問題解決に役立つロジカルシンキング(論理思考)を基礎から学ぶ。

論理ツリーへの展開

ロジックツリーを作成し「論理展開」によって最上位目的に合った具体的な結論を導く方法について学びます。

本章に対応するビデオ講座のページ→第4章 ロジックツリー展開(ビデオ)

第4章 論理ツリーに展開して活用する

本章では論理思考の基本的な活用方法の2つ目,「論理展開への応用」,すなわち「論理展開」によって最上位命題の目的に合った結論を導く方法について学ぶ.「論理展開」の基本スタイルは,ちょうど,「問題解決プロセス」のところで登場した,第2番目の原因のある問題「発生型の問題」における本質的原因発見の方法に対応している.論理思考の応用分野の半分近くは本章で学ぶ「論理展開」であり,「発生型の問題」における本質的原因の発見にとどまらず,課題形成後のすべての課題を対象として,課題解決策・代替案の抽出,課題の分解,対象物の要素への展開など応用範囲が大変広い.

なお,本章の前半部分では「発生型の問題」の本質的原因の発見に焦点を当てて,現場で生じた問題や経営問題等の改善活動を進めて行く「なぜなぜ分析」という手法における論理的基盤を提供している.第3章では「論理ピラミッドを構築して活用する」と表現したように,どちらかと言えば論理ピラミッドを使って構築物を築き上げるという方向で論理思考を応用した.しかし,今度は「論理ツリーに展開して活用する」と表現しているように,どちらかと言えば塊りを分解し,具体的にはロジックツリー(論理ツリーとも言う)というものを使って論理展開するという方向で論理思考を応用することになる.
ロジックツリーを用いて作成した枠組みをフレームワークとも呼ぶが,ロジックツリーというのは見方を変えると思考の枠組みと見ることも可能である.論理思考の活用においてフレームワークは思考の枠組みという観点から新たな可能性を見出すための創造思考を支援し,新しい考え方の発見を促す役割を担うものであり,非常に重要な分野となっている.本章の後半ではフレームワークの活用に関していくつかの大事なことを学ぶ.

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4.1 ロジックツリーによる論理展開とは

ロジックツリーによる論理展開の目指すところは最上位にある命題が持つ目的を実現するための,目的に適した具体的な事柄を抽出する点にある.従って,ロジックツリーによって論理展開された各ツリーの最先端(最下位層ということになる)に焦点を当てることになる.
ロジックツリーとは形態的に描けば次のようなものだ.例えば,「食べ物を口に入れるやり方」にはどのような方法があるかについて,簡単なロジックツリーを作成すると下のようなものになる.

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図4.1: ロジックツリー「食べ物を口に入れるやり方」の1例

論理ピラミッドの時には,箱どうしをつなぐために矢印のある線が使われたが,ロジックツリーでは,通常,矢印のない線で結合されている.また,本ページでは上記のような箱をツリー状につないで表記した図とは別に,下記のような階層化したリストでロジックツリーを表記し,文中では1つの枠組みであることを識別可能なように記号「>」を頭に付けて記すので,ご承知おきいただきたい.

食べ物を口に入れるやり方
>道具を使わないで口に入れる
>食べ物に口を近づけて直接入れる
>手足を使って口に運ぶ
>道具を使って口に入れる
>容器を傾けて口に入れる
>ハシ,フォーク,スプーンを使って口に運ぶ

本節では,ロジックツリーを用いた論理展開の活用用途やツリー作成上のいくつかの約束事,表記法等の基礎的な事柄について学ぶ.

4.1.1 ロジックツリーの幅広い用途と形式

ロジックツリーによる論理展開は以下のような幅広い用途に活用する.形態的には見た目の違いはないが,意味的には「or 型のツリー」と「and 型のツリー」の形式があり,用途目的によっていずれか一方を使い分ける.例えば,本節の最初の図4.1 のロジックツリー例は,「食べ物を口に入れるやり方」には4つの方法があり,どれも最上位目的を達成する独立した方法となり得るということを示している,つまり「or 型」ツリーの例である.

ロジックツリーの用途
A.本質的問題の絞り込み

  1. 「原因のある問題」の中の「発生型の問題」に対しては,問題の本質的な原因を発見するために,原因と考えられそうな候補(仮説)を洗いざらい挙げて,事実と良く整合する原因を絞り込むというアプローチを行う.
  2. 目的達成志向で,すなわち,本質的原因を表出化させやすい切り口を使って「何故:Why?」という問いかけを繰返しながら原因を分解してロジックツリーを作成する.
  3. その結果,ロジックツリーの形態で展開された原因候補(仮説)が「or 型のツリー」の形式で並ぶ.

B.課題の解決策(複数の代替案)の創出

  1. 「原因のある問題」であれ,「原因のない問題」であれ,すべての問題を課題化した段階では,その課題の解決策を創出するためにロジックツリーを作成する.
  2. この場合の目的達成志向というのは,解決策創出志向であり,最適な解決策を創出しやすい切り口で「どのようにして:How?」という問いかけとともに課題解決策の方向を分解して代替案を創出する.
  3. ただし,正確に言えば,ロジックツリーとして切り出し展開した分岐枝は,具体的な解決策とは限らない.解決策を創出するための枠組みにとどまる場合もある.
  4. ロジックツリーの形態で展開された複数の解決策の枠組みまたは解決策の候補(仮説)が「or 型のツリー」として並ぶ.

C.要素への分解

  1. 例えば,最上位命題として設定された課題を達成しやすいように分解する,あるいは最上位命題を構成する要素に分解するなどの用途にもロジックツリーを活用する.
  2. 要素への分解におけるロジックツリーの特徴は,分解された要素のすべてを合わせると元の最上位命題が構成できるという関係になっているということである.
  3. 私達が日常的に取組んでいる課題=仕事も通常は要素に分解して,分解した要素をすべて実施することにより,仕事を完遂させているのだ.無意識に課題達成志向で論理ツリーを描いているということになる.
  4. 要素への分解においては,ロジックツリーの形態で展開された要素は「and 型のツリー」形式として並ぶことになる.

「or 型のツリー」を「and 型のツリー」と解釈することは可能であるが,「and 型のツリー」を「or 型のツリー」と解釈することはできない.それ故,1つのロジックツリーの中に「or 型」と「and 型」を混在させると間違いや誤解が生じるので注意しなければならない.

4.1.2 ロジックツリー作成には約束事がある

ロジックツリーの表現方法には,特別な決まりというわけではないが,論理展開を考えやすく,理解しやすくするための幾つかの約束事がある.図4.2を見て全体をイメージした方が理解しやすいかも知れない.
最初にMECE(ミッシー)という言葉を紹介しておこう.MECEというのは

MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive(相互にダブリがなく,全体としてモレがない)

という英語の頭文字を並べたもので,日本語で言えば「ダブリもモレもない」という意味である.この言葉は,バーバラ・ミント氏がマッキンゼー社のコンサルタント達のライティング力を強化する仕事にタッチしていた1970年頃に持ち込んだものだ.徐々に実感が湧いてくると思うが,MECEという概念は大変にわかりやすく,論理展開の際に非常に重要かつ便利な概念である.

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図4.2: ロジックツリー作成における約束事

ロジックツリーはできるだけMECEに分解(分割,分類と記述する場合もある)して作成しなければならない.「MECEに分解する」というのは,「ダブリもモレもないので,分解したものだけですべてであり,それら以外にはない」ということを明確に規定していることになるのだ.例えば,本節のはじめの部分で,図4.1に示したように「食べ物を口に入れる」という最上位命題を第2階層ではMECEに「>道具を使わないで口に入れる」・「>道具を使って口に入れる」と2つの命題に分割したが,このように分解する限り,「それら以外の方法はない」と明確に言えるのである.(ついでながら,第3階層はMECEではない.)
ところで,MECEという概念を本節「ロジックツリー作成には約束事がある」のところで,はじめて登場させたが,MECEの考え方が使いこなせるようになると,論理を組立てる力が一段と備わってくるようになるはずである.MECEが良く理解できるようになれば,ずっと遡(さかのぼ)って,「第1章 ロジカル・シンキングの基本を学ぼう」の部分では必要十分な根拠と対応させることが可能になる.また,「第3章 論理ピラミッドを構築して活用する」部分ではMECEな根拠を備えた論理構築として反映させることができるようになるに違いない.

次に,図4.2を見て「次元」という言葉に気がついたと思う.「次元」というのは数学や物理学で言うところの「次元」とは異なり,抽象度・包括度といった意味である.だから,「次元をそろえる」という約束事が記載されているが,必ずしもツリーの個々の箱の中身が,例えばどれも「時間に関する命題」でなくてはならないというようなことではない.例えば上位命題が移動距離に関する命題であるとき,その下位に構成した2つの命題が「時間に関する命題」と「速度に関する命題」であっても,「次元がそろっている」というのだ.次元に関しては後に別のところでも触れる.

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ロジックツリー作成の原則まとめ

  1. 最上位命題は主語と述語を用いて,目的を明確に記述する.
  2. 最上位命題を目的達成志向で次元をそろえてMECEに分解し,最上位命題を構成し得る第2階層命題を作成する.
  3. 各第2階層命題を目的達成志向で次元をそろえてMECEに分解し,各第2階層命題を構成し得る第3階層命題を作成する.
  4. 同様に,必要とする内容の事柄または具体的事柄に到達する(ツリーの作り方にもよるが4~10階層程度)まで,順次下位層命題を作成して行く.
  5. 第2階層以下のすべての命題は,原則として主語と述語を用いて明確に記述する.

なお,たまに「次元をそろえる」というところで誤解される向きがあるので,別の言い方で明記しておくが,図4.2に示しているように「同一ツリー内では次元をそろえ,MECEに分解する」ということである.

もう1つの大事な約束事は「目的達成志向で」分解するということである.「論理ピラミッドの作成」の際にも大事なことであった.単純な比較はできないが,「目的達成志向で」取組む程度は「論理ピラミッドの作成」の場合に比べて「ロジックツリーの作成」の場合の方が,よりその必要性が高い.何故かと言うと,最上位命題の分解の仕方は無数とまでは言えないが,数多くあり,どのような分解の切り口を使うかによって,その先の展開がまるで違ってしまうからである.MECEという概念はある切り口で分解した場合にモレやダブリがないことを保証してくれるが,切り口の良し悪しまでは保証してくれないのだ.つまり,ロジックツリーの作成における分解の切り口には意図を持って「目的を達成しやすい」切り口を使うことが大事なのである.このことは次項で具体的に説明する.

その他,階層の名称や上位階層ほど抽象度・包括度が高く,下位階層ほど具体性・個別性が高くなることなどに関しても論理ピラミッドのところで説明した事柄と同様である.

切り口は目的達成志向で

上位命題を分解する際には「目的達成志向で」実施することが重要だということを述べた.言い換えれば論理ツリーの切り口には上位目的が達成しやすいような切り口を設定すべきだということである.実は「目的達成志向の切り口」というのはその上位命題の目的の本質と,より直接的な関係があるのだ.しかし,口で言うのは簡単だが,いざ実際に上位命題を掲げたときにどのような下位命題を作れば良いのかを考えることは簡単なことではない.本項では,適切な切り口を設定するための感触を掴んでいただくために1つのロジックツリーを取上げて「目的達成志向の切り口」について説明を試みることにしよう.

ある企業で自社製品の国内売上数量が減少してしまったという問題に直面した事業部が,問題を解決しようと考え,「問題の本質的原因は何か」を発見しようとしている状況を想定していただきたい.次の図のような論理ツリーを作成して,「何故,わが社製品の国内売上数量が減少したか」その原因をMECEに考え,第2階層では「>市場が縮小している」・「>市場は縮小していない」と分解した.第2階層はMECEなので原因は少なくともどちらかには含まれるはずである.「>市場は縮小していない」側のツリーにおける,次の第3階層では,販売地域ごとにMECEに「>北海道地区の売上数量が減少した」・「>本州地区の・・・」・「>四国地区の・・・」・「>九州地区の・・・」と分割した.一方,「>市場が縮小している」側の第3階層は製品価格帯で,やはりMECEに「>高価格帯製品の需要が減少している」・「>中価格帯製品の・・・」・「>低価格帯製品の・・・」と分解した.こうすると,問題の原因は合計7つの原因候補のうちの少なくとも1つないしは7つまでの原因の中に必ず含まれることになる.

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図4.3: ロジックツリーにおける目的達成志向の切り口の説明

さて,当然のことながら,事業部では販売地域ごとの売上数量を把握しており,実際,程度の違いはあるものの,4つの地区すべてで売上数量が減少しているのであった.つまり,販売地域を切り口に使った第3階層のどの箱の中にも原因が存在しているということである.このような「原因が分散されるような結果をもたらす」切り口は本質的原因を発見するには適切ではな い,言い換えれば「目的達成志向の切り口ではない」ということになるのだ.もし,第3階層を製品規模によって,MECEに「>大型製品の売上数量が減少した」・「>中型製品の・・・」・「>小型製品の・・・」と分解して確認したところ,「>小型製品の売上数量が減少した」という原因候補だけが各地区の売上数量の減少事実と一致したとすると,その中に本質的原因が存在する可能性が高いということがわかるであろう.原因を発見するにはこのように「原因が収束されるような結果をもたらす」切り口,つまり,一般的な言い方では目的達成志向の切り口が役に立つのだ.
ツリーは切り口を変えると全く違った展開を見せてくれる.目的に合った切り口,原因発見のためのツリーでは原因を絞り込むためにふさわしい切り口を考えることが大事だということがおわかりいただけたと思う.そのことを実現するための必要条件は現物・現場・現実など事実を正しく認識していることであり,事実を掴んでいるからこそ,それが炙(あぶ)り出されてくるような切り口を思いつくことができるのだ.現場や現実を直視することが大事と説いている人は多いが,ただ現場を駆けずり回って自己満足するのではなく,事実の本質を観察・感受し,問題解決につなげることこそが大事なのである.なお,この先も「>市場における小型製品比率の減少か」,「>他社小型製品のシェア増大か」など本質的原因を発見するための更なるロジックツリー展開と原因の絞込みが必要であるが,ここでは触れない.

以上のような説明で「目的達成志向の切り口」に関する感触は掴んでいただけたと思う.考え方は「問題発見ツリー」だけでなく,他のどのような目的にも適用可能なので応用力を発揮して活用いただきたい.「問題発見志向」や「解決策創出志向」というような抽象度でなく,例えば,下位の命題からの展開を想定すれば理解できると思うが,「安価な費用と短い時間でA地点からB地点まで行く」とか,「部品点数のより少ない製品の開発」など対象とする問題によって具体的な内容までを目的にした志向で切り口を考えることも可能である.

MECEな構成と次元とは

本項ではMECEの例とその効用の一端に触れる.MECEという概念は命題に限らず,いかなる対象に対しても適用できる.例えば,「精神力」,「価値」といった抽象的で形のない名辞に対しても,「生物」,「化石燃料」といった形のある物や材料などに対しても適用可能である.既にMECEな分解例はいくつか見てきた.慣れてくるとわかるが,MECEな分解の仕方は幾つもある.次表にMECEの切り口例を挙げた.「ある範囲の内部・外部の分割」,「時間経過または工程・プロセスで分割」,「ある方向とその反対方向に分割」など基本的にMECEとなる切り口はいろいろある.

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表4.1: MECEの切り口例

MECEな切り口を一通り知っておくことは無駄なことではないが,どのような課題に対しても自在にMECEな切り口を設定できるようにしておくことの方が役に立つ.その点で今日のようにしばしばゼロベースで新たな課題に立ち向かわなければならない状況の時代には,特に「A」と「非A」によるMECEな切り口の活用に習熟しておくことを勧めたい.
ベースとなる考え方は「第1章 ロジカル・シンキングの基本を学ぼう」で学んだ排中律脚注4-1)に該当する.「あるもの・こと」と「そうでないもの・こと」の組合せによるMECEな切り口は,必ずしも万能とは言えないが,上位階層での分割において普遍性が高く,「あるもの・こと」の選択が適切であれば,実に切れ味の良い明確で有意義な分割を提供してくれる.

例えば,「需要者が供給者に代金を支払う方法を挙げる」(多少,抽象的な言い方にしているが,要するに「何かを買った人が売った人にお金を支払う場合の方法にはどのような方法があるか」という意味である)という課題を検討してみよう.下記がその課題の実現手段を考えた上位階層(第1~第4階層)部分の論理ツリーの1例である.

需要者が供給者に代金を支払う方法を挙げる
 >供給者の換金行為なしにお金で支払われる
   > 直接的にお金で支払う
     >需要者の支払った現金の現物が供給者に渡る→手渡し現金,現金書留
     >需要者の支払った現金の現物が供給者に渡らない→代引き払い,現金振込
   > 間接的にお金で支払う
     >支払いに預金口座を使う→ ATM振込,クレジットカード,インターネットバンキング,デビットカード
     >支払いに預金口座を使わない→給与引落とし
 >供給者の換金行為によってお金になる方法で支払われる
   >換金率に変動リスクがないもので支払う
     >提供を受ける品物・サービスに特定されない手段で支払う→定額小為替,収入印紙
     >提供を受ける品物・サービスが特定される手段で支払う→図書券,特定商品券
   >換金率に変動リスクがあるもので支払う
     >提供を受ける品物・サービスに特定されない手段で支払う→株券,国債,債権,質権,各種財産権
     >提供を受ける品物・サービスが特定される手段で支払う→金券・チケット類

まだ階層が浅く,具体的手段も一部を挙げたに過ぎないが,代金支払い方法のすべてが包含されているロジックツリーである.アンダーラインをつけた部分はいずれも「A」と「非A」のセットを意味しており,明確に識別可能な切り口となっていることがわかるのではないだろうか.なお,「そのもの,それ以外」というMECEな切り口も「A,非A」に類似で便利な場合が多い.ただし,「A,非A」の切り口や「そのもの,それ以外」という切り口は,無条件で使用しても必ずしも良い結果になるわけではない.このことに関しては次節「フレームワークを活用して思考する」部分で触れる.
MECEな切り口を考える際に,もう1つの役に立つ事柄がある.目的とする事柄が独立変数を使用した数式で表すことが可能な場合には,その独立変数をMECEな分岐先とするロジックツリーを構成することができるのだ.独立変数が足し算,引き算,掛算,除算のいずれに使われていても単なるロジックツリーの分岐枝にして差支えない.例えば,表4.1を参考にして,ある製品の「売上高を増やす」方法について検討するというような場合に

売上高を増やす
> 国内売上高を増やす
> 市場規模を拡大する
> 市場シェアを上げる
> 海外売上高を増やす
> 欧州地域売上高を増やす
> 販売拠点あたりの売上高を増やす
> 販売拠点を増やす
> 北米地域売上高を増やす
> 製品価格を上げる
> 販売数量を増やす
> アジア地域売上高(注:日本を除く)を増やす
> アジア地域への販売対象市場を拡大する
> アジア地域への販売対象市場毎の売上高を増やす
> その他地域売上高を増やす
> その他地域市場規模を拡大する
> その他地域市場シェアを上げる

という具合に分解することも可能である.この例にあるように,主要でないが切り捨てることができない「>その他」という分類を含めて,「A,B,C,その他」というMECEな切り口もしばしば使われる.

数式は四則演算式でなくても構わない.例えば反応速度を表すアレニウスの式

反応の速度定数 k = A exp(-E /RT )
 A :温度に依らない定数(頻度因子)
 E :活性化エネルギー
 R :気体定数
 T :絶対温度(K)

に関連した課題で「反応速度の大きな系を採用したい」という場合,アレニウス式における「乗数である頻度因子A」と「べき指数にある活性化エネルギーE」のような関係であっても,例えば,下記のようにそれぞれを論理ツリーの対等な1つの枝として分岐させて考えれば良い.

 反応速度の大きな系を採用したい
> 頻度因子Aの大きな系を使う
> 活性化エネルギーEの小さな系を使う

このように,論理思考においては上記の2つの例で見たように,ロジックツリーにおける同一ツリー内の事柄どうし,例えば,「市場規模と市場シェア」,「頻度因子と活性化エネルギー」は同一次元(次元がそろっている)と見るのだ.従って,論理思考におけるロジックツリーで言うところの次元は,経済学や物理学における数量単位に該当する次元を指しているわけではないということが理解いただけると思う.次元がそろっている場合で単位が同じというケースもあり得る.

なお,MECEな分割を実施する場合,特殊なケースを除いて多くても通常は5項目程度にとどめることが望ましい.あまり項目が多いとMECEかどうかわからない上に,単なる羅列と同じになってしまうのでは意味のない作業に過ぎないことになる.5項目を超えたならば,良く考えて括り直すべきであり,それを考えることがまた有用な結果をもたらすことにつながるものである.

ツリーの中身を誤解なく伝えられる表現に

前章で学んだ「論理ピラミッドを構築して活用する」においては論理ピラミッド各階層の箱の中身は自ずと命題表現になることが多いが,「ロジックツリー」の作成においては,箱の中身が命題表現になるとは限らない.「命題は主語と述語を用いて,明確に記述する」のが原則であるが,2つの理由で,ツリーの箱の中身は必ずしもその必要がない場合もあるので若干補足しておく脚注4-2)

1つの理由はこうだ.そもそも,ロジックツリーにおいては下位の命題には,それより上位に存在してつながっている最上位命題までの一連の命題が,制約条件ないしは修飾句として覆いかぶさっているのである.先の図4.1の論理ツリーの例でも「>食べ物を口に入れる」の下位に「>手・足を使って口に運ぶ」という命題があるが,「食べ物を」という記述がない.しかし,上位の一連の命題による修飾で,『「食べ物を口に入れる」方法のうちの「>道具を使わないで口に入れる」やり方の1つ「>手・足を使って口に運ぶ」』という意味であることが十分に伝わるのだ.だから,ついでながら最下位命題であっても最終目的が最上位命題にあるということも確認しておいていただきたい.
もう1つの理由は上位命題の分解によって構成される下位層の命題部分に主語または述語を必要としない場合があるということである.「>食べ物を口に入れる」(主語が明記されていない!)もその1例であるが,上位命題が「パソコンの構成部品」のような場合には,分解したツリーの枝先が「>キーボード」,「>ディスプレイ」,「> CPUボード」といった物となるように必然的に箱の中身が「述語なし」になって当然なのだ.

