多くの場合、問題事象を事実に基づいて正しく観察・把握して状況に応じた考察が必要になります。

例えば、「信号待ちで停車していた前車に後続車が追突した事故」が起きた原因を抽出するロジックツリー例では、「ブレーキ操作なし」や「追突直前の運転手に前車の認知遅れ」があれば追突事故の起こる確率が高くなりますので、「ブレーキ操作の有無」や「追突直前の運転手に前車の認知遅れの有無」は重要な切り口になることがわかります。

更に、現場の観察結果により、もし、「路面にブレーキ痕が残っていなかった」といった事実があれば、「ノーブレーキで追突した」確率が高くなりますので、原因は「ブレーキをかけない状態で追突したか、ブレーキをかけたが、実質的に利いていない状態であったか」なども重要な切り口になります。

4.ロジックツリーは「Aと非A」によるMECEな展開で!

ここまでの説明で、目的に合ったロジックツリーを作成することができるはずですが、改めて、確認していただきたい事柄があります。

それは、ゼロベースからロジックツリーを作成する場合において、新たな階層を展開する際に、

  • 目的に適した切り口で、
  • 可能な限り「Aと非A」によるMECEな展開を確認しながら進める

ということです。

再び、「追突事故」の例題に戻って、具体的にご説明しましょう。
例えば、少し考えると、果たして、後続車の運転手は、まず「追突するまで、前車が停車していることに気が付かなかった」のかどうかが気になりますね。

そのような場合には、切り口として導入します。

ここで、一旦、「A=追突するまで、前車が停車していることに気が付かなかった」というツリーを設定しましたので、「非A=追突するまでには、前車が停車していることに気が付いていた」というMECEなツリーを設定して展開します。

今度は、「A=追突するまで、前車が停車していることに気が付かなかった」が起こる確率の高い事柄、例えば「前方をよく見ていなかった」とか「わき見運転をしていた」といったことが、有力な候補になりますね。
そこで、次は

と、第3階層の「C=わき見運転をしていた」というツリーを設定し、同時にMECEに「非C=わき見運転をしていたわけではない」ツリーと展開します。

一方、「非A=追突するまでには、前車が停車していることに気が付いていた」場合でも、追突事故になる確率の高い事柄について考察します。「・・・気が付いていたら、ブレーキをかける」のが普通ですね。しかし、追突したのであれば、何らかの理由で「ブレーキをかけることができなかった」可能性があります。

すると「D=ブレーキをかけることができなかった」と「非D=ブレーキをかけることはできた」でMECEにツリー展開できますね。

今度は、「C=わき見運転をしていた」のは、これだけで十分原因になり得ますが、具体的な可能性のある原因を考えられる範囲で、もう1階層挙げて終わりにします。

例えば、「窓から遠くの景色を眺めていた」とか「スマホ操作しながら画面を見ていた」といった原因を挙げることができるでしょう。

「非C=わき見運転をしていたわけではない」場合にも、追突事故が起きる確率の高い可能性について考察します。すると「居眠りをしていた」、「考えごとをしていた」といった類の原因が登場することになります。

あくまでもロジックツリーの1例ですが、このように最下位層が登場するまでMECEに展開していますので、衝突事故の原因は上記ツリーの下位に必ず存在するはずですね。

「A」側のロジックツリーに関しては、最下位層に具体的な事柄が登場しましたので、展開は終わります。この例題においては、それ以上の観察情報がありませんので、この先の展開は意味がないと考えて宜しいでしょう。なお、通常、最下位層は具体的な事柄を考え付く範囲でしか挙げることができませんのでMECEとは限りません。

5.例題のロジックツリーを完成させよう

では、あなたも、トレーニングを兼ねて、ここまでの説明とロジックツリー例を参考にして、上記「追突事故」の原因を抽出するためのロジックツリー(「非A」側のロジックツリー)を完成させてみましょう。

ヒント:「ブレーキペダルではなくアクセルペダルを踏んだ」原因を抽出しましょう。この例題は実際に起きた追突事故例で、原因は後続車の運転手が「あわててブレーキと間違えてアクセルペダルを踏んだ」ことがわかっています。自動ブレーキ機能を搭載した車両であれば、このような追突事故は避けられたかもしれませんね。

解答例はこのページの最後尾に掲載してあります。

まとめ

  • ロジカルシンキングにおいてロジックツリーを作成するには論理的にMECEな展開でなければならない。しかし、MECEであれば良いというわけではなく、ロジックツリーの作成目的に適したツリー展開でなければ役に立たない。
  • ロジックツリーの作成目的に適した切り口を設定するには、次のような点に注目して目的達成志向的な切り口を設定すると良い。
    • 問題の事象に関わる原理・原則・仕組み・メカニズム・構成・構造等の本質に注目する
    • 問題の事象に直接的に関係する事柄を包含し表面化させる
    • 問題の事象を発生させる確率の高い事柄に注目する
  • ゼロベースからロジックツリーを作成する場合においては、新たな階層を展開する際に、目的に適した切り口で、可能な限り「Aと非A」によるMECEな展開を確認しながら進めると良い。
  • 例題でトレーニングしてみよう。

補足

MECEはロジカルシンキングにおいて大変重要な論理的概念ですので、改めて、その起源について振り返っておきたいと思います。

1963年にハーバード・ビジネス・スクールを卒業後、マッキンゼー社に在籍していたバーバラ・ミント女史が、当時のコンサルタント達のライティング力向上に取り組み、1970年頃のことだそうですが、「論理的に書く」ことに関する指針をまとめた際に、ピラミッド・プリンシプルやMECEの概念を広めたようです。

全体を各部分に分ける場合・・・物質的なものであれ、概念的なものであれ・・・それぞれの部分が以下の条件を満たすように注意しなければなりません。

  • 個々に見て「ダブリ」がなく(Mutually Exclusive)
  • 全体的に見て「モレ」がない(Collectively Exhaustive)

これをMECEと呼びます。
*「考える技術・書く技術(バーバラ・ミント著/グロービス・マネジメント・インスティテュート監修/山崎康司訳)1999年」より引用

バーバラ・ミント女史が論理的な根拠に基づいて、「論理的に書く」ために欠かせないMECEという概念を提起されたことにより、ロジカルシンキングが今日のような活用・普及に繋がっている側面があると考えられます。

マッキンゼーのコンサルタント達は、その後MECEという概念を使い続けてきたわけですが、国内で紹介されたのは、今からおよそ20年ほど前、例えば、「論理思考と発想の技術(後 正武著)1998年」あたりではないかと思われます。

例題解答例

なお、上記のロジックツリーは、以下のようにexcelシートで作成すると、行や列の追加・削減が容易であり、作成作業が非常に楽になりますのでお勧めです。

第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 第5階層 原因の可能性
信号待ちで停車していた前車に追突した 追突するまで前車が停車していることに気が付かなかった わき見運転をしていた 窓から遠くの景色を眺めていた
スマホ操作しながら画面を見ていた
わき見運転をしていたわけではない 居眠りをしながら運転していた
考えごとをしながら運転していた
追突するまでには前車が停車していることに気が付いていた ブレーキをかけることができなかった ブレーキ動作ができなかった 気が動転して、動作が止まった
ブレーキ動作はできた あわててアクセルを踏んでしまった
ブレーキをかけることはできた スピードを出し過ぎていた 停止する前に追突してしまった
スピードを出し過ぎてはいなかった 車両にも原因があった タイヤがすり減っていた
ブレーキの利きが甘くなっていた
車両には原因はなかった 路面が液体で濡れていてスリップした
履物が運転に適していなかった

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