しかし,だからと言って,命題表記すべきところを意味が通じない,あるいはどのように受取って良いかわからない述語のない言葉や「体言止め表記」などで終わらせてしまうのは非常に具合が悪い.「人に誤解なく伝えられる内容で」命題を作成する努力が必要である.上位に置かれた命題の表記にも影響を受けるので一概に不適切とは言えないが,例えば,「投資ファンドによる無制限の投機を制約し,極端な価格変動を防ぐ」という命題に「>ファンドの規制問題」と簡略化したり,「金属が劣化して本来の特性が失われた」といった命題に「>金属特性変化」などと表記されると,「それがどうなの?」,「?」と受取るのが普通だろう.

4.1.3 合理的な前提条件を設定しよう

本章で扱う「論理展開」に限らず,私達が日常的実務において直面する全てのテーマや課題がそうであるが,それら問題解決に取組む場合には最初に必要に応じて「前提条件(定義なども含む)を明確にしておく」ことをお勧めしたい.特に「論理展開」の場合には展開方向の自由度は大変に大きく,考えようによっては際限のない可能性までを包含しているので,どこかで線を 引いておくことが必要になる場合が多い.
例えば,本節のはじめのところで,図4.1ロジックツリー「食べ物を口に入れるやり方」の一例を紹介した.このロジックツリーでは第3階層はMECEではなく,例えば,「>食べ物を口に投げ入れて貰う」といった方法が欠落していることに気がつくであろう.実は「食べ物を口に入れるやり方」という背景・目的の不明確な命題である限り,「>人に食べ物を口まで運んで貰う」というような方法の重要度が不明なのだ.もし,起き上がれない病人を念頭に置いた課題であれば,少なくとも無視することができない1つの方法となるはずである.

そこで,考えなくてはならないことは「前提条件の設定」である.図4.1のロジックツリー課題「食べ物を口に入れるやり方」の検討に際しては,例えば,

 前提条件:
「食べ物を口に入れるやり方」に関して,人や動物の助けを借りないものとする

といった前提条件の合理性を確認した上で,設定して取組むべきだということである.

前項で簡単に紹介した「需要者が供給者に代金を支払う方法を挙げる」という課題においても,例えば,

 前提条件:

  • 1) 人身および人間行為・生物・生活用品・食料品等の提供による支払いを除外する
  • 2) 複数の支払方法の組合せによる支払いは除外する
  • 3) 特に記載しない部分においても,前払い・後払い(ツケを含む);一括払い・分割払いのいずれもあり得るものとする

という具合に設定しておくことが必要であろう.

要するに適切な「前提条件」を設定することによって「課題を明確にすることができる」,「課題関係者間の誤解を防ぐ」,「どうでも良いことに無駄なエネルギーを使わず,課題の核心に集中できる」などのメリットが実感できることになる. 課題を歪めてしまうような不合理な前提条件は論外であるが,適切な前提条件(含:定義)は「課題を明確にし,思考を集中させてくれる」ので大変有用なのだ.
ただ,どのような前提条件を設定すべきかについては,課題に取組む最初の段階で考えられるとは限らない.課題に取組み,ある程度進んだ段階になって初めて,何らかの明確にしておかなくてはならない状況に直面するという場合も多いものだ.そのような状況に直面して適切な前提条件の設定や定義の明確化の必要性に気づく度に,思考水準が向上すると考えて良いだろう.

4.1.4 ロジックツリーはExcel表記が実用的

論理ピラミッドにしてもロジックツリーにしてもどのように表記しなければならないといった決まりはない.このページでは前章で扱った論理ピラミッドについてはピラミッドらしく上に頂点の箱があり,その下に頂点の箱を支える箱が矢印でつなげられ,更にそれらを支える箱が下に置かれという具合に最下段に土台の箱がある構図で表記してきた.しかし,一方で,1~2行の命題を階層化してリストとして並べることによって表記していた場合もあった.

ロジックツリーはここまでの幾つかの図に示したように,左から右へ展開,つまり左側に頂点の箱を配置し,その右に次の第2階層の箱,その右に第3階層の箱という具合に表記する場合が多い.また,前項のところで例示したように論理ピラミッドと同様に階層化してリストとして並べる表記も可能である.しかし,筆者の経験からは,ロジックツリーに関する限り,左から右へ展開して表記することを強くお勧めしたい.その理由は,以下に述べるように,ひとことで言えば実用的だからである.
ロジックツリーを作成して論理展開した際に各ツリーの各最下位命題に相当する箱の中身は,頂点にある命題の具体的な本質原因であったり,具体的な解決策であったりするわけである.それらは,例えば,定量的な事実との突合せをするとか,解決策を選択するための評価・検証を実施するなど大なり小なりのコメント対象になるものである.したがって,ロジックツリーの最下位に置かれた箱の更に先に,それらのコメントを記載する空間がどうしても必要になるのである.その場合,ロジックツリーを上から下へ展開する方法と左から右へ展開する方法の2通りが考えられるが,ビジネスの世界では文を横書きにして記述するのが普通なので,実用上は左から右へ展開する方法に絞られることになる.

以上のようなわけで,最下位の箱に対応して少なくとも1行分のスペースを確保するように図4.4のようなイメージのロジックツリーを描くことを想定していただきたい.なお,この図のツリーは紙面の都合で4階層までしか示されていない.

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図4.4: ロジックツリーの表記イメージ例

こうすると,表計算ソフトを使って,例えば,Excelシートでロジックツリーを表として描けば,表4.2の如く

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表4.2: ロジックツリーのExcel表記例

容易にロジックツリーの展開表記が可能で,しかも実用的であることがわかる.ツリーというのは検討している途中で分岐あるいは階層を増やしたり,減らしたりすることが普通だ.その場合にも容易に対応できる.更に,欠くことができない表の右側の備考や評価・検証等コメント記入欄(筆者は評価スペースと呼んでいる)も自動的に確保できる.

4.1.5 ロジックツリー作成には2つのアプローチ

前章の論理ピラミッドによる論理構築のところで,アプローチの仕方には基本的にトップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチがあることを学んだ.実は,ロジックツリーによる論理展開においても基本的にトップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチがある.以下に基本としてのボトムアップ・アプローチとトップダウン・アプローチについて,この順に説明するが,実際に新たにロジックツリーを作成する多くの場合にはボトムアップ的に進めるところとトップダウン的に進めるところをミックスさせて作成することになるので,予めご承知おきいただきたい.

ボトムアップ・アプローチ

具体的な事柄や事象が存在している状況で,それらを整理するための新たなロジックツリーを作成しなければならないような場合には必然的にボトムアップ・アプローチとなる.それではボトムアップ・アプローチによってロジックツリーを作成してみよう.例えば,次のような10種類の身近な日用品

鉛筆,金づち,スコップ,ネジまわし,じょうろ,のり,定規,熊手,ノコギリ,ノート

について,これらを適当に整理してみよう.少し眺めればすぐに同じ仲間同士に気づくに違いない.例えば,

 用途による分類
> 文房具  -鉛筆,のり,定規,ノート
> 園芸用具 -スコップ,じょうろ,熊手
> 工具   -金づち,ネジまわし,ノコギリ

という具合に分類して整理することができる.これで図4.5にあるような「用途による分類」の「文房具,園芸用具,工具」というロジックツリーをボトムアップ・アプローチにより作成したことになる.

ここまでの過程を振り返っていただくと,10種類の日用品全体を視野に入れ,同じ視点で異なるものどうしの間に共通するものを見出す脚注4-3)ということを実施したと考えることができる.例えば,「鉛筆,のり,定規,ノート」の4つはどれも「文房具」という共通性があり,「スコップ,じょうろ,熊手」の3つはどれも「園芸用具」という共通性があるなどと捉えたのである.こうした共通性のことを同次元の上位概念とも呼ぶが,要するに10種類の日用品は3つの同次元の上位概念で整理することができたということなのだ.

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図4.5: ロジックツリー作成例-その1

上記の例では直感的に捉えても容易に考えられる分類例であることがわかるだろうが,他の分類方法もある.例えば,「>金属を含むもの」と「>金属を含まないもの」だとか「>赤ちゃんが手に持って遊んでも危険ではないもの」と「>赤ちゃんが手に持って遊んだら危険なもの」など,見方を変えて分類すれば幾つもの分類方法がある.

たとえば,上に挙げた10種の日用品は,ちょうど「ひらがな」,「カタカナ」,「漢字」のいずれかを使って,または組合せて書かれたものであることに注目すれば図4.6のように文字種で分類する方法も考えられる.

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図4.6: ロジックツリー作成例-その2

文字種が複合的に混じって書かれたものを同列に並べるのは,同じ階層に同一次元のものを配置するという原則に反するので改良すると図4.7のようになるであろう.このロジックツリーにおいては「のり,じょうろ」の上位概念は「ひらがな」であり,「ひらがな」,「カタカナ」,「漢字」の上位概念は「1文字種」という具合になっていること,および上位に行くほどツリーの枠組みの抽象度が高くなっていることなどが理解できる.

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図4.7: ロジックツリー作成例-その3

いかなるロジックツリーも目的に適したものでない限り,価値を持たないが,例えば図4.7のようなロジックツリーは小学校低学年生が文字を習う際には役に立つに違いない.

ところで,読者の皆さんは図4.7のロジックツリーにおける第2階層の「>1文字種」・「>2文字種」という分類,第3階層の「>ひらがな」・「>カタカナ」・「>漢字」および「>漢字・ひらがな」・「>カタカナ・ひらがな」という分類を見て,これらの分類がMECEかどうかに関して関心を持たれたであろうか.このロジックツリーは特定の10種の日用品に付けられている名称を文字種によって分類したものであるので,どの分類にも属さない日用品などを包含しているわけではないということに気づいているはずである.例えば,「>漢字・カタカナ」という分類がないので,「蛍光ランプ」といった日用品の置かれる場所が存在しないことになる.更には,例えば「手提げバッグ」などは「>3文字種」で構成されているのでやはり収まる場所がない.

このようにボトムアップ・アプローチによって作成されたロジックツリーでは,ボトムに存在する事柄に基づいてツリーが構成される関係上,ボトムに存在しない事柄に関しては枠組みを落としてしまう可能性があるという点に注意する必要がある.もちろん,特定の10種の日用品を文字種によって分類した図4.7のロジックツリーは決して間違いではない.このロジックツリーを他の日用品にまで視野を広げて考えようとする場合にはモレが生じる可能性があるということを認識しておかなくてはならないということである.

トップダウン・アプローチ

今度はトップダウン・アプローチによってロジックツリーを作成してみよう.ビジネスで用いるロジックツリー(通常,ビジネス・フレームワークと呼ぶ)など既存のロジックツリー(フレームワーク)を前提にしてトップダウン的な検討を進めるという場合は,検討する事柄の全体像が既にロジックツリーとして描かれているので,自ずとトップダウン・アプローチとなり,既存の枠組みに対してその中身を検討するところから始めることが可能である.しかし,私達が日常的に取組まなければならないさまざまな問題解決においては,多くの場合,問題解決に役立つロジックツリーをその都度ゼロベースから作成して使用することが普通である.従って,私達はいつでも必要に応じて目的に適したロジックツリーを作成できるようにしておくことが大事なのである.ここではそのような場合のアプローチの仕方について,簡単な例を挙げて説明しておくことにしよう.

それでは,トップダウン・アプローチにより,「文房具」をわかりやすく分類するロジックツリーを作成してみよう.
ごく普通に考えて,文房具と言えば,「文字を書いたり,絵を描いたりする道具」,つまり広く言えば「書く・描くことに関係する文房具」はその中心的な存在なので,まず大きく,「>書く・描くことに関係する文房具」・「>書く・描くことに関係しない文房具」という2つの分類を設定してみよう.

 文房具を分類する
> 書く・描くことに関係する文房具
> 書く・描くことに関係しない文房具

このような分類の仕方をする限り,今,第2階層として設定した2つの分類以外には他の枠組みが存在しないこと,および2つの分類は互いに重なることがないこと,言い換えれば,これらはMECEな分類であり,従ってすべての「文房具」はこれらいずれかの分類に含まれるということを納得することができるであろう.他にも直感的な分類として「>書く・描く文房具」・「>それ以外の文房具」という分類の仕方や「>小学校で使う文房具」・「>小学校では使わない文房具」といった分類方法も容易に考えられる.
それにしても「>書く・描くことに関係する文房具」・「>書く・描くことに関係しない文房具」という第2階層の分類だけではあまりにも大雑把であるので,もう少し進めると,「>書く・描くことに関係する文房具」であっても「鉛筆」のような「>書く道具」と「ノート」のような何らかの情報が「>書かれる側の紙媒体など」とは別区分と考えることができる.しかし,「>書く道具」・「>書かれる側の紙媒体など」という「>書く・描くことに直接的に関係する文房具」以外にも,例えば「硯(すずり)」や「筆箱」,「定規」など「>書く道具」・「>書かれる側の紙媒体など」には該当しないが「>書く・描くことに間接的に関係する文房具」がある.
そこで,一方の分類の方に関して更に深く分類すると,例えば,

文房具を分類する
 >書く・描くことに関係する文房具
   > 直接的に関係する文房具
     >書く・描く文房具-鉛筆など
     >書かれる・描かれる文房具-ノートなど
   > 間接的に関係する文房具
     >書く・描く道具に付属する文房具-硯(すずり),筆箱など
     >書く・描く道具に付属しない文房具-定規など

といった分類にすることができそうである.ここで,新たに追加された分類「>直接的に関係する文房具」・「>間接的に関係する文房具」や「>書く・描く文房具」・「>書かれる・描かれる文房具」のような分割はいずれもMECEな分割を構成している.他方,もう1つの分類「>書く・描くことに関係しない文房具」の中にも,例えば,「のり」など「接着剤」に該当する文房具もあれば,「はさみ」のように「切る道具」のような文房具があるので,それらも視野に入れて「文房具」の全体をわかりやすく分類したロジックツリーにして表記すれば,次のようになるだろう.
ここで,注意すべき点は,下段側の「>書く・描くことに関係しない文房具」の第3階層を「>切る・削る文房具」・「>接着する文房具」の2つの枠組みを設定する際に,「切る・削る文房具」と「接着する文房具」とは重なることがないかどうかという点である.「切る・削る文房具」であり,かつ「接着する文房具」であるという「文房具」が存在しないということが確認できれば大丈夫である.更に,2つに分割したままではMECEにならないので,それらに含まれない「電卓」などを包含する「>その他」という枠組みを加えて,漏れることがないように構成されていることにも注目していただきたい.なお,「文房具」という用語はどの枠組みにも共通であり,無くても意味は十分に伝わるので省略してある.

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図4.8: ロジックツリー作成例-その4


また,図4.8のロジックツリーはある程度の完成度を持ってはいるが,不完全なものであるということも理解しておいていただきたい.それは,分類事例に挙げられていないような範疇の,例えば,「インク」,「紙筒」といった「文房具」をどこに置いたら良いのかを考えるとわかると思う.しかし,すべての分類はMECEに構成されているので,それらが収まる場所は必ず存在するということも理解できるであろう.

以上のようにトップダウン・アプローチによってもロジックツリーを作成することが可能であることがおわかりいただけたと思う.トップダウン・アプローチの際に注意すべき点は,分割はいつもMECEとなるように心がけ,分割された枠組みどうしにダブリが生じていないことおよびモレがないことを確認することである.
なお,敢えて言及する必要はないと思うが,トップダウン・アプローチにおける個々の下位命題の抽出は上位概念と暗黙の前提の使用による演繹法推論による脚注4-4)

4.1.6 ロジックツリーによる論理展開の実際は

ここまでロジックツリーによる論理展開に関する基本的な事柄を学んできた.次節からロジックツリーを作成する例題にも取組むことになる.実務においてもいろいろな場面で活用していただかなくてはならないが,いざ,自分でロジックツリーを作成してみるとなかなか思うように進められない状況に陥るかもしれない.本項ではそのような状況を想定して,参考になる事柄を補足しておく.

必ずしも一律でない,切り口の重要度

目的達成志向の切り口に関しては,今までくどくどと説明した.今後も必要に応じて説明するが,目的達成志向の切り口の重要度はテーマによっても異なるので,必要以上に拘らないように願いたい.ごく常識的に考えた切り口を使ってロジックツリーを作成すれば,それが結果的に適切な切り口となっている場合も少なからずあるということも知っておいた方が良いだろう.はじめは感触が掴めないかもしれないが,数をこなして行くうちに要領が掴めてくるに違いない.

最下位層はMECE とは限らない

どこかで「出来る限りMECEな切り口を使う」ということをお伝えした.分割の仕方は,例えば,「A」と「非A」を用いれば必ずMECEな切り口になるが,最下位層においては「非A」というのは具体的な事柄ではないので,最下位層に関する限り,具体的な事柄に関しては必ずMECEに構成できるという保証はない.しかし,「A」・「非A」に限らず,上位でどのような切り口を使ってロジックツリーを作成しても,最下位層の具体的な事柄である中身は,結局のところ,自分や関係者が持っている知識,あるいは収集した情報・想起したアイディアの範囲を超えた事柄を抽出することはできない.時には枠組みの形成だけにとどまるが,それは仕方がないと割り切るしかないということだ.

最下位層の展開の先では評価・検証が要る

ロジックツリーによる論理展開を実施して,具体的な事柄,例えば何らかの課題の解決策候補(仮説)などに相当する事柄を展開・抽出したとする.それらは当然最終的に「これだ!」と決定される前に一般的には評価され,検証されるべきものである.
しかし,実際に評価・検証を実施してみると疑問が生ずる場合がある.典型的なケースは,最下位層命題間の相互関係への影響に関することである.わかりにくいので少し戻って図4.4のロジックツリー例を見ながら説明することにしよう.

例えば,「利益を変えず自社製品の価格を下げる」具体的方策として,「>部品の材料変更」という項目が挙げられている.この場合,部品の材料を変更して,材料原価を下げられたとしても,その材料の加工が難しければ,部品加工費が上がってトータルでは原価上昇になってしまうといったことが起こり得るわけである.ロジックツリーはあくまでも各ツリーどうしが独立変数として展開されているのだ.あるいは「>宣伝費を減らす」解決策が挙げられているが,その結果,価格は下げられたが,製品が売れなくなってしまうという可能性もある.
このような問題に対処する方法は,考え方としては2通りある.1つは具体策を抽出するところで次のようなツリーを作成するのである.

 部品の材料変更
>他への悪影響を及ぼす可能性がない変更
>他への悪影響を及ぼす可能性がある変更

そして,「>部品の材料変更」で「>他への悪影響を及ぼす可能性がない変更」の方について検討するという考え方である.論理的には,確かにこれで良いが,もう1つの方法として,やはり,評価・検証にかけるという方法が実際的であろう.評価段階で,実現可能性,定量化,品質を低下させないかなど他への影響度合い等を含めて評価すれば良い.あるいは実測等の検証によって,耐久性に問題が生じないなど具体的な確認を実施するのである.

4.2 ロジックツリーを活用してみよう

ロジックツリーを作成するための約束事やアプローチの方法について学んだところで,用途ごとに実際にロジックツリーを作成して「論理展開」の感触を掴んで行くことにしよう.これから登場するロジックツリー作成の例題テーマはそれほど難しくはないが,どれも1日くらいの時間をかけて納得レベルの論理展開をする覚悟で取組んでいただきたい.

4.2.1 発生型問題へ適用する

最初に代表的な「発生型の問題」の原因を絞り込む際のロジックツリーによる論理展開の事例に取組んでみよう.次の例題は原因を絞り込む際に対象となる系が単純であり,体系的に順序良く検討すれば確実にMECEな論理ツリーが完成する比較的平易な課題である.記載されていない領域まで必要以上に踏み込んで原因を書き出すことまでは求めていない.

例題4-1 次の図のような紙搬送機構がある.何らかの原因により,搬送機構が動かなくなってしまった.原因を探るための適切な論理ツリーを作成せよ.

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図4.9: 例題4-1の紙搬送機構

論理ツリー展開の切り口は,例えば,機械(メカ)系・電気(エレキ・ソフト)系のような技術要素分野機能による方法と搬送機構の動作の流れに沿って,シーケンシャルに切って行く方法などが考えやすいだろう.後者は紙搬送機構の動作を正しく理解し,「何故,搬送機構が動かないか」をMECEに切り分け,順に論理展開して行けばモレなく原因発見の可能なロジックツリーを作成することができる.上流から下流へ展開して行く方法と下流から上流へ展開して行く方法という2つのアプローチの仕方が考えられるが,直感的には,「フィードローラーが回転しない」などの現象を追って行く下流から展開して行く方向がアプローチし易いだろう.無論,上流側から進めても構わない.
ロジックツリーの作成段階には,例えば,次のように論理的な言葉で上位命題と下位命題の繋がりを確認しながら,原因を特定して行くように心がけると進めやすいだろう.

搬送すべき状態で、搬送機能が働かない
>送出モーター/ピックアップローラーは回転している(にもかかわらず↑である原因は→)
>送出モーター/ピックアップローラーが回転しない(その原因は→)
 >送出モーターに所定の電力は供給されている(にもかかわらず↑である原因は→)
 >送出モーターに所定の電力が供給されていない(その原因は→)
  >送出モーターへの電力供給電源が所定の電流・電圧を出力している(にもかかわらず↑である原因は→)
  >送出モーターへの電力供給電源が所定の電流・電圧を出力していない(その原因は→)
   >送出モーター制御回路はモーター電源にON信号を出力している(にもかかわらず↑である原因は→)
   >送出モーター制御回路はモーター電源にON信号を出力していない(その原因は→)
    >紙搬送指示信号が送出モーター制御回路に入力している(にもかかわらず↑である原因は→)
    >紙搬送指示信号が送出モーター制御回路に入力していない(その原因は→)

解答例は,意図的に上記とは肯定文と否定文を逆にして表記しているが,いろいろな表記法が可能なので,確認しながら試してみると良い.
論理展開して行くと,確認すべき下記のような事柄に気づくが,ここではそれらは前提条件として設定されている.

  •  紙搬送指示信号は正常に発信されているのか
  •  紙は集積されており,ピックアップローラーが回転すれば送出されるのか
  •  紙が送出され,フィードローラーが回転すれば紙は搬送されるのか

解答例

412

図4.10: 例題4-1解答例:原因発見のためのロジックツリー例

図4.10のロジックツリーは,下流から上流という方向で作成されたもので,原因の切り出しをMECEに展開していることがわかるように記載されているが,もっと圧縮して描くことも可能である.例えば第3階層にある「搬送モーターが回転しない」以下のロジックツリーの一部であれば図4.11で示したように描いても良い.ただし,いきなり圧縮形を展開する場合にはMECEであることを確認・理解するために慣れと十分な注意が必要である.なお,後述するが,論理ツリーの最下位層は具体的な作業がわかるように記述しておかなければ使い物にならないので注意しよう.

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図4.11: ロジックツリーの圧縮例

ところで,この例題に関連して参考までに3点ほどコメントしておこう.

まず,第1点は例題4-1の原因を探るためのロジックツリー図4.10が完成すると,その先はどうなるかに関することである.最下位層の直ぐ上位にある事実確認項目をチェックして事実と一致することを確認すると,最下位層に記述した原因を発見することになる.
例題4-1のロジックツリーは他にもいろいろな形態があり得るが,典型的な上流から下流に展開して,原因を「原因領域」欄を設けたExcelシート形式で表記した例を載せておくので参考にしていただきたい.

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表4.3: 例題4-1 のExcel表記したロジックツリー例

第2点はロジックツリーの切り口に関することである.機械系・電気系という切り口も決して悪くはないが,機能要素のつながりやモレなく機能要素を抽出するという観点ではツリー展開の順序に必然性がないので,モレ等の危険がある.特に「モーター」や「ソレノイド」等の要素は電気系要素であると同時に,力を出す力学的機能を備えているので機械系要素としての分類も可能である.例えば「モーターが動作しない」原因にも電力が供給されていない,内部コイルが断線している可能性もあれば,力学的な負荷が大きすぎて作動しない可能性もあるということだ.

第3点はロジックツリーの原因判定部分を「モーター制御回路は正常である,正常でない」あるいは「モーター制御回路が異常である,異常ではない」のような表記だけで順に展開したのでは,単に各要素の「正常,異常」を順に並べて行くことと変わらない.実用可能な原因分析ツリーを作成するためには各機能要素の「正常、異常」が実務的に切り分けられるという条件を満たすことが望まれる.例えば,「制御モーターは回転している,回転していない」であれば,実務的に切り分け可能であるが,「制御モーターは設計通りに機能している,機能していない」といった表記では「論理的に正しい」が実務的には使えない.
しかし,例題の設定では「故障の具体的内容」までを明確化できる情報がないので,「モーターが作動しない」ような故障モード,例えば「モーターコイルが断線している」とか「回転子が焼き付いている」など可能性のあるすべての事例の抽出までは求めていない.「・・・など」で十分である.

なお,誤解のないように補足しておくが,実際の原因分析作業に関しては,必ずしもロジックツリーの展開順序に従って作業を進める必要はない.五感を働かせ,音を聞く,ランプ・LEDの点灯状況やローラーの回転を見る,臭いを嗅ぐ,触って振動・熱を感じる等の感覚により,各要素をチェックして早期に原因を発見する機会もあるのだ.時には,「この搬送装置は搬送ベルトがはずれやすい」といった経験も役に立つ.テスターや計測器を用いて各要素を確認するとしても,本事例のように信号や動作の伝達に順序があるケースでは,対象の系全体の中間的な位置にある要素に着目し,一旦「これより上流側に原因があるか,下流側に原因があるか」を切り分け,次に原因がある側の系の中間的な位置にある要素に着目し,再び「上流側,下流側」を切り分けるといった方法を繰返すことによって,少ない確認回数で原因を特定することもできる.

4.2.2 問題の本質的原因を絞り込む

「発生型の問題」の本質的原因を検討しているロジックツリーの簡単な例は既に前節の「切り口は目的達成志向で」のところでも,前小節の例題でも登場した.問題の本質的な原因を発見するために,状況に応じて原因と考えられそうな候補を洗いざらい挙げて,事実と良く整合する原因を絞り込むのだ.本小節では,「目的達成志向の切り口」についての感触を掴んでいただくために次の例題に取組む.課題はわかりやすいので読者の皆さんも読み進む前に最初にお考えいただきたい.

例題4-2 ある日の早朝の出社時に,会社の駐車場で,ある自家用車の後部バンパー中央部が大きく凹んでいることを発見した.前日夕方の退社時に見たときには確かに凹んでいなかった.
この情報の範囲でロジックツリーを用いて,その自家用車が凹んだ原因となり得る状況をすべて抽出し,そのうち,その自家用車の運転者の過失によると考えられる原因を絞り込みなさい.

自家用車の持ち主に聞けばわかる話である.あるいは最近のカーナビゲーション装置や撮像装置を搭載した自家用車であれば,相当に原因を絞り込めるであろう.
しかし,限られた情報の範囲で,読者の皆さんはどのような切り口を使ったら良いかをお考えいただきたい.すべての可能性を視野に入れるためにはMECEな論理展開が欠かせないが,そもそも自家用車は会社の駐車場から一旦動いたのかどうかもわからないのである.
例えば,次のようなMECEな切り口を思いついたかもしれない.

> 自家用車の後部バンパーは前日に凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは当日に凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは駐車場で凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは道路上で凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは走行しているときに凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは停止しているときに凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは運転者の過失により凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは運転者の過失によらず凹んだ

上記の他にもMECEな分割の仕方が考えられるが,一体どのような切り口を使用したら良いのだろうか.ここで,切り口はMECEという条件だけでなく,目的達成志向的でなければならなかったことを思い出そう.この例題の場合の目的達成志向の切り口というのは,本質的原因発見志向,具体的には「自家用車の後部バンパー中央部が大きく凹んだ原因を発見しやすい切り口」,更に「運転者の過失として考えられる原因を発見しやすい切り口」ということである.

少し深く考えればおわかりいただけると思うが,「後部バンパー中央部が大きく凹んだ」という事実をしっかりと認識することが大事なのである.そのような状況が発生する確率は「自家用車が前進走行しているときに後方から追突を受ける」場合と「自家用車が後進中に何かに衝突する」場合がともに高いということに気づくのではないだろうか.もちろん,それら以外の可能性も考えられるので視野に入れておかなければならない.
すると,目的達成志向の切り口としては

> 自家用車が前進走行しているときに後方から追突を受けた
> 自家用車が後進中に何かに衝突した

といったツリーがいずれ切出せるような,しかもすべての可能性を包含するMECEな切り口であることが望ましいということになる.
従って,上記の一連のツリーの中では,目的のロジックツリーの第2階層に相当する最初のツリーは

> 自家用車の後部バンパーは走行しているときに凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは停止しているときに凹んだ

のようなものが,適しており,

> 自家用車の後部バンパーは走行しているときに凹んだ
> 自家用車が前進しているときに凹んだ
> 後方から車の追突を受けた
> 車以外の物体が衝突した
> 自家用車が後進しているときに凹んだ
> 動いている物体に衝突した
> 動いていない物体に衝突した
> 自家用車の後部バンパーは停止しているときに凹んだ

といったツリーがMECEで目的達成志向的であるということになる.
ここまでの説明で,例えば,第2階層のツリーが下記のようなもの

> 自家用車の後部バンパーは前日に凹んだ
> 自家用車の後部バンパーは当日に凹んだ
> 自宅駐車場で凹んだ
> 通勤途上で凹んだ
> 会社駐車場で凹んだ
> 自己責任事故により凹んだ
> 非自己責任事故により凹んだ

は推奨できないが,例えば,第2,第3階層が下記のようなもの

> 運転手が乗っているときに凹んだ
> 前進中に凹んだ
> 後退中に凹んだ
> 停車中に凹んだ
> 運転手が乗っていないときに凹んだ
> 走行中に凹んだ
> 停車中に凹んだ
> 車が物体に衝突して凹んだ
> 自家用車の運転者の運転中に凹んだ
> 自家用車の運転者の運転中以外に凹んだ
> 物体が車に衝突して凹んだ
> 自家用車の運転者の運転中に凹んだ
> 自家用車の運転者の運転中以外に凹んだ

は発生確率が高い原因状況をより直接的に切出すことが可能であり,推奨できるということがおわかりいただけるだろう.
また,前出の「>自家用車の後部バンパーは運転者の過失により凹んだ」といった切り口は,一見,直接的で目的達成志向の切り口のように思われるが,そうではない.本質は原因と運転者の過失状況を切り出す点にあり,運転者の過失かどうかはそれらの状況を判断することによって決定されるという関係にあるのだ.

この辺で,次の解答例をじっくりとご覧いただきたい.最上位命題を第1階層として8階層から成るロジックツリーは膨大で多少長いと感じるだろうが,MECEであることがわかり,かつ可能な範囲で具体的な状況まで記述するにはこの程度まで展開する必要がある.

スマホでご覧の方は、これから幾つかの大きな表が登場しますが、横にすると全幅がご覧いただけると思います。

解答例
前提条件:

  • 1) 自家用車運転者とは自家用車の移動に関与した者とし,自家用車の持ち主とは限らないものとする.
  • 2) 個別記載項目の2つ以上の複合原因によるものは除外する.
  • 3) 車とは車輪のついた乗り物すべてを意味する.
  • 4) 車以外の物体とは車輪のついた乗り物以外の人、動物を含むすべての物体を意味する.
  • 5) 故意か、故意でないかは過失判断に影響しないものとする.

    :自家用車運転者に過失がある原因
    :自家用車運転者にも過失がある原因

第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 第5階層 第6階層 第7階層 第8階層 運転者の過失可能性
自家用車の後部バンパー中央部が大きく凹んでいる 運転者が乗車中に凹んだ 運転者が走行運転中に凹んだ 前進中に凹んだ 車に追突されて凹んだ 急ブレーキをかけた 急ブレーキをかける合理的理由があった 運転者に不注意はなかった
運転者に不注意があった
急ブレーキをかける合理的理由がなかった
急ブレーキをかけていない 暗闇で後尾灯を点灯していなかった
暗闇では後尾灯を点灯していた 運転者は迷惑運転をしていた(騒音・ジグザグ・非路上走行、進路妨害等)
運転者は迷惑運転はしていなかった
車以外の物体が衝突してきて凹んだ 運転者は迷惑運転をしていた 騒音・ジグザグ・非路上走行等
運転者は迷惑運転はしていなかった
後進中に凹んだ 動いている物体に衝突した 車に衝突して凹んだ 相手の車が接近中だった 運転者は迷惑運転をしていた(騒音・ジグザグ・非路上走行、進路妨害等)
運転者は迷惑運転はしていなかった
相手の車が離反中だった
車以外の移動物体に衝突して凹んだ 運転者は迷惑運転をしていた 騒音・ジグザグ・非路上走行等
運転者は迷惑運転はしていなかった
動いていない物体に衝突した
運転者が走行運転していないときに凹んだ 車に衝突されて凹んだ 走行車線上で 警察官指示、信号、交通渋滞、障害物等の合理的理由がある停車中に
合理的理由がない停車中に 非常警告灯または停止表示板で認知させていなかった
非常警告灯または停止表示板で認知させていた
走行車線以外のところで 駐停車禁止場所で
駐停車許可場所で 停車が迷惑状態となっていた 騒音・排気ガス等
停車が迷惑状態ではなかった
車以外の物体が衝突してきて凹んだ 駐停車禁止場所で 人・動物起因で
自然現象による
駐停車許可場所で 停車が迷惑状態となっていた 騒音・排気ガス等
停車が迷惑状態ではなかった
運転者が乗車していないときに凹んだ 第3者が車を衝突場所に移動した(盗難、レッカー車などによって第3者が車の駐車場所への移動に関与した) 運転者は凹みの形成に関与していない 車に衝突されて凹んだ 走行車線上で 非常警告灯または停止表示板で認知させていなかった
非常警告灯または停止表示板で認知させていた
走行車線以外のところで 駐車禁止場所で
駐車許可場所で
車以外の物体が衝突してきて凹んだ 駐車禁止場所で
駐車許可場所で
運転者が凹みの形成に関与している 運転者が凹ませた
第3者は車を衝突場所に移動していない(第3者が車の駐車場所への移動に関与していない) 運転者は凹みの形成に関与していない 車に衝突されて凹んだ 走行車線上で 非常警告灯または停止表示板で認知させていなかった
非常警告灯または停止表示板で認知させていた
走行車線以外のところで 駐車禁止場所で
駐車許可場所で 駐車が迷惑状態となっていた(騒音・排気ガス等)
駐車が迷惑状態ではなかった
車以外の物体が衝突してきて凹んだ 駐車禁止場所で 人・動物起因で
自然現象による
駐車許可場所で 駐車が迷惑状態となっていた(騒音・排気ガス等)
駐車が迷惑状態ではなかった ブレーキが利いていなかったために衝突した
ブレーキは利いていた
運転者が凹みの形成に関与している 運転者が凹ませた

このようにして,次々と(例:信号無視,居眠り運転,飲酒運転,整備不良など)際限がないほど自家用車運転者の過失原因となりそうな状況を切り出せることがおわかりいただけると思う.ただし,言うまでもないことだが,確率の低い事柄や根拠のない間接的な原因を際限なく書き出すようなことは無意味である.

なお,この例題と解答例から見てもわかるように,元の情報がもっと豊富であれば不要な論理展開をせずに済むはずである.例えば,「通勤途中に追突された」ということが判明しているだけで,ロジックツリーのボリュームは大よそ1/5以下になるであろう.ボリュームが少なくて済むだけではない,状況に即した適切なロジックツリーを作成する,つまり,核心部分を切り出すことがより容易になるということなのだ.
現場や現物から収集する事実情報の重要性を再認識しておくべきである.

4.2.3 課題解決策を創出する

問題解決においては,いかなる問題であれ,課題化まで進めることができたならば,その先は「論理展開」によって課題解決策を創出して行くことになる.つまり,課題の解決策立案プロセスの最初は解決策を創出するための「枠組みの設定とアイディア出し」,具体的にはロジックツリーによる論理展開を行い,解決策の入るべき枠組みを作成し,更にその中身を抽出ないしは考案するのである.第1章の「4.2節 解決アイディアを出して絞り込む(解決策立案プロセス)」部分をもう1度参照していただきたい.
時には枠組みの作成にとどまる場合もあるが,適切な課題解決策が創出できるかどうかは,いかに適切な枠組みが設定できるか,いかに上位概念である枠組みからアイディアを発想,あるいは情報収集することができるかによる.

では,課題解決への活用例として,わかりやすい題材を使った例題でロジックツリーによる論理展開に取組んでみよう.読者の皆さんも1日くらい時間をかけてゼロからロジックツリーを考え,展開していただきたい.

枠組みを使って課題解決アイディアを抽出する

まず,わかりやすい技術課題に取組んでみよう.

例題4-3 鉄板の切断方法について,どのような方法があるか検討するためのロジックツリーを作成せよ.

「厚さ何mmの鉄板を±~mmの精度で」といった条件が設定されていない課題であり,あらゆる切断方法の可能性を幅広く検討する必要がある.具体的な「鉄板の切断方法」を調査し,それらを並べてみるとどのような上位概念を考えて分類すべきかが見えて来るはずである.金属ノコギリのようなもので切断するとか,薄い鉄板であればシャーリング・マシンでスパッと切断できるし,レーザー加工機で鉄板を部分的に溶かして切断することも可能であることなどがわかる.

多少熱心に調査すれば,ボトムに挙げられる具体的な「鉄板の切断方法」として

シャーリング,金属ノコギリ,レーザー切断機,サンドブラスト切断,酸素ガス溶断,カッターナイフ等の刃物,回転砥石(グラインダー),高圧水ジェット切断,フライス盤加工,火薬・爆薬,プラズマ切断機,放電加工機,イオン・電子ビーム切断機,エッチング加工機

あたりが抽出できるであろう.通常はこの程度の情報収集の後に,異なる具体的な事柄どうしに共通するものを見出して,それを上位概念としてグルーピングするというステップを何度か実施して階層的なロジックツリーの形態を作成する.その際に,可能な限り視野を広げ,かつMECEな分類となるように注意を払おう.

例えば,一旦次のようなグルーピングを実施して

>機械力学的に切断する→シャーリング,金属ノコギリ,サンドブラスト切断,
カッターナイフ等の刃物,回転砥石(グラインダー),フライス盤加工
>圧力的に切断する→高圧水ジェット切断,火薬・爆薬
>溶解・熔解して切断する→レーザー切断機,酸素ガス溶断,プラズマ切断機,
放電加工機,イオン・電子ビーム切断機,エッチング加工機

更に,上位および下位のグルーピングを実施して階層化しても良いだろう.ここで,ロジックツリーとして完成するまで,そのような検討を進めて行く際には,個々の具体的な「切断方法」に関する原理についての理解が欠かせないことに気がつくのではないだろうか.個々の具体的な「切断方法」について深く理解すれば,適切な上位概念形成(グルーピング)が可能になるということである.上位概念をMECEに配置しながら,ある程度ツリーができると,今度は作成されたツリーの枠組みに収まる新たな具体的方法が想起されるようになるだろう.

この先は解答例を参照いただくということにして,上位の階層にどのような分類が適切であるかに関して少しばかり触れておこう.
切断原理から少し離れてロジックツリーの第2階層に

>道具を使用して切断する
>道具を使用しないで切断する

という分類を設定したらどうだろうか.

確かにMECEだが,相手が鉄板なので「>道具を使用しないで切断する」という分類側にはあまり多くの切断方法が登場してくるはずがないと,まずは考えられるのではないだろうか.つまり「>道具を使用しないで切断する」側の分類はMECEであることを確認するための単なる形式的な分類になってしまう可能性がある.最初に具体的な切断方法を挙げずにトップダウン・アプローチだけで分類を考えてしまうとこのような結果に陥る場合が多い.また,上記分類には分類枠組み定義の曖昧さも存在する.「道具を使用しない=素手で」という定義で良いか,それとも「道具を使用しない=切断のための形のある物体を使用しない」と考えるのかなどと迷う可能性もある.更に,前者の定義の場合には,薄い鉄板ならば素手で切断できるが厚い鉄板では同類の切断方法でも押さえ器具を使用して切断することがないのか,後者の定義の場合には,例えば鉄板を溶解させる強酸性の液体を用いて道具を使用しないで長い時間をかけて切断するような方法と,加熱した強酸性の液体を用いて道具を使用して噴射させながら切断するような方法との分類上の分離に意味があるのかといった問題に直面することになる.

従って,少なくとも分類定義を明確にし,明確な分類の下位で用いるなら良さそうだが上位の分類においては適切ではないと考えた方が良い.
そういう意味では,下記分類

>人力で切断する
>人力以外の力で切断する

なども同様に「ノコギリで切断する」のようなものはいずれの分類にも登場してくる可能性があるので,普遍性の乏しい,曖昧な分類ということになるであろう.

>物理的方法で切断する
>化学的方法で切断する
>生物的方法で切断する
>物理的な方法で切断する
>化学的な方法で切断する
>上記の組合せ方法で切断する

というような分類例が挙げられる.
しかし,もっと明確で切れの良い分類方法は,例えば,切断される「鉄板」に焦点を当てた

>切断に際して相状態を変えない
>切断に際して相状態を変える

といった分類だと思われる.
解答例をご覧いただきたい.もちろん,この解答例とは異なるロジックツリーであっても一向に差し支えないが,中身との対応に違和感がなく収まりが良い分類というのは必然的に形成されるツリーとも言え,直感とも対応する傾向があるのでわかり易いものだ.

解答例
前提条件:

  • 1) 切断可能な板厚・切断精度・切断にかかる時間等に関係なく可能性のある切断方法のすべてを対象とする
  • 2) 2つ以上の切断方法の組合せは除外する

なお,下記ツリーの最下位命題部分に記した●印は分離切断を,無印は除去切断を意味する.(分離・除去切断については後で触れる)
-鉄板の切断方法-

>相状態を変えずに切断する
 >機械力学的に切断する
  >機械的に刃物で切断する
   >刃物で切削する→旋盤加工,フライス盤加工,ドリル加工(穴連結)
   >●刃物で切断(せん断)する→シャーリング,プレス型(打ち抜き),鋏
   >刃物で鋸引きする→鋸盤,金属ノコギリ,コンターマシン等
   >●刃物で引き切りする→カッターナイフ等の刃物
  >機械的に刃物以外で切断する
   >硬い物質で破壊する→回転砥石(グラインダー),ヤスリ,ダイアモンドカッター等
   >●破断する(紙のように)→破断機
   >●繰返し折って切断する→折り曲げ機
 >圧力的に切断する
  >爆破エネルギーで破断する
   >●爆破により破断する→火薬・爆薬
  >物質の運動エネルギーで切断する
   >液体ジェット流で切断する→高圧水ジェット切断,アブレッシブジェット切断
   >固体衝突で切断する→サンドブラスト切断
>相状態を変えて切断する
 >熱的に液化・気化して切断する
  >機械的熱エネルギーで溶断する
   >機械摩擦熱で→?
   >振動熱で→超音波加熱融解
  >化学反応熱エネルギーで溶断する
   >酸素との反応熱で→酸素ガス溶断
   >物質燃焼熱で→ガス燃焼溶断機
  >電気的熱エネルギーで溶断する
   >アークで溶かして→アーク切断機
   >プラズマで溶かして→プラズマ切断機
   >プラズマで気化させて→超高温プラズマ加熱
   >放電加工で→放電加工機
  >電磁的熱エネルギーで溶断する
   >レーザー光で→レーザー切断機
   >イオン・電子ビームで→イオン・電子ビーム切断機
   >スパッタリングで→イオンビームスパッタリング装置
 >化学的に溶解させて切断する
  >化学溶解で
   >ウェットエッチングで→エッチング加工機
   >ドライエッチングで→ドライエッチング装置
  >電気化学分解で切断する
   >電解研磨で→電解研磨装置

ところで,この課題を検討された読者の皆さんはその過程で「切断するとはどういうことか」と考える機会があったのではないかと思う.技術課題の多くの場合には「本質はどういうことか」を考えた上で,ロジックツリーを作成するとレベルの高いものが作成され,従って,新しい技術の創出の可能性が開かれるものである.
固体の「切断」というのを原子レベルで捉えると,2つの部分に切断するというのは,元の固体をつなげている原子を除去するか,原子どうしの結合を引き離すかということであり,図4.12のように「除去切断」または「分離切断」の2通りになる.

414

図4.12: 切断の本質

すると,ロジックツリーは,例えば第2階層を

鉄板の切断方法
>切断部の一部分を除去する
>切断部の一部分を除去しない

として展開できることになる.しかし,実は上記分類でそのまま実際のロジックツリーを構成すると,現実としては「>切断部の一部分を除去する」分類に含まれる切断方法が圧倒的に多いので,ロジックツリーを作成する上では必ずしもそれほど素晴らしい結果になるというわけではないが,原理的なところを認識しておくことは「切断」方法を検討する上で大変役に立つ.
例えば,目的によっては除去切断の範疇で「(走査しながら高速の重イオンを衝突させて)鉄の原子を1個ずつ除去する方法」,「(スリット状に中性子線を照射して)結合の弱い原子に核変換させ除去する方法」などが発想できるだろう.

なお,この課題では「鉄板の切断方法」としてどのようなものを選択すべきかに関しては要求していないが,そのことに言及するには,各切断方法を評価する必要がある.そのような場合にも評価の観点をツリー化して枠組みを作成し,ロジックツリーの右側の評価スペースに切断方法と評価の観点のマトリクス表という形態で完成させることができる.

評価の観点としては,例えば

鉄板の切断方法に関する評価の観点
 >対象寸法範囲
   >対象板厚範囲
   >対象板面寸法範囲
 >切断性能
   >寸法精度
   >切断面精度
   >切断速度
   >切断面仕上がり
 >切断操作性
   >安全性
   >熟練性要求度
   >準備容易性
   >操作容易性
   >再現容易性
 >切断コスト
   >設備コスト
   >稼動コスト
   >作業コスト
   >保守コスト
 >その他
   >適用材料汎用性
   >設備設置製
   >環境影響度

といった枠組みが考えられる.

新規用途の可能性について検討する

一般的な技術や物など,特定または非特定の題材に対してどのような用途があるかを幅広く検討する課題である.本項では例題の解説を通じて,適切な分類の切り口を設定する際のポイントを捉えていただくことを狙っている.多くのスペースを割くので自分でもExcelシートを使って解答作成に取組み,十分に吟味しながら読み進んでいただきたい.

例題4-4 用済みの新聞紙の再利用(新たな用途)について,どのような可能性があるか検討したい.その目的にあったロジックツリーを作成せよ.

この課題にはどのように取組んだら良いだろうか.最も普通のやり方は,まず,実際に新聞紙の再利用方法を具体的に挙げてみること(ボトムアップ・アプローチ)である.「用済み新聞紙の再利用」ということであり,題材はそれほど特定化されていないので幅広い用途が考えられる.

例えば,

メモ紙,しおり,紙飛行機,ハナ紙,焚(た)き付け,グランドシート代わり,テーブルカバー,タンス引出しの底敷き,凧の足,カーテン代わり,紙ふぶき

という再利用方法が挙げられたとしよう.

これらの再利用法を眺めて,何らかの共通する事柄を見出すと,例えば,新聞紙を「切らないで利用する」利用法と「切って利用する」利用法という共通点に気づくのではないだろうか.しかし,同時に「焚(た)き付け」という「切らないで利用する」か「切って利用する」かはどうでも良い,異質の利用法があることにも気がつくはずだ.このようなときに,深く考えるチャンスが訪れる.「焚(た)き付け」を含めて明確に分類できる切り口を考えるのである.「焚き付け」に利用すると利用後は「新聞紙」ではなくなっているが,他の利用法ではそのようなことはないという点に気づけば,適切な切り口が想起できるであろう.
そこで,まず,例えば,

>新聞紙を新聞紙のままで再利用する
 >新聞紙を切断しないで再利用する→グランドシート代わり,テーブルカバー,タンス引出しの底敷き,カーテン代わり
 >新聞紙を切断して再利用する→メモ紙,しおり,紙飛行機,ハナ紙,凧の足,紙ふぶき
>新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する→焚き付け

という具合に分類して整理することができる.今度は同じ枠組みの内部について更に深く眺めてみるのである.「>新聞紙を切断しないで再利用する」・「>新聞紙を切断して再利用する」いずれの利用法にも「>新聞紙を広げた状態で再利用する」ものと「>新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する」ものがあるということに気づくのではないだろうか.一方,「>新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する」利用法には「焚き付け」以外には考えられないだろうか.常識的にも「再生紙」,「紙粘土」などが考えられるであろう.
そこで,例えば,次のように展開してみよう.

>新聞紙を新聞紙のままで再利用する
 >新聞紙を切断しないで再利用する
  >新聞紙を広げた状態で再利用する→グランドシート代わり,テーブルカバー,カーテン代わり
  >新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する→タンス引出しの底敷き
 >新聞紙を切断して再利用する
  >新聞紙を広げた状態で再利用する→メモ紙,しおり,ハナ紙,凧の足,紙ふぶき
  >新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する→紙飛行機
>新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する→焚き付け

もしかすると,この辺で新聞紙を円筒状に巻いて「チャンバラ棒」や新聞紙をクシャクシャに丸めて「ボール代わり」にして子供の頃に遊んだことを思い出すかもしれない.これらもどこかに収まるはずである.そこで,やはり,この矛盾を解決する思考を働かせる必要が生じてくる.「>新聞紙のシート状の形状を変えないで利用する」・「>新聞紙のシート状の形状を変えて利用する」といった上位概念を設定すると「チャンバラ棒」や「ボール代わり」を後者の方に置くことができる.
と,このような思考とロジックツリーの展開を繰返して完成させて行くことになる.ここまでの説明で,もしかすると「焚き付け」という再利用法を最初に思いつかなかったらどうなるのかといった疑問が生じるかもしれないが,心配には及ばない.多くの場合に,最初に具体的な事柄を考え,次にそれらの上位概念を考え,再び具体的な事柄を考えるという進め方をして行くと途中で新たなアイディアや可能性が見出され,ロジックツリーの切り口や表記に矛盾が生じてくるので見直しの必要性に気づくことになる.そのような矛盾に突き当たり,その矛盾を解決するときに思考が深まると同時にロジックツリーの水準が向上するのである.従って,例えば,ロジックツリーの上位階層は初めから適切な分類表記が考えられるわけではなく,何度か見直して表記を適切化する,更に上位階層を設定するなどの作業が欠かせないものとご理解いただきたい.

MECEなツリーを構成してしっかりと論理展開するには8~10階層ほど必要であると思うが,上位階層を設定する際の基本的な考え方は参考になるのでここでは解答例を紹介する前に上位階層(特に第2階層)の設定のポイントについて学んでおこう.
読者の皆さんは最上位命題「用済みの新聞紙の再利用方法」に対して,第2階層に相当する最初のツリーをどのように構成しただろうか.この先に読み進む前に,少なくとも自分の頭で考えて本課題のロジックツリーを作成してみていただきたい.特に最上位命題直下の第2階層をどのように構成したら良いか,是非「これでどうだ!」という自分の案を考えて記述しておいていただきたい.

ついでながら,他の人はこの例題に対してどのように考えるかに関しては読者の皆さんも興味があるのではないだろうか.参考までに,筆者が新入社員から部課長クラスまでの技術者を対象とした数社の企業内研修において,受講者合計46人に課した宿題解答に記載されて提出されたロジックツリーの第2階層(中には第2階層だけでは意味がわからない場合には第3階層まで)を以下にランダムに並べてみたのでご覧いただきたい.作成された第2階層に対して筆者からコメントを差し上げながら,どのような上位階層を構成したら良いのかを掴めるようにしたい.

> 1 枚を細分化しないで使う
> 1 枚を細分化して使う
> 1 枚毎にばらさない
>本来の用途として使用
>本来の用途以外で使用
>新聞紙そのものを再利用する
>新聞紙のインクを再利用する
>新聞紙そのものを再利用する
>新聞紙のインクを再利用する
>新聞紙の繊維質(パルプ)を再利用する
>裁断して利用する
>裁断しないで利用する
>破壊的利用
>非破壊的利用
>コンテンツを再利用
>コンテンツは不要
>手を加えずそのままで再利用する
>手を加えてから再利用する
>防虫のため
>防虫のためではない
>他の物と交換する
>他の物と交換しない
>情報源として利用する
>道具として利用する
>資源材料として利用する
>それ以外の利用方法
>リユース(再利用化)
>リサイクル(再資源化)
>新聞紙の有効活用(利便性)
>資源として活用(資源性)
>情報を利用する
>情報を利用しない
>再利用できる
  >新聞紙をそのまま利用する
  >新聞紙を別のものに作り変え利用する
>再利用できない
>リサイクル(再生)する
>リサイクル(再生)しない
>紙を利用する
>内容を利用する
>屋内利用
>屋外利用
>家庭外で利用
>家庭内で利用
>そのままのカタチで利用
>カタチを変えて利用
>素材をそのまま使う
>素材を加工する
>溶解加工無し
>溶解加工あり
>記事読む
>読むこと以外
>新聞紙のまま利用
>新聞紙の紙質を利用
>加工しない
>加工する
>エネルギーとして利用する
>エネルギーとして利用しない
>道具を使用しない
>道具を使用する
>そのまま加工(原料に戻さない)
>原料に戻す(分解)
>素材として利用
>情報として利用<
>元の素材のまま利用する
>加工を加えてから利用する
>加工する
>加工しない
>吸わせる(吸水性を利用)
>吸わせない(吸水性を利用しない)
>自分で再利用する
  >燃やす
  >燃やさない
>自分で再利用しない
  >資源ごみに出す
  >資源ごみに出さない
>主に家の中で利用する
>主に家の外で利用する
>紙の性質を利用する
>新聞紙特有の性質を利用する
>新聞紙を情報ツールとして見る
>新聞紙を紙として見る
>再利用する
  >燃やす
  >燃やさない
>再利用しない
>加工する
>加工しない
>新聞紙を切断せずにそのまま使用する
>新聞紙を切断して使用する
>再生利用(リサイクル)
>再使用(リユース)
>燃える機能を用いる
>燃える機能を用いない
>自分で使用する
  >実用的である
  >実用的でない(遊びに使用)
>自分で使用しない
>形状を変えないで使う
>形状を変えて使う
>そのまま使う
>形状を変えて使う
>そのまま使う
>再加工する
>情報
>紙
>その他

いろいろな例があって興味深いと思うが,読者の皆さんはどうお考えになったであろうか.どれが正解などということはないが,ある程度の大まかな良し悪しについては言及できる.
分類表記には微妙な点もあり,必ずしも体系的に重複なく説明できるわけではないが,少なくとも上位階層における分類について言える幾つかのポイントとなることを記しておく.

1)上位階層には適度に抽象度・包括度の高い切り口を設定しよう.

抽象度・包括度の違いに注目しながら類似の分類例を比較してみよう.例えば,「>新聞紙を加工して使う」・「>新聞紙を加工しないで使う」といったオーソドックスな分割を取り出してみると,次のような第2階層

> 1 枚を細分化しないで使う
> 1 枚を細分化して使う
>溶解加工無し
>溶解加工あり

では,「細分化」や「溶解」といった具体的な「加工方法」を限定しているが,次のような第2階層

>手を加えずそのままで再利用する
>手を加えてから再利用する
>元の素材のまま利用する
>加工を加えてから利用する

においては,具体的な「加工方法」を限定していないことがわかる.良く考えると気がつくと思うが,「加工方法」には「細分化」,「溶解」だけでなくいろいろ幅広い方法があるので,第2階層には後者の方が明らかに包括度が高く適している.上位階層には適度に抽象度・包括度が高い切り口を使用することが望ましい.

2)上位階層ほど明確さが求められ,本質を考えることが役に立つ.

次のような比較的オーソドックスな同種の分類における「適切性」ないしは「明確さ」という観点で眺めてみよう.

>新聞紙をそのまま利用する
>新聞紙を別のものに作り変え利用する
>素材をそのまま使う
>素材を加工する
>紙を加工する
>紙をそのままの状態で利用する
>そのままのカタチで利用
>カタチを変えて利用

ここで,いずれ下位に登場するはずの,どちらに含まれるかわかりにくい利用例,例えば,「溶かして使う」,「燃やして使う」という利用法について考えてみる.

「>素材をそのまま使う」・「>素材を加工する」の分類は比較的明確であるものの,「溶かして使う」のは後者に含まれるだろうが,「燃やして使う」のはどちらに該当するのだろうか.「>紙を加工する」・「>紙をそのままの状態で利用する」の分類に関しても同じような疑問が生じるに違いない.

一方,「>新聞紙をそのまま利用する」・「>新聞紙を別のものに作り変え利用する」あるいは「>そのままのカタチで利用」・「>カタチを変えて利用」という分類では「溶かして使う」,「燃やして使う」の両方とも分類の後者に含まれるはずだと比較的容易に考えることができる.上記分類にある,「加工する」という言葉は実は案外不明確なものなのだ.具体的な利用法として,「切って使う」,「折って使う」などという場合には常識的に「加工する」という分類範疇に含めると思われる.では,「溶かして使う」,「燃やして使う」という場合には,それぞれ「加工する」・「加工しない」のどちらに含めるのが良いのだろうか.
「燃やして使う」は「加工しない」に入れたくなるが,「加工しない」で利用すれば利用後もまた利用できるはずである.ところが,利用後に再利用するときには新聞紙は燃えてなくなってしまっているわけで,再利用はできないのだ.かといって「加工する」分類範疇に「燃やして使う」を含めるのは違和感があるに違いない.しかし,どちらかの分類には必ず含まれるのであるから矛盾してしまう.

このようなとき「燃やして使う」本質を考えてみれば,結論が出てくる.「新聞紙を燃やして利用する」のは「新聞紙を燃やす」ことによって発生する熱・光・炎・煙を利用するわけである.科学的な言い方をすれば,「新聞紙を熱によって促進された酸化反応により,主として水と炭酸ガスに変化させ,その際に生ずる熱・光・炎・煙または僅かに残った灰を利用する」ということである.いわば「加工」して(そのままではなく作り変えて)利用しているのである.
つまり,「燃やして使う」は「加工する」分類範疇に入ると考えられるが,分類表現がマッチしていないのだ.「>カタチを変えて利用」(新聞紙を別のものに変えて利用する)だったらフィットするのではないだろうか.

従って,結論的に,「溶かして使う」,「燃やして使う」を視野に入れて分類を考えるなら,

 >新聞紙をそのまま利用する
 >新聞紙を別のものに作り変え利用する

 >そのままのカタチで利用
 >カタチを変えて利用←「溶かして使う」,「燃やして使う」を含む

が優れているということになる.
あるいは先の分類「>紙を加工する」・「>紙をそのままの状態で利用する」を考えた解答者は更に次のような分類

 >紙を加工する
  >加工した後も新聞紙である
  >加工した後は新聞紙でない←「溶かして使う」,「燃やして使う」を含む
 >紙をそのままの状態で利用する

を設定し,明確に「溶かして使う」,「燃やして使う」分類を識別して包含するように分類表記していた.分類の明確さの必要性が認識でき,深く考えている証拠とも言える例である.
このように,「燃やして使う」本質を考えたことが役に立っているわけであり,本質を考えることは明確な分類を考える場合のポイントになるということである.一見どうでも良いことのように思い勝ちであるが,分類の上位階層ほど明確さが求められるということも合わせてご理解いただきたい.

3)上位階層には,広い視野で実用的な範囲の分類を設定しよう.

下記の例は,「新聞紙」というものをそれを構成する材料(物や情報)から捉え,構成材料に焦点を当てて分類している.類似の分類例について比較してみよう.

>紙を利用する
>内容を利用する

このような分類方法があっても結構であり,良い分類方法であるが,「用済み新聞紙」が対象だから,適切に前提条件を設定すれば「内容(新聞情報としてのコンテンツ)の利用」を除外できるので,あまり役には立たないだろう.

>情報
>紙
>その他

この場合でも「>その他」が置かれているので良さそうだが,適切な分類は必須であり,例えば,上記の2つの例では少なくとも「文字が印刷された新聞紙」(インク油のついた紙の利用,切抜き文字紙片の利用)を落とすことになる.例えば,下記であれば,MECEとなる

 >素材として利用←「インク油のついた紙の利用」,「切抜き文字紙片の利用」などを含む
 >情報として利用

「新聞紙」を「素材」として見れば,単なる「紙」ではないことに気がつくはずでである.下記のような分割も対象を広い視野でしっかりとMECEに捉えており悪くないだろう.

>新聞紙そのものを再利用する
>新聞紙のインクを再利用する
>新聞紙の繊維質(パルプ)を再利用する

上位にはできるだけ視野を広くして,実用的な範囲で抽象度を高く考えた分類を設定することも大事である.

4)間接的な関連性による分類を避けよう.

下記分類例は第2階層という上位階層で分類困難な切り口を使用しており,具体的な利用例を挙げて分類しようとすると,明確な線が引けない分類だということがわかる例である.

>屋内利用
>屋外利用
>主に家の中で利用する
>主に家の外で利用する

例えば,新聞紙を「敷物」として利用することを考えてみても,「屋内」,「屋外」のいずれでも利用する.どちらで利用するのだと言われても,無理な話で,実際,作成されていたロジックツリーには両方に登場していた.「紙飛行機」を作って遊ぶにしても両方で利用するだろう.初めから大きな曖昧さを持った分類を上位に置くのは敢えて考えにくくしていることになるのだ.
もちろん,これでMECEなのだが,実質的なMECEではなく,表面的なMECEになっている.「屋内で遊ぶ紙飛行機を作る」,「屋外で遊ぶ紙飛行機を作る」という具合に決して重なることはない.しかし,それではナンセンスな話だということである.
少なくとも「新聞紙」に対して間接的な関わりに過ぎない「屋内」・「屋外」といった「利用場所による分類」は本質的に分類する切り口ではなさそうだと感じていただきたいところである.
類似の分類例としては,下記も同様である.

>家庭外で利用
>家庭内で利用

「利用分野による分類」というところだろうか.完全に利用場所で分類しているというわけでもなさそうで,「工業(業務)用途」・「家庭(民生)用途」という雰囲気も感じるが,やはり,明確な線が引けない分類である.「利用場所による分類」の他にも「用途または用途分野による分類」の場合も同様に切り口が明確にできない典型例である.
一般に「使用場所による分類」や「用途による分類」は非特定の一般対象(この例では「新聞紙」全般)に対して間接的な切り口となる傾向があり,曖昧さが避けがたいので上位階層で使用するには十分な検討が必要である.上位階層において不明確になりやすい間接的な関連性で分類するのは,できる限り避けることが望ましい.(「間接的な関連性」というのは「新聞紙」と「屋内・屋外」との関連や「家庭外・家庭内」との関連が,「切る」,「折る」などの事柄のような直接的関連性ではないということを指している.)
一方,下位の階層で特定化された対象に対しては「使用場所による分類」や「用途による分類」などが意味を持つようになるということも合わせて認識しておいていただくと良いだろう.下位の階層において,または相当程度に特定化された,例えば,「細長い短冊状に切り刻んだ新聞紙」に対しては,「工業用途」というのは間接的であるが,対象が特定化されているために,「パッキング材・クッション材として梱包に利用する」といった用途が,さほど無理なく抽出可能であろう.

5)本質的でない分類を避ける.

上位の分類というのは結構大事な分類なので,心血を注いで考える必要がある.下記の3つの分類例はどれもMECEであるが,無意味な分類であり,いずれも本質的ではない.

>自分で再利用する
>自分で再利用しない

下段側の分類は,「自分で再利用しようが,しまいが」課題は「再利用方法」の抽出を要求しているので不要な分類である.

>自分で使用する
>自分で使用しない

課題は,たとえ「>自分で使用しない」場合に「古紙回収に出す」としても,その先の「再利用にどのような利用法があるか考えて」と要求しているのである.つまり,「>自分で使用する」か「>自分で使用しない」かはどうでも良いことで,「新聞紙の再利用方法」としては本質的ではないということだ.
本質的でない分類と言える例が,もう1点ある.

>他の物と交換する
>他の物と交換しない

MECEであってもこのような分類が必要だったかどうかに関しては再考の余地がある.「ちり紙交換」あたりを想定して,「>他の物と交換する」という分類を設定されたのだろうが,世の中では必ずしも「ちり紙交換」とは限らない.単に「資源ごみ」として回収されるケースもある.「>他の物と交換する」か「>他の物と交換しない」かはどうでも良いことで,その先の再利用用途という課題の本質に注目した必然的な分類を要求されているのである.少なくとも上位階層では本質的な切り口を設定しよう.

6)必然性の高い分類を設定しよう.

本来,「必然性の高い分類」というのは,「上位命題の持つ本質的な内容や性格から,必然的に設定される分類」という意味合いであるが,このポイントについての説明は難しいので,以下の説明で多少とも感触を掴んでいただければ幸いである.下記は「新聞紙」の特性に着目し,それぞれの特性に応じた利用法を抽出するという考え方で分類を考えた例である.(あるいは一部は「新聞紙に対して何らかの操作を加える」分類である.)

>吸わせる(吸水性を利用)
>吸わせない(吸水性を利用しない)
>燃やす
>燃やさない
>燃える機能を用いる
>燃える機能を用いない

対象物の機能や特性による分類は,本来,直接的で明確であり悪くはないが,特性というのは際限がないほど考えられるので,特性を適切に分類するのは難しく,多くの場合苦しめられる傾向がある.上記例は一方の分類の抽象度が低すぎて偏りが大きく,特に「>吸わせる(吸水性を利用)」・「>吸わせない(吸水性を利用しない)」という分類は第2階層に登場する必然性がない.思いつきや当てずっぽうの分類でなく,上位階層においては重要さなど必然性のある分類切り口を設定することが望ましい.
ただし,この「用済み新聞紙の再利用法」という課題の場合,「>燃やす」・「>燃やさない」という分類は,「>燃やす」利用法が再利用法の中でも異質であると捉え,最初に異質のものを除外して考えるという発想もあるので一概に必然性がないとは言えない.必然性の高い分類切り口というのは,「特性による分類例」の場合,抽象度の低い特殊な性質でなく,「>新聞紙がシート状の形態であるという特性を利用する」,「>新聞紙がシート状の形態であるということ以外の特性を利用する」といった,利用用途を分類した際に大別が可能な抽象度の高い切り口となるものである.
しかし,同じ「特性による分類」であっても,下記のような視点の高い分類は優れている反面,別の問題が生じることになる.

>紙の性質を利用する
>新聞紙特有の性質を利用する

例えば,「>紙の性質を利用する」分類の具体的利用例として,トイレットペーパーは紙であるが,その「水で容易にくずれる性質」を利用すると,課題「用済み新聞紙の再利用法」の要求を超えることになる.また,新聞紙も紙であり,どのような性質が「>紙の性質」であって,「>新聞紙特有の性質」ではないのか,あるいはその逆を識別するのは困難な場合もある.
なお,対象物である「用済み新聞紙」の機能や特性を並べてみると,「重さがある」,「体積がある」,「面積がある」,「厚さがある」,「吸水性がある」,「可燃性である」,「断熱性がある」,「気体を通しにくい」,「非導電性である」,「防音性がある」,「広げて叩くと音がする」,「光を遮る」,「容易に切断できる」,「薄い」,「丸めることができる」,「折りたたむことができる」,「食べても毒ではない」,・・・と際限がないほど挙げることができそうだということに気づくであろう.

7)分類切り口は自分の頭で考えて設定しよう.

下記は世の中でしばしば使われている省資源「3R(Reduce/Reuse/Recycle)の考え方」のうちの「Reuse/Recycle」を持ってきて分類したものと思われるが,残念ながら失敗である.

>リユース(再利用化)
>リサイクル(再資源化)
>再生利用(リサイクル)
>再使用(リユース)

課題では「用済み新聞紙の再利用」について幅広く考えていただくことを狙いとしているが,「燃料として燃やして利用する」ような利用法は,通常,「3Rの考え方」における「>再生利用(リサイクル)」・「>再使用(リユース)」のいずれの範疇にも含まれない.「再使用(リユース)」とはそのまま再び使用することを指している場合が多く,従ってMECEな分類ではないので適切な分類表現とは言えないだろう.
世間で使うポピュラーな言葉の転用では用語がマッチしなかったり,あるいは案外間違って使われていたりするので,分類の枠組みはゼロベースから自分の頭で考えて記述すべきであると言える例である.

8)上位階層にはMECEで明確な分類を設定しよう.

下記は抽象度も適度に高く,決してダメな分類ではないが,MECEと明確さという点で考え直したい分類例である.

>新聞紙の有効活用(利便性)
>資源として活用(資源性)

「>新聞紙の有効活用(利便性)」と「>資源として活用(資源性)」がダブることがなくしかもモレがない(これ以外にない)という分割になっているだろうか.「利便性」と「資源性」は同時に兼ね備えている場合,つまり,矛盾しない場合がある.例えば,「新聞紙という資源を有効に利用する」という再利用法はどちらに入るだろうか.
分類に困る例を挙げてみよう.
『学校で粘度細工の授業があるので紙粘度を持って登校しなければならない小学生の親が,それではと用済みの「新聞紙の有効活用」により,子供に「(紙粘土の原料)資源として活用」し,紙粘土を作らせて持たせた.』というように,上記の分類はきっと一部にダブリが生じるだろうと考えられる.他にも,どちらに該当するかに関して明確でないもの(「新聞紙をクシャクシャに丸めてパッキング材に用いる」場合など)の存在も想定される.
上位の階層にはMECEで明確な分類を設定するように考えることが大事だ.

9)「特定とそれ以外」という分類には「特定」側の抽象度に注意を払おう.

下記は基本的には「A」・「非A」であるが,「用途が具体的で明確なもの」と「それ以外」のセットで構成された分類を置いた例である.

>防虫のため
>防虫のためではない

きっと,誰もが,何故「防虫」のような用途が第2階層に登場してくるのか首を傾げたくなるに違いない.一方の「用途が具体的で明確なもの」はわかりやすいのであるが,上位分類に登場する必然性がないのでどうしても底の浅いものになってしまい,大半の再利用法が「それ以外」の方に押し込められてしまうという傾向が見られる.このようなスタイルでロジックツリーを展開して行くと,何の脈絡もなく「それ以外」側のツリーが拡大して行くが,あたかも問題を先送りしているような形態のツリーが出来上がる 脚注4-5)
「用途が具体的で明確なもの」の分類が新聞紙の再利用に関して,重要な切り口を提供してくれる(その後の展開に多数の可能性や重要な用途が登場するなど)のであれば,大いに結構だが,そうではない場合は避けたいところである.もちろん,ダメということではないが,「目的に合った切り口で」といった目的達成志向とは距離がある.

以上のように,たかが第2階層あたりの分類に関してもなかなか難しいもので,上位階層に限定して幾つかのポイントを説明したが,この辺でとどめておきたい.もっと下位の階層の充実化を含め,最終的には最下位の具体的な事柄こそが重要なのだが,長くなるので別の例題で解説する.
下記に第5階層までの分類枠組みを示している解答例を載せた.9階層まで作成し,具体的な利用法を記述した表形式の解答例も載せてあるので,じっくりとご覧いただきたい.

前提条件:

  • 1) 新聞に記載されている情報の本来的利用(「切り抜き」を含む記事・解説・データ等の活用)は用済みとし,再利用に含めないものとする
  • 2) 上記に加え,「直接廃棄する」以外の,再加工を含む如何なる利用も再利用とする
  • 3) 2つ以上の利用方法の組合せは除外する

用済み新聞紙の再利用方法
 >新聞紙を単独で再利用する
   >新聞紙を新聞紙のままで再利用する
     >シート状の形状を変えないで
       >新聞紙を切断しないで再利用する
       >新聞紙を切断して再利用する
     >シート状の形状を変えて
       >型に合わせないで
         >新聞紙を折って
         >新聞紙を折らないで
       >型に合わせて
   >新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する
     >利用に際して化学的に分解しない
       >インクを除かないで
       >水洗によりインクを除いて
     >利用に際して化学的に分解する
       >新聞紙のままで熱分解する
       >新聞紙のパルプ繊維(セルロース)を酵素で分解する
 >新聞紙を他のものと組合せて再利用する
   >新聞紙は新聞紙のままで他のものと組合せて再利用する
     >紙糊で貼り合わせて
       >立体物を形成して
       >立体物を形成せず
     >紙糊以外のものと組合せて
       >木材・竹などに新聞紙を巻いて建築材にして
       >プラスチックと重ねるなど組合せて
   >新聞紙は少なくとも一旦異なるものにして他のものと組合せて再利用する
     >新聞紙のパルプ繊維をバラバラにしてそのまま再利用する
       >水分を加えて
       >水分を加えず
     >新聞紙のパルプ繊維をバラバラにして化学的に変化させて再利用する
       >化学物質・酵素を使って別の素材にして
       >化学物質・酵素を使って新たな原料にして

表4.4: 例題4-4 「用済み新聞紙の再利用法」を表記したロジックツリー解答例
前提条件:

  • 1) 新聞に記載されている情報の本来的利用(「切り抜き」を含む記事・解説・データ等の活用)は用済みとし、再利用に含めないものとする
  • 2) 上記に加え、「直接、廃棄する」以外の、再加工を含む如何なる利用も再利用とする
  • 3) 2つ以上の利用方法の組合せは除外する
第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 第5階層 第6階層 第7階層 第8階層 第9階層 再利用例、内容説明
用済み新聞紙の再利用方法 新聞紙を単独で再利用する 新聞紙を新聞紙のままで再利用する シート状の形状を変えないで 新聞紙を切断しないで再利用する 新聞紙を広げた状態で再利用する 再利用時にも広げた状態のままである 敷物(タンス・下駄箱の中、畳の下、畑の植物の栽培時に植物の周りに敷くマルチング材料としての利用など)、カバー(対象物の保護・汚れ防止、遮光、目隠しなども)、紙としての文字やグラフィック描画用途。
再利用時には広げた状態とは異なる形態となる 包装用紙として利用する
新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する 新聞の短辺または長辺と平行に折り畳んで 折り畳んだ新聞紙1枚でも機能する 敷物、カバー、スペーサー、押し葉・押し花の挟み紙
折り畳んだ新聞紙1枚では機能しない 積重ねて踏み台、椅子代わりに
新聞の短辺・長辺方向とは無関係に折り畳んで 大型の折り紙として
新聞紙を切断して再利用する 切断した新聞紙を広げた状態で再利用する 再利用時にも広げた状態のままである 切断した新聞紙1枚でも機能する 単なる紙として利用する 敷物、カバー、文字やグラフィック描画用途
新聞紙面上にある文字を利用する 筆跡不明の文字として使用する
切断した新聞紙1枚では機能しない 紙吹雪、偽紙幣束
再利用時には広げた状態とは異なる形態となる 切断した新聞紙1枚でも機能する 包装用紙、ハナ紙、トイレットペーパー(水洗式用途には使用できないが)、紙テープ、凧の足、汚れ拭き、油分・水分吸収材、クッキングシート代わり、汚れたものどうしを重ねるときのスペーサー、野菜の保存、窓拭きなど。
切断した新聞紙1枚では機能しない 短冊状に切断した新聞紙をランダムに丸めてパッキング材料として
切断した新聞紙を折り畳んだ状態で再利用する 新聞の折り目に沿って畳んで 団扇代わり、ちょっとした虫や蜘蛛などを叩くときにも使える
新聞の折り目とは無関係に畳んで 紙細工、紙飛行機など折り紙として
シート状の形状を変えて 型に合わせないで 新聞紙を折って 箱状にして ゴミ入れなど容器として
様々な形状に折って 帽子(紙製兜など)、スリッパ、即製防寒衣服など
クシャクシャに丸めて クッション材、パッキング材。遊具のボール代わり、油・水分吸収材としても利用できる
新聞紙を折らないで 筒状に巻いて 1つの筒状の棒として チャンバラ棒、ゴキブリ叩き、バット、ラッパ、吹き筒
多数の筒状の棒を並べて 合体させて板状のものにして
型に合わせて 新聞紙面に凹凸を形成して クッション材のような形状にイボイボを形成する パッキング材として
容器の形状に合わせて 容器の内面に沿って新聞を並べて 容器の内面保護・汚れ防止に。油汚れ等のゴミ入れ、容器など
新聞紙を少なくとも一旦異なるものにして再利用する 利用に際して化学的に分解しない インクを除かないで 新聞紙のパルプ繊維をバラバラにしないで再利用する 新聞を千切った程度で再利用する 濡れた新聞を細かく千切った程度で、掃除の際の茶殻代わりに
新聞紙のパルプ繊維をバラバラにして再利用する セルロース繊維レベルまでに完全にばらして 断熱素材として。「エコファイバー」(古新聞などの繊維をバラバラにした断熱素材)というものがある
水洗によりインクを除いて 新聞紙のパルプ繊維をバラバラにして再利用する インクを除いて、製紙工程に 再生紙の原料とする。再生紙にはいろいろあるが、新聞紙、雑誌用紙、ボール紙など
インクを除いて、モールド工程に 紙製モールドの原料とする。卵容器、梱包材、鉢などのパルプモールド
除いたインクを再利用する 印刷用インクに
利用に際して化学的に分解する 新聞紙のままで熱分解する 炭素および水素を利用する そのままで燃やす 燃料、焚き付け、燃焼炎による明かりとする
蒸焼きにして 木炭ガスと炭にして共に燃料とする
炭素だけ利用する パルプ繊維の状態で蒸焼きにして 炭素繊維やカーボンナノチューブの原料にする←可能かどうか不明
新聞紙のパルプ繊維(セルロース)を酵素で分解する 微生物による酵素分解で ヤギなどが分解酵素によって消化して飼料となる←和紙はともかく新聞紙は怪しい
酵素(セルラーゼ等)で分解する オリゴ糖に変えて 植物が作った繊維であるセルロースはある種の酵素で分解することによって、ブドウ糖を数個つなげたオリゴ糖などに変換できる
新聞紙を他のものと組合わせて再利用する 新聞紙は新聞紙のままで他のものと組み合わせて再利用する 紙糊で貼り合わせて 立体物を形成して 張り子に貼り重ねて立体物にする 各種張り子造形物 運動会の鈴割ゲーム用の鈴、催し物の張り子人形・動物など
物体の形状に合わせて張り重ねて立体物を形成し、剥がして再利用する 容器として ゴミ箱・鉢など。新聞紙を濡らして、容器形状に合わせて複数枚張り重ね、型からはずし乾燥させて使い捨て容器とする
造形モデルとして 新聞紙を濡らして、物体形状に合わせて複数枚張り重ね、原型物体からはずし乾燥させて造形モデルとする
貼りつないで、重ね、袋状に形成して 紙風船、熱気球など
立体物を形成せず 貼りつないで大きな紙として 大凧用の紙として
貼り重ねて厚紙・厚板として ベッド、テーブル板材として実用されている
紙糊以外のものと組み合わせて 木材・竹などに新聞紙を巻いて建築材にして 室内の見えない部分の建築材料として使えそう
プラスチックと重ねるなど組合せて こういう組合せもあり得る
新聞紙は少なくとも一旦異なるものにして他のものと組み合わせて再利用する 新聞紙のパルプ繊維(セルロース)をバラバラにしてそのまま再利用する 水分を加えて 澱粉糊混練して 紙粘土として
ベントナイト(モンモリロナイト)と混練して 紙粘土として
土壁と練り合わせて 壁材に
水分を加えず 大豆の絞りかすと混練して 「エンバイロン」(古新聞を粉砕し、大豆の絞りかすを接着剤として熱圧成型したボード)という板材がある
燻炭(籾殻の蒸焼き炭)と混ぜて 断熱素材に
新聞紙のパルプ繊維(セルロース)をバラバラにして化学的に変化させて再利用する 化学物質・酵素を使って別の素材にして 自然由来の繊維として 天然繊維に
セルロース系プラスチックとして 生分解性プラスチックに
化学物質・酵素を使って新たな原料にして GM酵母によりアルコールへ変化させて エタノール(バイオ燃料)
分解して生成した糖類に他の食用物質を加えて 食物・飼料

戦略案創出のための枠組みを設定する

さて,今度はロジックツリーによる展開を,広義に言えば問題解決プロセスにおける「解決策立案プロセス」の「枠組みの設定とアイディア出し」,狭義に言えば「戦略の立案プロセス」に相当する課題に適用してみよう.前々項および前項で作成したロジックツリー「鉄板の切断方法」,「用済み新聞紙の再利用法」はいずれも膨大なものであったが,ロジックツリーはいつも膨大なものを作成する必要があるというわけではない.それらのロジックツリーはいずれも可能性を探るという狙いに沿ったものであったが,事業戦略案の創出など,実際に実行する課題解決策の立案においては課題を取巻く状況に応じた前提条件ないしは制約条件が存在するので,自ずと実質的に意味を持つ自由度の範囲で比較的シンプルなロジックツリーを作成することになる.何の前提条件もまたは制約条件もなしに可能性のある戦略案をMECEに考えると,変数が多すぎて手に負えなくなる上に,意味のある僅かな戦略案と殆ど役に立たない数多くの戦略案が並ぶという結果になる.そこで,ロジックツリーによる展開により,典型的には「戦略の立案」のような課題解決策立案に取組む場合には,意味のない戦略案を可能な限り排除できるように,予め,「戦略の基本方向」を定め前提条件や制約条件を明確にしておくことが大変有用となるのである.

その前段のプロセスに相当するのが,「課題形成プロセス」である.「第2章 問題解決の主役はロジカル・シンキングである」の「4.1節 本質的問題・課題を明確化する(課題形成プロセス)」部分を再確認いただきたいが,『「課題形成プロセス」が意図するところは「目的達成のための本質的解決策の基本方向を明らかにする」という点にある』と述べた.次の段階の「解決策立案プロセス」においては,論理的に明らかにされた「本質的解決策の基本方向」という前提ないしは制約条件のもとで「枠組みの設定とアイディア出し」を実施するということになるので,ロジックツリーが比較的シンプルなものになるというわけだ.発生型の問題における本質的原因の発見を目的とするロジックツリーにおいても,問題の発生状況に関する事実情報が豊富な場合にはロジックツリーが比較的シンプルになるが,その辺の事情と同様である.

それでは第3章で基本戦略方向を導いた例題3-11の続きに継続して取組むことにしよう.
(参照:3.2.5 進むべき基本戦略方向を見極める

例題4-5 例題3-11にて、乗用車・トラックの製造・販売を手がける国内自動車メーカーM社の今後の基本戦略方向について検討した結果に続いて,M社の戦略案を考えるための枠組みを示しなさい.

課題形成プロセスにおいて,基本戦略方向を明確化するという目的達成志向を持って関連情報を収集し,グルーピングし,要するにどのようなことが言えるのかについて論理ピラミッドを用いて論理構築した結果は以下の通りであった.

課題化
【課題解決または基本戦略の方向】
M社の今後の課題解決ないし基本戦略方向は,事業,活動地域・対象市場,過剰生産設備の見直しを視野に入れ,経営効率の向上に取組むことである.

前章の例題部分でも述べたが,「基本戦略方向」というのは,「状況が多少変動しても基本的には変わらない重要な方針・打ち手」となりそうなポイントに相当する.そのことを踏まえると明確なある範囲の戦略方向の中で戦略的自由度を考えるというふうに進めれば良いということになる.

解答例:枠組み設定とアイディア出し
【課題解決または基本戦略の方向】

417

図4.13: 例題4-5 「M社の戦略案」解答例

お断りしておくが,解答例はあくまでも戦略立案というようなテーマにおいても問題解決プロセスに従い,論理思考を活用して対応可能であることを示す目的で,筆者が軽く情報収集した範囲で考察した基本戦略方向に沿ったものであり,単なる1つの私的見解に過ぎない.
この先は,問題解決ステップで言えば,「解決策の仮説設定」,「仮説の検証」と進めることになる.基本戦略が決まれば,有望市場への製品供給の容易さとの関係はどうか,過剰設備は投資先企業で活用可能かなど細部の検討を行い,競合状況などを加味して魅力的なアイディアをリストアップし,それらを評価して最適な戦略案を選択すれば良いだろう.

4.2.4 要素へ分解する

ロジックツリーによる論理展開への応用例として,要素への分解という分野がある.今までに登場したロジックツリーはいずれも「or 型ツリー」であったが,要素への分解は「and 型」ツリーとなる.要素への分解例にはいろいろあり,対象となるものはあらゆる業務,構築物・商品のようなハードウエア・物品,加工された材料,集合技術・ソフトウェアなど実に幅広い.私達が普段取組んでいるような,例えば,複雑な技術課題のようなものは,当然のことながら一旦いくつかの要素課題に分解して,分解した個々の課題に対して取組むことになるが,その場合も要素への分解ということになる.分解した要素課題に対しては,時には解決策を検討する論理展開であったり,時には更に要素へ分解するための論理展開であったりするわけだ.

プロジェクト・マネジメントの際には,通常,プロジェクトを完成させるために実現しなければならない事柄の大工程から小工程までを視野に入れ,プロジェクト業務の大日程計画,中日程計画,詳細日程計画を立案する.そのとき実施すべき仕事を計画通りに実行可能な作業に分解してWBS(Work Breakdown Structure:業務展開表)という展開ツリーを作成するが,WBSも要素への分解の1つに相当する.
ここでは身近なテーマを課題分解の例題に取上げたので取組んでいただきたい.

例題4-6 Aさんは,家のモルタル外壁が傷みかけているので,夏休みを利用してペンキを自分で塗り替えるつもりでいる.本職のペンキ屋さんに負けないくらいの良い出来映えにしたいと,春から計画を立てている.どのような事柄を検討して準備したら良いか,必要なすべての作業を展開して示せ.

課題を目的達成志向で(つまり,この場合,ペンキ塗りの出来映えを良くするポイントを押さえて,効果的に課題を達成できるように)要素に分解することである.「ペンキを上手に塗るにはどういうことに留意して準備すれば良いか」ということが明確になるような切り口を見出すには準備から後片付けまでの一連のペンキを塗るという作業を洗いざらい抽出して,「ペンキを上手に塗る」ことに関わる作業のポイントがわかるようにすれば良い.
すると,すべての作業を洗い出せるような確実にMECEとなる切り口で,作業の順を追ってモレのないようなロジックツリーを形成するというオーソドックスなことを進めて行けば,確実に目的が達成できると考えることができるはずだ.
「ペンキ塗り」に限らず,広くすべての業務(仕事)を対象に考え,ロジカル・シンキングにより作業を展開するには,プロセス・マネジメントの考え方と同様にどのような工程(プロセス)に関しても,まず,大きく

・前工程→企画,目標と現状の明確化,実行計画
・本工程→実行
・後工程→結果の確認・振返り

とMECEとなる3つの工程に分けて考えることをお勧めしている.
「ペンキ塗り」が対象ならば,

・前工程=ペンキを塗る前に準備すること
・本工程=ペンキを塗ること
・後工程=ペンキを塗った後に実施すること

で良いだろう.

参考までに「前工程」について触れておこう.
・前工程
 -1:企画(目的達成を志向して基本計画を立てる)
 -2:業務のアウトプットまたは仕様(と前提条件)を明確に決定する
 -3:有用情報を収集する
 -4:仕事の進め方の方針を決め,具体化計画を立てる

まず,「前工程-1」「企画」という項目を忘れないことである.企画がしっかりできているということは,可能な限り見えないものを見えるようにしたということである.見通すことが困難な部分は必要な調査や情報収集を実施してどのようにして実現するのかを明らかにするであろう.「ペンキ塗り」に関して言えば,実施すべきことが見えるようになって初めてどの部分に神経を使ってエネルギーを投入する必要があるか,どの部分がペンキ塗りの出来映えに関係があるかなどが検討できるということでもある.
「企画(目的達成を志向して基本計画を立てる)」の中身としては,まず問題解決プロセスで言えば,目標と現状のギャップを正しく認識することに相当する部分で,「前工程-2」「業務のアウトプットまたは仕様(と前提条件)を明確に決定すること」である.そのためには現状認識が不可欠になるので,「前工程-3」「(ペンキ塗りの対象となる現場とペンキ塗りに関する)有用情報を収集すること」が必要になる.
そして,いよいよ仕事にかかろうとすれば,どんなやり方でも可能と言えば可能であるので,最も状況に適したやり方の大枠の意思決定として,「前工程-4」「仕事の進め方の方針を決め,具体化計画を立てること」というステップとなる.

通常,ロジカル・シンキングを「業務遂行」課題に適用したときには,「予備調査,仕様決定,前提条件の明確化,それに日程計画」までを前記「前工程(塗装の前に準備すること)」の最初に「企画(基本計画を立てる)」といった作業項目を設定して,落とさないようにすることをお勧めしている.因みに,本課題「ペンキ塗り・・・」に対する「課題分解」作業は「予備調査」を含む,この「企画(目的達成を志向して基本計画を立てる)」項目において実施していると考えることができる.

「本工程」を終えた後の「後工程」では,業務であれば最初に目論んだ「企画」に沿った業務が実行でき,目標どおりのアウトプットを出すことができたのかを確認し,次の工程に備えて改善すべき点を明らかにするといった振返りのステップになる.自宅の「ペンキ塗り」のような場合には,そこまで念を入れてクソ真面目にやらなくても良い.むしろ,後々の補修作業に備えハケや残ったペイントの管理などをしっかり実施しておくことの方が大事であろう.

勿論,「プロセス」で切らなくても自分にあった切り方で構わない.しかし,「業務」を分解しようとした場合には,例題の「ペンキ塗り」というテーマと本質的には変わらないので,上記のような分解の仕方をいつも習慣にしておき,どのようなケースでも最低限同じ発想に立てるようにしておくと良い.
解答例をExcelシートで表4.5に載せておくので,ご覧いただきたい.備考欄に記載した,例えば「下塗りすると良い仕上がりになる」,「(塗りにくいところから塗り始める)仕上がりに影響が大きい.小型のスジカイ刷毛が良い.」といった項目が,「目的達成志向的」に記載されていることがおわかりいただけると思う.最初にこのような課題を要素に分解したツリーを作成しておけば,計画が立てやすいということも併せてご理解いただけるであろう.

表4.5: 例題4-6 「ペンキ塗り」解答例
前提条件:吹付け塗装は専門的な道具や技術が必要なので検討対象として考慮しない
  :出来映えに大いに関係
  :出来映えに関係

第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 第5階層 第6階層 第7階層 第8階層 備考
家のモルタル外壁のペンキを自分で出来映え良く塗り替える(計画を立てる) 塗装の前準備をする(ためのポイントを整理する) 塗装の計画を立てる 塗装について予備調査する 出来映えの良い塗装をするにはどうすれば良いか確認をする インターネット、雑誌、図書館、ペンキ屋、塗装店などの情報源
どれだけの費用がかかるか
どれだけの時間がかかるか
前提条件を明確にする 仕様・費用・依頼仕事の有無・期限など 家族とも十分に話し合って共有する
塗装仕様を決める 塗装範囲を決める
塗装に求める機能・性能を明確にする 防水
防カビ 気候環境によっては重要
耐久性 ロングレンジでは非常に重要
外観 色味 周囲との調和も考慮する。家族の意見も尊重して決める。
光沢
日程計画を立てる
道具・材料を揃える 塗るものに適した塗料・うすめ液を選ぶ 下地処理用の材料 コーキング材 アクリルエマルジョン系、ウレタン系、シリコン系の中から選ぶ シリコン系は塗料が乗らないので塗装には不向き
下塗り密着塗料(シーラー)
マスキング・シート、テープ
塗装材料 塗料 機能・性能の種類(防水・防カビ性のあるもの) 油性と水性(アクリル系→ウレタン系→シリコン系→フッ素系→+光触媒系)がある 油性は溶剤臭気、付着等の取り扱いが厄介なので、使用は避けたい。水性は取り扱いが容易であり、選択したい。→方向に行くに従って高耐久性・高価であるが、シリコン系以降がコストパフォーマンスが良い。
色は混合調整を要するか 要・不要を決める 混合する塗料のすべて
2回塗りを考慮し、かつ所要量より多めに
塗料の種類に適合するうすめ液(溶媒) 水性塗料は水。
油性塗料はペイントうすめ液。
ラッカー塗料はラッカーうすめ液。
塗料の種類を決定すると自動的に決まる。水なら安価で取り扱いが容易
塗料洗浄液 うすめ液に同じ
塗料や塗るものに適した道具を選ぶ 下地処理用の道具 へら
ラスター刷毛
塗装用の道具 ローラー刷毛 モルタル壁には適している
スジカイ刷毛 ローラー刷毛が使えない細部・すき間などの塗装に使用する
塗料容器(バケツ)
攪拌棒
塗る環境を整える 足場・作業環境を確保する 高所の作業性・安全性・安定性確保 はしご・踏み台・脚立をセットする
鉄骨足場を組立てる 無料・レンタルもあり
塗料の落下・タレによる汚れ防止・保護 塗料が垂れそうなところに新聞紙・シートを敷く
衣類・タオル・メガネ・帽子
塗る壁の下地をよく整えておく 洗浄する クモの巣や付着物など汚れを箒などで除去する
ブラシ・タワシで擦る
水道ホースにジェットノズルをつけて洗浄 できれば高圧水洗浄機を使いたい
カビとり洗浄液で洗浄 ひどいカビ、コケがあるときだけ
下地を補修する コーキング処理を行う 境界部分のすき間にコーキング材を詰める
ひび割れ部分をコーキング材で補修する
塗膜ハガレを補修する 剥がれる部分ははがしてしまう
下塗り・密着塗料(シーラー)を塗る 下塗りすると良い仕上がりとなる
マスキングを行う マスキング・シート、テープを使用する 仕上がりを良くするためには手を抜かない方が良い
天候・環境・タイミングを選ぶ 天気のよい日(晴れ、風が極端に強くない天気)に塗る 予定日の天気が悪い場合などは塗装以外の準備に充てることも考えておく
塗る場所の風通しをよくしておく
塗装する(ためのポイントを整理する) 塗料を調整する 塗料を塗料バケツにて調整する 混合調整する塗料 必要量より少し多めにつくり、全体に同じ色味になるまで調整しながら十分に混合する 色ムラが生じないような注意が必要
混合調整しない塗料 混合調整が不要な色の場合
塗料に薄め液を混合調整する 溶媒が蒸発するので、気温・湿度に応じて様子を見ながら一定濃度になるように溶媒を追加混合する 一時的に保存する場合には塗料容器(バケツ)に入れ、表層をうすめ液で覆い蓋をしておく
使う前に十分かき混ぜる
刷毛に塗料をつける スジカイ刷毛に塗料をつける 刷毛全体に塗料をつけ、引き上げるときに容器のへりで塗料を軽くしごいて垂れない程度にする スジカイ刷毛は部分的に使用する。塗料をつけすぎないこと。
ローラー刷毛に塗料をつける ローラー刷毛全体に塗料をつけ、引き上げるときに容器のへりで塗料を軽くしごいて垂れない程度にする 壁全体はローラー刷毛を使用する。塗料をつけすぎないこと。
モルタル外壁に塗料を塗る 塗りにくいところから塗り始める 塗るべきところとそうでないところの境界部分 仕上がりに影響が大きい。小型のスジカイ刷毛が良い
すき間部分
凹んだ角の部分
タレないように塗る 垂直面を塗るときには下方から上方に向けて塗ると塗料が垂れない
一度に厚く塗らないように2回で塗る 1回目は塗料を少し薄めに溶いて塗る
1回目が乾いてから2回目には標準的な濃さで塗る 2度塗りをするときれいに仕上がる
後片付けをする(ためのポイントを整理する) 消耗品を片付ける マスキングテープ・シートをはがす ペンキが完全に硬くならないうちにはがす
新聞紙・布などを処理する
次回または補修にも使えるものを片付ける 余った塗料を保存する 密閉できる金属またはガラス容器に入れておく 補修のときにも役に立つ
容器を洗浄する 塗料を新聞紙・布で拭き取り、その後、洗浄する 洗浄に使用した油性の液は新聞紙などに吸収させ燃えるゴミとして廃棄する
刷毛を洗浄する 刷毛を不要になった新聞紙・布でしごいて残った塗料を搾り出す
塗料容器(バケツ)の内壁を刷毛で洗浄しながら、刷毛自体を洗浄する
その他の後片付け 足場を返却する
衣類・帽子・メガネ等についた塗料の汚れなどを処理する
道具をしまう

4.3 フレームワークを活用して思考する

本節ではフレームワークの活用について学ぶ.フレームワークというのはロジックツリーを用いて作成したツリーが,結果的に何らかの枠組みとして機能することから呼称されていると理解することができるが,実体はロジックツリーそのものである.従って,前々節「ロジックツリーによる論理展開とは」,前節「ロジックツリーを活用してみよう」において述べてきた事柄の一切は「ロジックツリー」という言葉を「フレームワーク」という言葉に置換えて理解していただいて差し支えない.
しかし,ロジックツリーを思考の枠組み(フレームワーク)と捉えると「フレームワークを使って思考する」ということが可能になる.フレームワークを活用して思考することをフレームワーク思考と言う.何を検討すれば本質が明らかになるのか,意思決定できるのか,そのためにどのような情報を収集すべきか,情報をどのような枠組みで整理,分析すべきか考えるなどの場合において,全体像を把握し,思考の質を上げ,漏れなく考える場合に効果的な思考法である.フレームワーク思考はアイディア創出を支援する役割や対人力的課題解決を支援する役割をも担う.

4.3.1 ビジネス・フレームワーク

ビジネスの分野では既存のビジネス・フレームワーク,例えば,「第3章 論理ピラミッドを構築して活用する」に登場した戦略的3C(Corporation:自社,Customer:顧客,Competitor:競合相手)のようなフレームワークがある.他に製品系列のポートフォリオ・マネジメント:PPM(Product Prtfolio Management)脚注4-6),マーケティング・ミックスの4P(Product:製品,Price:価格,Place:流通チャネル,Promotion:プロモーション)脚注4-7),SWOT(Strength:強み,Weakness:弱み,Opportunity:機会,Threat:脅威)分析脚注4-8)などいくつかのフレームワークが良く利用されている.これらのビジネスフレームワークは事業状況を分析したり新たな戦略を考えようとする場合に,予め考えられた枠組みに沿ってそれらの中身を検討することによって,的確な現状分析や今後の方向を示唆してくれるというものである.

戦略的3Cを世界に紹介した大前研一氏によれば,次のような理由で戦略的3Cなど既存のビジネス・フレームワークは近年の事業戦略の検討には,もはや通用しないとのことである.すなわち,近年,経済のボーダレス化が著しく進展し,情報が瞬時に伝わるIT・インターネット等技術の進歩とともに産業が突然縮小したり,急成長企業が自社の高い企業価値を利用して資金を集め,他業種や競合企業を買収し,さらに急成長するといったことが起こっている.かくして,様々な打ち手の可能性がある中で競争状況が瞬く間に変わるなど戦略の進化のスピードが激しく,古いビジネスモデルや固定的な枠組みに囚われた思考パターンが機能しなくなっているというのである.
確かにその通りであると思うが,日本企業には最低限,戦略的3Cくらいは前提として視野に入れ,制約条件を排除して先見的な戦略を自在に考え,絶えず自己革新して行ける能力が欠かせないということも言える.企業の中核人材にとっては少なくとも戦略を考える際のベースとして使えるようにしておくべきである.何故なら,多くの日本企業は従来から企業として必要な最低限の戦略さえ考えずに,ただひたすら一生懸命に安くて良い製品を供給し,挙句の果てに過当な破壊的価格競争により自滅し,やがて韓国・台湾企業などに凌駕されてしまうということを繰返して来ているからだ.変化の激しいインターネット時代にもボーダレス経済や巨額資金の力学を視野に入れ,柔軟な発想で戦略を考えようとする限り,戦略的3Cは価値の高い基本フレームワークとなるであろう.

既存のビジネス・フレームワークの活用に関しては,本書では第3章および本章で戦略的3Cの活用例を紹介しているので,これ以上は触れない.

4.3.2 アイディア創出に役立てる

フレームワーク思考は本質的問題の発見=課題形成の後のステップである課題解決策の検討においても,重要な役割を演ずる.更に分析的解決策にとどまらず,創造的解決策の創出,つまり,イノベーションを支援するのである.ロジックツリーの例題に取組んだ読者は既にそのことに気づいておられるに違いないが,フレーワークを使って思考することに精通すると論理思考 が創造思考を支援し発想を豊かにするということが,実感を伴ってわかるようになるだろう.
では,早速,簡単な例を使ってフレームワーク思考を体験してみよう.例えば,家屋の屋根に用いる建築素材を検討しようなどという場合に

屋根に用いる建築素材を検討する→鉄,プラスチック,セラミクス,銅,アルミニウム

と,単にこれらの素材を羅列しておいたままでは,他の素材を発想しにくいが,鉄,プラスチック,セラミクス,銅,アルミニウムを分類する上位の概念は,例えば,金属と非金属と考えて,

屋根に用いる建築素材を検討する
 >金属→鉄,銅,アルミニウム
 >非金属→プラスチック,セラミクス

とすれば,ここに挙げられていない「>金属」および「>非金属」の範疇にあるものを考えることが明確になるので

屋根に用いる建築素材を検討する
 >金属→鉄,銅,アルミニウム,ステンレス,真鍮,青銅
 >非金属→プラスチック,セラミクス,ガラス,セメント,木材,紙,竹

という具合に,他の「>金属」素材や「>非金属」素材を発想しやすくなることがわかると思う.しかし,もし,上記の建築素材の上位概念を「>単一素材」・「>複合素材」と捉えて分類したとすれば,すべての素材が「>単一素材」分類に収まってしまうが,「>複合素材」分類の方で「鉄筋コンクリート」や「ガラス繊維入りプラスチック」といった素材を比較的容易に発想することが可能であろう.

屋根に用いる建築素材を検討する
 >単一素材→鉄,プラスチック,セラミクス,銅,アルミニウム
 >複合素材鉄筋コンクリート,ガラス繊維入りプラスチック

フレームワークの階層はロジックツリーと同様に深くても構わないので,

屋根に用いる建築素材を検討する
 >単一素材
   >金属→鉄,銅,アルミニウム,ステンレス,真鍮,青銅
   >非金属→プラスチック,セラミクス,ガラス,セメント,木材,紙,竹
 >複合素材
   >金属と金属亜鉛メッキ鉄
   >金属と非金属鉄筋コンクリート,セラミクスコーティング・アルミニウム
   >非金属と非金属ガラス繊維入りプラスチック

とすることも可能である.

このように,発想することが容易になる事柄というのは設定した上位概念によって,左右されるわけで,どのような切り口を設定したら目的を達成しやすいかということと対応する.切り口には基本的な制限がないわけであるから,特別な目的を達成しようと思えば,上位にその狙いに沿った切り口を設定すれば良い.例えば,「>耐火素材」といった枠組みが上位にあれば各種耐火性能の素材について集中して考えるであろうし,「>騒音吸収素材」などという切り口が設定されているならば,やはり,その方向の具体的な素材を抽出しやすくすることになる.

ここまで述べてきたことが「屋根に用いる建築素材を検討するためのフレームワークの作成例」であり,その過程は『フレームワークを使って思考している』ということに相当する.論理思考が作成するフレームワークを通じて創造思考を支援していることがおわかりいただけると思う.

もう1度,フレームワーク思考を体験していただきたい.「4.1.5 ロジックツリー作成には2つのアプローチ」のところで身近な日用品のいくつかを「文房具」に分類する事例があったので,その延長でもっと多くの「筆記用具」を抽出することを試みてみよう.

例題4-7 できるだけ多くの「筆記用具」を抽出したい.どのようなフレームワークにしたら良いだろうか.具体的な「筆記用具」とともに示せ.

例えば,世の中にはいろいろな「筆記用具」があるが,ちょっと思いつくものを書き出してみると

 筆,万年筆,鉛筆,ボールペン,シャープペンシル,ペン,白墨,クレヨン,色鉛筆,マジックインク,サインペン,蛍光ペン,クレパス,木炭,ろう石

と,まあ,こんなところだろうか.いろいろな「筆記用具」があるので,少し整理するために良く見ると「筆記に固体素材を使う」ものと「筆記に液体素材を使う」ものがあることには気がつくと思う.しかし,更に「筆記する」ということの本質を良く考えるとこれらはいずれも「筆記対象の媒体上に固体素材または液体素材を置く」という上位概念に含まれることに気がつくだろう.するとMECEに考えるなら「筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない」という上位概念があり得ることがわかる.
従って,まず例えば,下記のようなフレームワークを作成することができる.

筆記用具を分類する
 > 筆記対象の媒体上に固体素材または液体素材を置く
   >筆記に固体素材を使う→鉛筆,シャープペンシル,白墨,クレヨン,
色鉛筆,クレパス,木炭,ろう石
   >筆記に液体素材を使う→筆,万年筆,ボールペン,ペン,マジックインク,
サインペン,蛍光ペン
 > 筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない

ここで,今度は「筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない筆記用具」はないだろうかと考える,言い換えれば当初は眼中になかった枠組み「>筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない」を使って思考するのである.すると今では殆ど使われていないが,エジソンの発明による謄写版印刷(孔版印刷の1つ)の前段階でガリ版原稿を作成する際に使う「鉄筆」というものを想起できると思う.「鉄筆」はヤスリ盤の上でパラフィン紙に細かな穴を開けてインクを浸透させるようにしているに過ぎないが,パラフィン紙に対しては立派な「筆記用具」である.「鉄筆」の上位概念は「対象媒体に貫通孔を開けて印をつける」といったところであるが,するとMECEな分割の相手には「>対象媒体に貫通孔を開けずに印をつける」という枠組みが残されるので,ここでまたフレームワーク思考を実施するのである.やはり当初には考えていなかった「>対象媒体に貫通孔を開けずに印をつける」ものはないだろうかと.すると,「彫刻刀」,「金属針」,「レーザー・マーカー」,「タガネ」などが考えられるであろう.

因みに,もし当初,上記の「筆記用具」の上位概念を「固体素材または液体素材を使って筆記する」という捉え方をすると,よほど注意して考えない限り,そのMECEな分類相手「固体素材または液体素材を使って筆記しない」という分類範疇に含まれる「筆記用具」を考えつくことができなかった可能性がある.このように「筆記する」ということはどういうことなのかについて本質を捉えておくことが役に立っているのである.

筆記用具を分類する
 > 筆記対象の媒体上に固体素材または液体素材を置く
   >筆記に固体素材を使う→鉛筆,シャープペンシル,白墨,クレヨン,
色鉛筆,クレパス,木炭,ろう石
   >筆記に液体素材を使う→筆,万年筆,ボールペン,ペン,マジックインク,
サインペン,蛍光ペン
 > 筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない
   >対象媒体に貫通孔を開けて印をつける鉄筆
   >対象媒体に貫通孔を開けずに印をつける彫刻刀,金属針,レーザー・マーカー,タガネ

フレームワークからは,際限がないほどと言うとオーバーな言い方になるが,いくつものアイディアを発想できる可能性がある.「筆記対象の媒体上に固体素材または液体素材を置く」という枠組みからは,玉子(鶏卵)の殻細工だとかナスカの地上絵のように大地に石を並べるといった筆記方法も視野に入る.また,「>筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない」という枠組みを別の観点から「筆記対象の媒体表面を部分的に変化させて印をつける」といった捉える方をすると,媒体表面を擦ると圧力で色が変わるような筆記方法なども考えられる.ただし,媒体側に固有の特性を持たせた,例えば感圧紙だとか,印画紙などを除外して検討する必要があるといった場合には,例によって「前提条件」を設定して除外しておくなど課題の明確化を実施しておくことになる脚注4-9)

さて,単に「媒体表面に印をつける」としても「印のつけ方」はいろいろありそうで,例えば,「短時間で印が消えてしまう」ような筆記方法から,「半永久的に印が残る」ような筆記方法まで視野に入れることができるだろう.短時間であれば「光線で描画する」という方法も筆記用具として考えられる.ところで,「媒体表面に印をつける」という発想のMECEな対となる発想は「媒体表面に印をつけない」というものであり,筆記用具の範疇を超えるかもしれないが「何らかの仕掛けで媒体上に文字が浮かび上がる」ような筆記方法もアイディアの対象となる可能性がある.
上位概念が創造思考を支援して創出するアイディアは荒唐無稽なものばかりではない.「>筆記に固体素材を使う」という分類範疇にある「シャープペンシル」という筆記用具は,他のものが,1個の筆記用具を使い尽くすと「一巻の終わり」となることに対して,替え芯を補充することによって,使い続けることができるというものであるが,フレームワーク的に見ても必然的な発明であることがわかる.
「>筆記に液体素材を使う」分類においても,他のものが「>対象媒体への液体の供給に毛管現象を用いる」のに対して,「ボールペン」は「>ボールに付着した液体をボールの回転によって移動させる」という点で異質であることがわかるのではないだろうか.フレームワーク的に考えられる発明の1つであろう.それならば,他の方法も考えられるはずで,本質は「対象媒体上に液体を供給して置けば良い」ので,例えば,液滴を落としても構わないわけだ.そう,「インクジェット」という方法が考えられる.棒の先にインクをつけて「転写」しても良いことになる.

例題4-7.解答例 筆記用具を分類する
前提条件:

  • 1) 筆記媒体は紙に限らず,何でも良いものとする
  • 2) 特に記載した項目を除いて,媒体側に固有の特性を持たせて筆記の仕組みを構成する,例えば感圧紙や印画紙などは検討から除外する
 > 筆記対象の媒体上に固体素材または液体素材を置く
   >筆記に固体素材を使う
     >固体素材を補充できない→鉛筆,白墨,クレヨン,色鉛筆,クレパス,木炭,ろう石
     >固体素材を補充できる→シャープペンシル
   >筆記に液体素材を使う
     >対象媒体への液体の供給に毛管現象を用いる→筆,万年筆,ペン,マジックインク,
サインペン,蛍光ペン
     >対象媒体への液体の供給に毛管現象を用いない
       >ボールに付着させた液体をボールの回転により供給する→ボールペン
       >粒状にした液体を媒体上に飛ばして供給する→インクジェット・プリンター
       >物体に液体を付着させて転写により供給する→転写棒
 > 筆記対象の媒体上に固体素材および液体素材を置かない
   >対象媒体に物性的・形状的な変化を残す
     >対象媒体に貫通孔を開けて印をつける→鉄筆,パンチング・ツール
     >対象媒体に貫通孔を開けずに印をつける
       >機械的に形状変化を与える→彫刻刀,金属針,タガネ
       >熱的に形状変化を与える→レーザー・マーカー
   >対象媒体に物性的・形状的な変化を残さない→光線(軌跡)

もちろん,上記とは全く異なる解答であっても自分で納得が行き,多くの「筆記用具」が抽出できているのであればそれで構わない.枠組みの設定には何の制約もないので,例えば,新規な筆記用具の企画が目的ならば「筆記すると芳香を発する」,「眠気を覚ます筆記用具」などといった切り口を設定して新たな商品の可能性を想起することも可能であろう.以上の例題の説明で目的に合ったフレームワークの枠組み,つまり,適切な上位概念は下位概念の発想を支援することを,ご理解いただけたと思う.

4.3.3 対人的課題解決に役立てる

前小節では課題解決策を考える際に論理思考が適切な枠組みを設定することにより,創造思考を支援してアイディア創出に貢献するということを学んだ.課題の中には交渉事や説得など行動を含む対人能力を必要とする課題もあり,解決には人の心理的側面や情緒など難しい領域にも踏み込まなければならない場合もある.そのような場合にも,論理思考はどのような解決の枠組みと道筋があるのかを示唆してくれることになるだろう.

本小節では,対人的側面を含む課題に関して,論理思考が対人行動を支援する感触を得るために,次のような例題に取組んでみることにしよう.

例題4-8 下記の記載事項を事実として,この問題の解決策を検討するためのフレームワークを作成しなさい.(注:必要なら合理的な前提条件を設定すること.はじめに「猫害問題が解決した」ということはどのようなことなのか,良く考えてから取組むこと.)

ある郊外の住宅地で「猫害問題」が生じている.住宅地内に何匹もの野良猫を飼い猫とともに,餌を与えるだけという形態で「飼っている」人がいる.猫達は次々に子孫を増やし,今では生まれたばかりの子猫を含め,20匹近い数になりつつある.猫害は近隣の家の庭・公園砂場・芝生などに所かまわず排便することによって生ずる悪臭やその後始末等の問題,喧嘩や発情の際の迷惑な鳴き声,飼い犬の吼えの誘発,空き家での出産など様々である.
周囲の住民達は何とか解決したいと考えているが,“ 飼い主”は他人の迷惑を顧みるような人物ではなく,へたに注意などをすると逆上して暴発する恐れもある厄介な人物とのことで困り果てている.

巷でよく聞かれる「ゴミ屋敷」といった問題と同じタイプの,構造型の問題であるが,本質的原因は「第5章 因果関係の解明に活用する」で学ぶ「因果関係図」を使って分析するまでもなく,「20匹近い野放し状態の猫と,“ 飼い主”の存在」であることはすぐにおわかりいただけると思う.課題そのものは簡単な内容だが,解決するのは相当に難しいタイプの課題ではないかと考えられる.この課題においては明らかに「猫の問題」だけでなく,“ 飼い主”という厄介な人物の存在が解決を困難にしているということは誰でも認識できるに違いない.逆に言えば“ 飼い主”の存在がなければ解決は容易だということは十分に想定可能だ.
念のため,因果関係図を示す脚注4-10)

419

図4.14: 例題4-8 「猫害問題」の構造例

といった構造になっている.
つまり,最上位命題を「住宅地の猫害問題を解決する」とすると,課題は下記の2つに分解できる.

住宅地の猫害問題を解決する

  • その1:“ 飼い主”の問題を解決する=猫害問題の解決に際して,最悪の場合でも“ 飼い主”が障害となることを排除可能な状況とする
  • その2:猫の問題を解決する=長期的でも良いが,“ 飼い主”の飼い猫の他にせいぜい2,3匹の猫が,コントロールされ繁殖しないという見通しが立つ

従って,この「猫害問題」を解決するには,2つの問題を解決しなければならないが,アプローチとしては2つの問題を分離して,先により本質的な問題「その1」の解決策を,次いで「その2」の解決策を考察するとわかりやすい.

ところで,この課題「その1」で難しくなる要因は相手が人間であるということに基づいている.相手が「物」の場合には課題解決者が何らかのアクションをとったときにはほぼ再現性のある反応をするものであるが,人間の場合には多様な反応が起こるので,可能性があまりにも多くどうして良いかわからないという状況に陥る.更に,課題解決者がとるアクションも多様で,しかもどういうアクションが上位で,どういったアクションが下位なのかが一概には決められないという問題もあるので,検討の進め方自体に必然的な方法を見出し難いことになる.
しかし,ロジカル・シンキングでは「猫害問題」を解決するためにはどのような対人的アクションをとることが可能かを示すことができる.それでは,『その1:“ 飼い主”の問題を解決する』という課題に絞って解説しよう.
どのような切り口を設定したら良いだろうか.例えば,第2階層をMECEに分割して

課題その1:“ 飼い主”の問題を解決する=猫害問題の解決に際して,最悪の場合でも“ 飼い主”が障害となることを排除可能な状況とする
>“ 飼い主”と交渉する
>“ 飼い主”と交渉しない

としたらどうだろうか.

下段は言ってみれば“ 飼い主”とは関係なく「勝手に猫をどうにかする」か,いきなり「訴訟を起こす」という類のやり方で,こういった切り口は「物」が相手の場合にはともかく,「人間」が相手の場合はあまり賛成できない.何故なら,積極的に「>“ 飼い主”と交渉しない」ということは,「“ 飼い主”との交渉を避ける」ということに相当するわけで,それがもたらす方向は解決策志向的ではなく,わざわざ「解決にならない方向」の道を選ぶということになるからである.
「人間」を相手にする場合には,多様な反応が起こり得るので,反応も特定して「解決策志向的」に切っておくと良いのだ.

>“ 飼い主”と交渉したら“ 飼い主”が話し合いに応じる
>“ 飼い主”と交渉しても“ 飼い主”は話し合いに応じない

こうしておくと,下段の方は上段のような解決策志向の「>“ 飼い主”と交渉する」という道を選んでも「>“ 飼い主”は話し合いに応じない」,「ではどうする?」と,その先の解決策方向を考えることにつながる.
次のような切り口も同様で,「>“ 飼い主”に改善を求めない」で猫をどうにかするといったやり方は,はじめから解決の道を塞いでしまうことになる.

>“ 飼い主”に改善を求める
>“ 飼い主”に改善を求めない

交渉当事者には相手の目線に合わせた「解決を志向する」前向きで誠実な対応が必要であり,「>“ 飼い主”に改善を求める」より,「>“ 飼い主”に協力を求める」方が,解決の可能性が広がることがわかるだろう.更に,相手の反応で切り口を設定すると良い.

>“ 飼い主”に協力を求めたら応じてくれる
>“ 飼い主”に協力を求めても応じてくれない
  >“ 飼い主”は話しかければ聞いてくれる
  >“ 飼い主”は話しかけても聞いてくれない

このように,対人的な事柄の切り口は交渉当事者のアクションだけの記述や相手の状況のみの記述では無駄な階層になりがちであり,具体的に交渉当事者の解決策志向的な働きかけ行動を含めた交渉相手の反応で切り口を設定すると良いということがわかる.つまり,ここまで述べてきたことは,厄介な“ 飼い主”であっても,何らかの解決の糸口があるに違いないと考え,「筋の通った提案ができれば,自ら進んでというのは期待できないかもしれないが,少しぐらいは前向きになるはず」という解決を志向した姿勢で,切り口を考えたということである.
もしかすると,「“ 飼い主”に協力を求める」には,それ以前に「“ 飼い主”の心を開いて貰える」状況を設定する段階が必要かもしれない.「ゴミ屋敷」問題など,この手の問題の多くは,少しばかり風変りな人がいて多少変わった習慣を継続しているうちに,個人の範囲を超えて近隣に迷惑が及ぶ状況になってしまうようである.やがて近隣住民から白い目で見られるようになるとともに近隣住民との間でトラブルが発生し,対立が始まる.そして対立関係の溝が深まるとともに,習慣が高じて意固地になって行き,一歩も引かなくなるというケースが多いようだ.

そういう観点では,例えば,「>“ 飼い主”を地域行事へ誘う」といったところから出発する遠回りの解決策も考えられる.このような切り口であれば,そこで一緒にお弁当でも食べながら,次のような会話をしてみることで解決への道が開けるかもしれない.“ 飼い主”は「このまま行くと,家中猫だらけになる.ウンチも臭いし,餌代も大変だ.」と思い始めているかもしれないのだ.例えば,

「このままではあなたも困るでしょう?」
「皆も困っているんです.」
「一緒に何とかしませんか.力を貸していただけませんか.」
「猫が好きなんですよね.どうしても残しておきたいという2,3匹の猫を大事に飼うようにしたらいかがでしょうか.それなら皆もあなたも納得できる範囲になるのではないでしょうか.」
「他の猫は,例えば,貰い手がいたら引き取ってもらうとか,去勢・避妊手術をするとか,ペットショップに引き取ってもらうとかできますよ.それは皆で手分けしてやります.」
「仕方がありません.この際,去勢・避妊手術代金は住民達でカンパしますよ.」
「その代わり,飼い主さんに猫の捕獲だけお願いできませんか.猫を選んで捕まえるのはあなたの活躍する場面ですよ.」
「みんなあなたの活躍を期待してますよ.」

という具合にシナリオを考えると,“ 飼い主”も「じゃあ,やってみようか」という気になるかもしれない.そして本当に1匹でも捕まえてくれたら,皆が本気で「感謝する」のだ.すると“ 飼い主”は嬉々として次々と猫を捕獲してくれる可能性がある.感謝の印に「ちょっと一杯」だって良いだろう.こうなればしめたものだ.そこまで行かなくても,住民が野良猫を捕獲するのを妨害しないという約束をしてくれるなら,猫害問題の解決は可能な段階まで進めることができる.
従って,例えば,

 >“ 飼い主”を地域行事へ誘えば参加してくれる
   >猫問題で相談したら,“ 飼い主”は応じる
     >猫問題の解決に協力を求めれば応じてくれる
       >・・・
     >猫問題の解決に協力を求めても応じてはくれない
       >解決の邪魔はしないことを約束してくれる
       >解決の邪魔をしないことの約束まではしてくれない
   >猫問題で相談しても,“ 飼い主”は応じない
     >住民の知恵と力で解決する
     >住民の知恵と力以外で解決する
 >“ 飼い主”を地域行事へ誘っても参加してくれない
   >酒・土産を持って行けば受け取る
   >酒・土産を持って行っても受け取ってくれない

と,粘り強く考えれば,効果的な打ち手はいくらでも考えることができる.普通に考えても表4.6程度の解決策代替案が考えられるのではないだろうか.いずれにしても,このようにして,「猫害問題」に限らず,状況に応じて可能な限りの粘り強い有効な解決策を次々と実施し,「交渉相手の納得を得る」ために効力の大きな施策をいくつか打つことが大事だ.打ち手の順序を良く考え,「交渉相手が納得できない」状況が発生する余地(チャネル)を狭くして終えるなら,トータルでどのような状況が生じても解決の成功確率が高くなるという具合に考えることができるわけである.
ここで効力の大きな施策というのは,言うまでもなくまさに解決策志向的な切り口に対応している.どんなに誠意を尽くし,粘り強く話し合ってもダメなら,「民事訴訟という道もあるんですが,費用や将来のことを考えるとお互いに良いことはないし,そこまではやりたくないのでわかっていただけないでしょうか.」,「判例によれば飼い主が負けることになりますよ」という説得もある.そして,最後は本当に訴訟である.

表4.6: 例題4-8 「猫害問題」その1 解答例
住宅地の猫害問題を解決する-その1:“飼い主”の問題を解決する(猫害問題の解決に際して,最悪の場合でも“飼い主”が障害となることを排除可能な状況とする)
前提条件:

  • 1) 猫害問題の解決」とは長期的でも良いが,“飼い主”の飼い猫の他にせいぜい2,3匹の猫が,コントロールされ繁殖しないという見通しがついた状況と定義する
  • 2) この課題に登場する,何匹もの野良猫を飼い猫とともに,餌を与えるだけという形態で猫を「飼っている」人をここでは“  ”つきで“飼い主”とする
  • 3) 自己責任能力」とは自分の責任を全うする能力であり,ここでは“飼い主”が自分の責任で猫害問題を解決する能力を指す
第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 第5階層 第6階層 第7階層 内容説明 優先順位
住宅地の猫害問題を解決する
-その1:“飼い主”の問題を解決する(猫害問題の解決に際して,最悪の場合でも“飼い主”が障害となることを排除可能な状況とすること)
“飼い主”の協力が得られる “飼い主”に自己責任能力がある “飼い主”は周辺住民の迷惑状況を認識している,または説明すれば認識できる “飼い主”本人が解決する気になる 「自己責任能力がある」ことを前提にしているので,本人に解決を任せても良い.大きな屋敷に猫ごと引っ越して貰っても良い.しかし,今まで,“飼い主”は周辺住民の迷惑を知りながら,平気でいたようなので,解決を任せても本気で解決するかどうかはわからない. 1
“飼い主”本人が解決する気にならない “飼い主”と解決方法を協議し,住民が主体で解決にあたり,“飼い主”に協力してもらう 費用負担が無理なら,「猫の捕獲」は“飼い主”ならば確実に可能であり,例えば「猫の捕獲」だけを協力してもらう. 2
“飼い主”は周辺住民の迷惑状況を認識していない,また説明しても認識できない “飼い主”は現状の延長では自分も困ると思っている “飼い主”本人が解決する気になる この場合も,“飼い主”本人だけに解決を任せることができるはずであるが,今まで,“飼い主”は周辺住民の迷惑を知りながら,平気でいたようなので,解決を任せても本気で解決するかどうかは当てにはならないだろう 1
“飼い主”本人が解決する気にならない “飼い主”と解決方法を協議し,住民が主体で解決にあたり,“飼い主”に協力してもらう 費用負担が無理なら,「猫の捕獲」は“飼い主”ならば確実に可能であり,例えば「猫の捕獲」だけを協力してもらう. 2
“飼い主”は現状の延長では自分も困るとは思っていない 住民が合法的手段で解決にあたる “飼い主”は非協力というわけではないので,妨害・仕返しなどをされるという恐れはない. 4
“飼い主”に自己責任能力がない “飼い主”は周辺住民の迷惑状況を認識している,または説明すれば認識できる “飼い主”と解決方法を協議し,住民が主体で解決にあたり,“飼い主”に協力してもらう 費用負担が無理なら,「猫の捕獲」は“飼い主”ならば確実に可能であり,例えば「猫の捕獲」だけを協力してもらう. 2
“飼い主”は周辺住民の迷惑状況を認識していない,また説明しても認識できない “飼い主”は現状の延長では自分も困ると思っている “飼い主”と解決方法を協議し,住民が主体で解決にあたり,“飼い主”に協力してもらう 費用負担が無理なら,「猫の捕獲」は“飼い主”ならば確実に可能であり,例えば「猫の捕獲」だけを協力してもらう. 2
“飼い主”は現状の延長では自分も困るとは思っていない 住民が合法的手段で解決にあたる “飼い主”は非協力というわけではないので,妨害・仕返しなどをされるという恐れはない. 4
“飼い主”の協力が得られない 住民が解決する “飼い主”は住民の猫害問題解決行動を妨害する 法的手段を用いる 話し合いで妨害を中止できない場合には法的な手段を用いる.裁判ともなると費用がかかる上に,長期化する可能性もある. 6
警察官に立ち会ってもらう この手の“飼い主”は権力には負い目を感じている場合も多く,トラブルの発生を防ぐことができるだろう. 5
“飼い主”は住民の猫害問題解決行動を妨害しない 住民が合法的手段で解決にあたる “飼い主”が周辺住民の迷惑状況を認識しているか,このままでは自分も猫だらけで困ると思っている場合もあるので,住民による解決手段の実行段階では黙認する可能性がある.しかし,後で火をつけられるなど不安は残る. 4
住民以外が解決する 積極的な解決手段を取る 便利屋など業者に解決を依頼する “飼い主”の妨害に会う恐れがあり,業者はそのことが解決しない限り,引き受けないだろう.引き受けたとしても相当な費用がかかるであろう. 4
積極的な解決手段を取らない “飼い主”が住宅地を出て行く,または死亡するのを待つ 気長に構えて,“飼い主”が居なくなるのを待つという選択肢もある. 3

なお,猫害問題その2は,「猫害問題の解決に際して,最悪の場合でも“ 飼い主”が障害となることを排除可能な状況とする」という条件が満たされたとして検討できるので,さほど難しくはないだろう.解答例は省略させていただいた.

このように,どんなに複雑な問題であっても,大枠と本質を見ながら,必ず解があることを信じて状況に応じ綿密に代替案を考え,しかも粘り強く交渉して行くことが解決への道である.論理思考は適切なフレームの設定により,創造思考の発揮機会を提供することを学んだが,同様に論理思考は適切なフレームの設定により,対人力発揮の機会を提供するのである.問題解決において,「人」を相手にして,「何をしなければならないか」という行動の枠組みまで示してくれる,ということがこの課題事例でおわかりになっていただけたと思う.

4.3.4 深く幅広いアイディアを創出するには

課題の解決策を検討する場面では,どのような課題であっても基本的にはロジックツリー,言い換えればフレームワークを用いた論理展開によって,目的に合った解決策の枠組みを設定して,具体的なアイディア(解決策)を考えるというアプローチとなる.課題にも解決策の方向に関して制約条件の狭いものから,制約条件が無いに等しい,あらゆる可能性を検討するようなものまでいろいろな性格の課題がある.本小節では,制約条件の比較的少ない課題を取上げて,可能な限り幅広いアイディア創出につなげるためにフレームワークを豊かにするためのポイントについて学ぶ.

例題4-9 ほんの僅かな光でも目で見て明るさを感じることができれば「明り(あかり)」だとすると,この世の中にはどのような「明り」があるだろうか,できるだけ多くの「明り」を具体的に挙げ,それらの種類を適切に分類するフレームワークを作成せよ.(必要なら前提条件を設定して検討すること.)

常に成り立つと考えられる分類コンセプトの設定の仕方というものがあるとすると,それは本質,つまり「原理」に着目した分類である.通常,本質に焦点を当てた分類を使うと明確で必然性の高いフレームワークを作成することができる.それは原理の異なるものはあくまで異なる枠組みに置かれるようになるからだと考えて良い.この課題では「明り」が光を発する原理に着目すれば,明確で「切れ」の良い分類が可能になる.
フレームワーク作成に関して普遍的な言い方をすると,上位階層ほど,可能な限り分類対象に対して直接的な切り口を使い,間接的な切り口を使わないようにするということである.本質・原理に着目すると自ずと直接的な分類となる.
不適切な分類の1つは,MECEでない分類であるが,MECEであってもいくつかの不適切な分類というのがある.

・目的に合っていない分類
・必然性の乏しい分類
・切り口が不明確な分類
・抽象度が状況に適していない分類
・問題先送り型の分類

例えば,本課題において「明り」を「使う場所」や「使う目的や用途」で分類するのは,分類対象にとって間接的な分類であるため,上記の「切り口が不明確な分類」となり勝ちである.本課題のように「明り」一般など,抽象度の高いテーマをいきなり用途で分類するというのは,元々無理がある脚注4-11).勿論,誤解のないように補足しておくが,例えば,照明器具販売のカタログ作成を目的として「明り」の分類をするというのであれば,抽出される「明り」にも外形デザインや特徴で識別されるような用途による分類や使う場所での分類というのは決してマズイものではなく,むしろ適切であろう.

さて,上位の方で使えそうな切り口というのは,課題に対して本質的で大きく分類するために適切な抽象度の明確な切り口であり,単に,たまたま思いついた切り口は,目的達成志向的な切り口とならない場合が多い.ただ,時には異質なものを最初に分離するための切り口を使うことことが思考を整理するために助けになる場合もある.例えば,例題4-9のフレームワーク作成において,「明り」の本質に迫る「光を発する原理」に焦点を当てて分類の切り口を設定するような場合に,「レーザー」のように他のものとは異質の原理が使われている「明り」は,比較的上位で切り離して考える方がわかり易い.

一方,たまたま思いついた切り口というのは,上位の分類として必然性の乏しい,例えば,「太陽である」と「太陽ではない」といった発想の切り口である.このような発想に立って,下位の分類を展開して行くと,多くの場合に下記のようなイメージのフレームワークになる.

 >太陽である
 >太陽ではない
   >電球である
   >電球でない
     >蛍光灯である
     >蛍光灯でない
       >蛍である
       >蛍ではない

上記のフレームワークはどの階層においても「A」と「非A」のMECEな組合せとなっているが,常に「A」は必然性の乏しい,思いつきレベルで決定されており,次にどのような「A」が登場するのか見当がつけられない状態である.「非A」の中に残りの問題を積み残したまま展開されて行く,言わば問題先送り型のロジックツリーなのである.やや言い過ぎかもしれないが,問題先送り型のロジックツリーはどのように形態を整えても何の役にも立たないだろう.せっかく切れ味の良いはさみを持っていても,良く考えもせず無闇に使えば紙くずを散らかすだけである.

ロジックツリーのところでも触れたが,フレームワークを作成する際に共通して言えることは,フレームワーク作成場面で,「あまり良くないかな」と感じたら,実はそれが大事な契機だということだ.「何か変かな?」,「どちらの分類になるのか」,「イマイチしっくり来ない分類かな」など良く考えなくてはならない状況に直面したときに,その矛盾というか,曖昧さを解決する思考が求められるわけで,それを克服する度にフレームワークの水準が向上するのである.
目的と状況に応じた分類を使えば宜しいので,切り口には何の制約もないが,納得の行かない分類にしないように切り口を考える,表記を明確にするなどに関して「知恵」を働かせる必要がある.

切り口の設定に関するポイントについては,ロジックツリーのところでも説明済みなのでこのくらいにして,ここでは,フレームワークを豊かにするにはどうすれば良いかに関して具体的な例を使って紹介しておくことにしよう.

例えば,まず,次のようなある分野「人工界に見られる高温物質・物体からの発光」に属するいくつかの具体的な「明り」3点を挙げたとして,ボトムアップにより,十分なフレームワークに仕上げて行くということを実施してみよう.

人工界に見られる高温物質・物体からの発光白熱電球,マッチの燃焼,火打石による火花

次に,挙げた3 点の「明り」について上位概念を考える.

 人工界に見られる高温物質・物体からの発光
  >通電加熱による←白熱電球
  >燃焼加熱による←マッチの燃焼
  >摩擦加熱による←火打石による火花

上位概念に従い,いろいろな具体例を考えて追加する.

 人工界に見られる高温物質・物体からの発光
  >通電加熱による→白熱電球,電気ストーブ,電熱器
  >燃焼加熱による→マッチの燃焼,ろうそくの炎,炭火,ガス燈,たいまつ
  >摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花

同じグループの具体例を良く眺め,識別可能な中間の上位概念を形成する.

 人工界に見られる高温物質・物体からの発光
  >通電加熱による
    >照明器具←白熱電球
    >非照明器具←電気ストーブ,電熱器
  >燃焼加熱による
    >個体の燃焼←マッチの燃焼,炭火,たいまつ
    >液体の燃焼←ろうそくの炎
    >気体の燃焼←ガス燈
  >摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花

作成した中間の上位概念に従い,下位の具体事例を考えて追加する.

 人工界に見られる高温物質・物体からの発光
  >通電加熱による
    >照明器具→白熱電球
    >非照明器具→電気ストーブ,電熱器
  >燃焼加熱による
    >個体の燃焼→マッチの燃焼,炭火,たいまつ,マグネシウムの燃焼,花火
    >液体の燃焼→ろうそくの炎,石油ストーブの炎,アルコールランプ
    >気体の燃焼→ガス燈,アセチレンガス燈,石炭ガスの燃焼炎
  >摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花

更に上位概念を考え,上位概念に従い,新たな明りを追加する.新たな「>固体の燃焼」の具体例を考える場合に,「>金属の燃焼」という枠組みがあれば「鉄の酸素による燃焼」といった具体例が考えやすくなるだろう.

 人工界に見られる高温物質・物体からの発光
  >通電加熱による
    >照明器具→白熱電球(懐中電灯,赤外灯,野外照明灯・・・
    >非照明器具→電気ストーブ,電熱器,電気コタツ・・・
  >燃焼加熱による
    >個体の燃焼
      >金属物質の燃焼←マグネシウムの燃焼,鉄の酸素による燃焼・・・
      >火薬類の燃焼←マッチの燃焼,花火,爆薬
      >炭素系物質の燃焼
        >動植物←炭火,たいまつ,焚き火,薪・・・
        >化石燃料石炭の燃焼,コークスの燃焼
    >液体の燃焼→ろうそくの炎,石油ストーブの炎,アルコールランプ,提灯
    >気体の燃焼→ガス燈,アセチレンガス燈,石炭ガスの燃焼炎
  >摩擦加熱による→火打石による火花,ライターの火花,車輪ブレーキの火花

このように,元の3つのアイディアが25個程度になっており,上位概念の形成と下位の具体的な事柄の発見を繰返すことによって,フレームワークを豊かにして行くことができる.元の3つのアイディアの上位概念から出発したので,例えば,「原子核反応による発光」,「高温物体からの発光」などは落ちてしまっているが,このようなことを避けるためには,「>その他の発光による」という枠組みを残しておくことも配慮しておくとよい.

例題4-9のフレームワークは解答例の表4.7を参照していただきたい.

表4.7: 例題4-9 「どのような明りがあるか」解答例課題:ほんの僅かな光でも目で見て明るさを感じることができれば「明り(あかり)」だとすると、この世の中にはどのような「明り」があるだろうか。
前提条件:

  • 1) ほんの僅かな光でも目で見て明るさを感じる「明り」を「発光体」とする
  • 2) 外部からの一次光を反射または透過して光を発しているように見えるものは発光体に含めない(月光、虹、宝石、「明り」があるところで見える物など)
  • 3) 光を発する生物は外部から取り込んだ栄養素やエネルギー源によって発光するが、自ら発光する発光体の分類に含める(蛍など)
第1階層 第2階層 第3階層 第4階層 第5階層 第6階層 第7階層 第8階層 具体例 備考・補足的内容説明
どのような「明り」があるか 発光体は外部からのエネルギー供給によって光を発する 光共振によらない光を発する 外部から供給されるエネルギーは電磁波または電磁粒子である 発光体が固体である 発光体が外部からの紫外光により励起され、可視光を発する 励起光を遮断すると発光を停止する 励起紫外光の発生に放電を用いない 蛍光体 大気中でも起こる。蛍光塗料、蛍光材(剤)、蛍光顔料、蛍光ペン用インクなど
励起紫外光の発生に放電を用いる 熱陰極蛍光灯(HCFL) 放電管内で生じた励起原子が基底状態に戻る際に発生する紫外線が蛍光体を励起して蛍光を発する
冷陰極蛍光灯(CCFL) 発光メカニズムはHCFLに類似
最近ではLEDに置き換わりつつあるが、LCDのバックライトに使われている
プラズマディスプレイ 原理的にはセルごとに制御可能な微小放電管面に塗布された蛍光体を管内の気体放電により励起して発光させる
励起光を遮断しても発光を持続する りん光
蓄光性夜光塗料
りん光は禁制準位間の遷移。
蓄光とも呼ばれる現象。N夜光塗料(アルミン酸ストロンチウム系、放射性物質ラジウム・プロメチウム系)が代表的。
発光体が外部からの電子により励起され、可視光を発する 電子線照射によって励起される ブラウン管(CRT) 真空中で電子ビームを蛍光体に照射することによって、励起された蛍光体から光が放出される
FED、SED 基本原理はCRTに同じ
電界により励起される
エレクトロルミネッセンス
電子注入によって励起される(注入型EL) LED(発光ダイオード) 電極から半導体に注入された電子と正孔は異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、PN接合部付近にて禁制帯を越えて再結合する。再結合の際にほぼ禁制帯幅(バンドギャップ)に相当するエネルギーが光として放出される
有機EL(有機LED) 有機ELでは有機物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子によって発光する。
電子衝突によって励起される(真性EL) 無機EL 電界により加速した電子が半導体内で発光中心に衝突、発光中心を励起させて発光する。
発光体が外部からの放射線により励起され、可視光を発する 自発光性夜光塗料 蛍光体に混合してある、放射性同位元素の自然崩壊エネルギーを蛍光体励起に用いる
発光体が気体・プラズマである 発光体が人工的な放電現象により励起され可視光を発する 気体アーク放電による 金属原子の高圧蒸気を使う 高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ 水銀とアルゴンガス、水銀にメタルハライドの組合せ=各種メタルハライドランプ(ハロゲンには通常、ヨウ素、臭素が用いられ、メタルにはNa、Li、、Tl、In、Ga、K、Sc、Dy、Nd、Tm、Ho、Th、Feなど。他に金属ハロゲン化物の分子の連続スペクトル発光を利用するもの:SnI2、SnBr2、InI、InBrなど。)
金属原子の高圧蒸気を使わない アーク放電ランプ 通称の水銀灯やキセノンアークランプなど。
キセノンランプにはショートアーク(直流)型、ロングアーク(交流)型、後者をパルス発光させるキセノンフラッシュランプ(いわゆるストロボ)がある
気体グロー放電による ネオン管 代表的なランプはネオン管である
ECR放電による ヘリウム光源(UV光) マイクロ波を用いたECR(Electron Cyclotron Resonance)放電によりプラズマを発生させ、比較的高準位のUV光などを得る
発光体が自然界に起こる現象により励起され可視光を発する プラズマ粒子によって励起される オーロラ 太陽風からのプラズマ粒子によって励起された大気粒子が基底状態に戻るときに発する光である
大気の絶縁破壊により、電子と電離イオンとが励起源となる 稲妻、静電気による放電光、セントエルモの火(コロナ放電) 大気間、物体間の電位差による空気の絶縁破壊により電子が放出され、放出された電子が空気中にある気体原子と衝突してこれを電離させる。電離によって生じた陽イオンは、電子とは逆方向に高速で気体分子と衝突し新たな電子を叩き出す。この2次電子が更なる電子雪崩を引き起こし、持続的な放電現象となって下層へ向って静電気放電光が飛ぶ。
外部から供給されるエネルギーは熱エネルギーである 発光体が(熱エネルギー供給に直接的にかかわり、)直接的に加熱されることによって光を発する 熱エネルギーは物理反応によって供給される 発光体の人工的な直接加熱による 電気的(ジュール)加熱によって 電熱器、電気ストーブ 多くはニクロム線ヒーターが使われている
タングステン、レニウムなどのフィラメント電球 いわゆる白熱電球、豆電球(懐中電灯)
導電体に通電し、ジュール加熱により導電体の温度を上昇させることにより、黒体輻射させる
ハロゲンランプ 蒸発するタングステンフィラメントとハロゲン元素との化合・分解・還元というハロゲンサイクルにより、フィラメントの長寿命化と高輝度化が図られている
真空管 二極管、三極管、マグネトロンなど
熱電子放出を目的としているフィラメントを有するが、電球ほどの明るさではない
アーク放電によって アーク灯 先端を尖らせた炭素の電極棒2本を向かい合わせ電圧を印加し、電極を最初に接触させてから少しだけ離すと火花が発生し、空気中を電流が流れ電極の先端が約4000℃に加熱され青白く輝き始める
アーク溶接光 アーク溶接の際に生じる閃光
レーザ加熱によって レーザ加工時の発光 CO2レーザーなどで金属板を切断する際に生じる光
運動エネルギーが熱エネルギーに転換する現象による 衝突によって生じる 隕石の衝突
火打石、打撃
物体の運動エネルギーが短時間に熱エネルギーに転換され、衝突を受けた物質が高温になることによって光を発する
摩擦によって生じる 流星軌跡の残光 隕石や人工天体の地球への落下によって、空気との摩擦熱の発生により加熱された空気が発熱発光する
車輪のブレーキ駆動時の発光 硬いものどうしの摩擦による発光(例えば線路から発せられる火花)
熱エネルギーは化学反応によって供給される 燃焼(酸化)反応による 固体の燃焼 花火、火薬、爆薬、マッチ、炭火、焚き火、石炭燃焼、金属の酸化、山火事など 石炭、コークス、木材、木炭、たばこ、ろうそく、メタルハライド、線香、硫黄、リン、マグネシウムなど各種固体物質の燃焼において発せられる光
アルカリ金属、アルカリ土類金属、炭素、その他金属の燃焼時には何らかの特有な光が発生する
液体の燃焼 燈明、提灯、ライター、ランプなど 石油、アルコール、植物油、ベンゼンなどの液体の燃焼において発せられる光
気体の燃焼 ガスバーナー、ガスコンロ、アセチレン灯など 水素、メタン、アセチレン、天然ガス、LPGガス、炭化水素系ガスなどの燃焼において伴う光
燃焼(酸化)以外の反応による 何かあるだろう? 塩素酸カリウム、過マンガン酸カリウムなどにより発火・爆発するほどの酸化反応などは単なる燃焼とは違う
発光体が間接的に加熱されることによって光を発する 黒体放射以外により発光する 炎色反応により発光する アルカリ金属、アルカリ土類金属など 気体などが燃焼する高温炎の中に特定の元素を含む化合物を晒すことによって、電子状態を励起させ、それが基底状態に戻るときに特有のスペクトル光を発する
黒体放射により発光する すべての高温物質からの発光 高温物質(固体、液体、気体)の発する黒体放射
固体:熱した岩石・ガラスなど
、液体:溶融金属・塩など、
気体:原理的には高温の気体状態である恒星に同じ
外部から供給されるエネルギーは化学エネルギーである 蛍光物質が他からエネルギーを受けて発光する シュウ酸エステルによる化学発光 系内に存在する蛍光物質が他の分子などからエネルギー移動して励起され、蛍光物質の発光が観測される間接化学発光である
過シュウ酸エステル化学発光ではシュウ酸誘導体と過酸化水素との反応に伴って、共存する蛍光物質が発光するので、過シュウ酸エステル化学発光での発光色は蛍光物質固有の色になる。共存する蛍光物質を変えることにより、発光色を変化させることが可能となる。
光共振による光を発する すべての可視レーザー光 光励起、放電、化学反応、電子衝突等、さまざまな方法で行われる。光励起を用いるものの中には他のレーザー光源を用いる方法もある。また半導体レーザーでは、ポンピングは電流の注入により行われる。
発光体は外部からのエネルギー供給によらず自ら光を発する 非生物発光体 物理反応による 内部エネルギーは核反応エネルギーによる 核分裂エネルギーによる 核分裂反応が自然に起こる(地球などの惑星内部で) 多くの小天体内部、地球の火山・マグマ・高温溶岩 高温マグマによる輻射
超新星爆発などにより鉄より重い元素が作られ、それらが大量に存在するタイプの恒星では内部の核分裂反応により高温状態が作られる
核分裂反応を人工的に起こす 原子爆弾、原子炉 原子炉では核分裂反応を制御しており、通常の状態では光を発することはなさそう
核融合エネルギーによる 核融合反応が自然に起こる(恒星内部における重力によって) 多くの恒星
代表的には太陽
殆どの恒星は内部で主として水素がヘリウムに変化する核融合反応を起こして輝いている
太陽は最も近い恒星であり、地球にとって最大・最強の光源であろう
核融合反応を人工的に起こす 水素爆弾、核融合炉 核融合炉が実現されるとすれば、高温部分は不可欠であり光を発することになるはず
内部エネルギーは運動エネルギーである 運動エネルギーが熱エネルギーに転換される 物体どうしの衝突による 星雲・天体どうしの衝突・隕石の衝突光 衝突によって生じた熱による運動物体側の高温物質から光が放出される
物体の摩擦による 流星・ロケットの大気圏突入時の光 当該物体が高温になることによって光を放出する
運動エネルギーが制動輻射エネルギーに転換される シンクロトロン放射光 高速荷電粒子が磁場中に飛び込んだ際に磁場により回転運動させられることにより(いわば磁場により制動を受け)、磁気制動輻射光を発する
化学反応による ルミノールの化学発光 分子単独で励起状態を形成する直接化学発光である
オゾン、鉄錯体、血液中のヘミンやヘモグロビンなどにより青白い発光を生じる
生物発光体 植物 単細胞生物 単細胞藻類 夜光虫、渦鞭毛藻の発光 植物プランクトンの一種。夜光虫はノクチルカシンチランスというプランクトン。
胞子植物 きのこ類 ツキヨタケ ランプテロフラビンという物質が発光している
種子植物 人工発光植物 発光遺伝子組込み植物 発光酵素(ルシフェラーゼ)の遺伝子を組み込んだ植物
動物 酵素(ルシフェラーゼ)が発光基質(ルシフェリン)を発光させる 単細胞生物 バクテリア 発光バクテリア 発光酵素(例えばルシフェラーゼ)を有する。海産でイカの体表面などに生息する
共生バクテリア ヒカリキンメダイ、マツカサウオ 共生しているバクテリアによる発光
海洋生物 海洋性小型甲殻類 ウミホタル 体内に比較的安定な蛍光物質を有する
ソフトコーラル ウミサボテン
陸上生物 典型的なルシフェリン-ルシフェラーゼ(酵素)反応により発光する
ヒカリコメツキ 蛍と同様
鉄道虫 頭部が橙色から赤色に、腹部が緑色から黄色に発光するホタルモドキ科の発光甲虫
土ボタル(グローワーム) キノコバエ科に属するブヨの一種で、特に幼虫の時におしりの先端が強く光る発光虫
蛋白質が化学反応によって、蛍光を発する 細菌 人工発光菌 発光遺伝子組込み大腸菌 発光クラゲの遺伝子を組み込んだ大腸菌の発光
海洋生物 クラゲ類 オワンクラゲ グリーン蛍光タンパク質(GFP)というタンパク質遺伝子を持つ
サンゴ類 オオカワリイソギンチャク 蛍光タンパク質を持つと考えられている
イカ類 ホタルイカ 10本の足のうち、発光器を持つのは2本の足だけである。そこに強い光を放つ発光器が3つ並んでいる
トビイカ 発光タンパク質シンプレクチンを有する
深海生物 チョウチンアンコウ、ハダカイワシなど 深海魚の半数ほどは発光生物と言われる
陸上生物 ? このタイプの陸上生物もいるだろう

以上のように,通常,ボトムに限らず,枠組みの上位概念を考える,再び下位概念を考える,情報収集する・思考するということを繰返せば自ずと豊かなフレームワークが形成される.具体的な事柄は何も,既知のものである必要はないので,枠組みに沿った新たなアイディアを考え出しても構わない.
充実したフレームワークを作成するには,異なるものどうしの間で,多様な共通するものを見出し,非共通なものを明確に峻別する能力を駆使することである.

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4.4 本章のまとめ

本章では論理思考の第2の応用分野としてロジックツリーを作成し,論理展開することについて学んだ.ロジックツリーに関する約束事の説明を通じて,目的達成志向の切り口,MECEなツリー展開,同一階層内における次元の統一等の概念と表記法を理解した.ロジックツリー作成には論理ピラミッドと同様にトップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチがあった.トップダウン・アプローチにおいては上位目的を達成するために適した切り口による枠組みを設定することが,ボトムアップ・アプローチにおいては具体的な事柄を挙げ,異なるものどうしの間に共通することを見出すことが,そのポイントになるということを学んだ.ロジックツリーの応用においては,発生型の問題における本質的原因の発見,課題解決策・戦略案創出のための枠組み設定,要素への分解などについて具体的に学んだ.更に,ロジックツリーは思考の枠組みとして活用することが可能であり,創造思考を支援するアイディア創出や対人力的課題解決への支援を担うフレームワーク思考の有用性についても学ぶことができた.

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