ロジカルシンキングの日常トレーニング方法!アプリの例題の落とし穴!

1.ロジカルシンキングはトレーニングしなければ身につかない!


「ロジカルシンキング」(論理的思考)は、研修を受講したとか、本を読んで「わかった」だけでは、知識を習得したに過ぎません。「ロジカルシンキング」(論理的思考)を自分の身につけるには、本当は、研修で学んだ知識を、下手でも実務で使い始めることが望ましいのです。

しかし、それがなかなか難しいために、まず、多くの例題に取り組む日常的なトレーニングが必要だと言われています。

そこで、本やインターネットサイト、最近ではスマホの専用アプリに載せられている例題・練習問題に取り組むトレーニング方法が考えられますが、これらの練習問題を使ったトレーニング方法に落とし穴はないのでしょうか。

そもそも、ロジカルシンキングを身につけるために、どうして日常的なトレーニングが必要なのか、どのようなトレーニング方法が有効なのか、更に、何故、トレーニングによって次第に身について行くというのでしょうか。

今回は、例えば、パソコンの操作方法をマスターするといった、単なる知識・テクニカルスキルではなく、例えば、問題解決のために使って成果を出せるような「ロジカルシンキング能力」を身につけるための、日常のトレーニング方法について、アプリ活用の危うさにも触れながらご紹介させていただきます。

このページをご覧になっているあなたが、「ロジカルシンキング力」を向上させたいとお考えなら、どうか最後までお付き合いください。最後まで読んでいただければステキなプレゼントがありますよ。

パソコン教室に参加したら、それなりにパソコンが使えるようになるのに、「ロジカルシンキング研修」に参加しても、研修終了後に論理的思考力が向上したという実感が伴わないのは何故でしょうか。

パソコン教室では、説明を聞いて実際にパソコンを操作し、パソコンを使うためのひと通りの作業を体験・確認しながら、使い方を学びます。この一連の過程では、誰でも、通常、説明された通りの作業を実施すれば、多少の紆余曲折があっても操作方法をマスターすることができます。

「ロジカルシンキング」研修では、講義を聞いているだけでは「なるほど、わかった」という知識の習得に留まりますので、通常は、講義に加えて、練習問題に取り組む機会があります。そこで、自分の頭で「どう考えれば良いのか」といった思考を働かせ、練習問題の解答を紙や白板に「書く」ことによって、考えを整理し表現することにより“思考体験を蓄積”することになります。

しかし、実はこれが「ロジカルシンキング」が「使える」ようになるための、ほんの第1歩に過ぎず、まだ、到底「使えない」状態なのです。「ロジカルシンキング」能力は、研修で踏み出した第1歩の後に、このような“思考体験の蓄積”を繰り返すことによって、次第に身について行くわけです。

やがて、何度も自分の頭で考えた“思考体験を蓄積”する修練を積むことによって、ようやく論理的思考力が向上したという実感が持てるようになって来るのです。言い替えれば日常的なトレーニングを必要とする理由は、“思考体験を蓄積”する修練を積まなければロジカルシンキング力・論理的思考力が身につかないからです。

しかし、現実はどうでしょう。せっかくロジカルシンキング研修を受講しても、実務で使うどころか、自ら例題・練習問題に取り組む日常トレーニングなど実施していないのではありませんか。それでは、身につくわけがないですね。

本番で「使える」ように身につけるためのトレーニングには、「ロジカルシンキング」の本やインターネットサイトなどの例題・練習問題に取り組み、自分の頭で考え解答を書く、つまり「ロジカルシンキングを使う」ことを日常的に繰り返すことが有効な方法です。

不退転の決意を持って、今後の日常トレーニングに臨まない限り、ロジカルシンキング力は決して身につくことがないでしょう。

2.日常トレーニングにスマホ・アプリの例題で大丈夫?

例題・練習問題に取り組む日常的トレーニングの必要性はわかっていただけたと思いますが、トレーニングの効果的な方法について、真面目に検討しておきましょう。

1)“思考体験の蓄積”における「書く」ことの重要性

まず、“思考体験の蓄積”とはどのようなことでしょうか。身近な例で、例えば、日本語の漢字を書けるようにトレーニングする場合について考えてみましょう。

特別な才能のある例外的な人を除いて、単に、書けるようにしたい漢字を眺めていただけでは、何度眺めていても簡単に書けるようにはなりませんね。普通は、実際に漢字を何回か正しく「書く」という動作を繰り返すことよって、書けるようになるものだと思います。

更には、その漢字を含む単語や短文を何回か「書く」と、漢字の使い方・読み方・意味などを深く理解し、“思考体験の蓄積”的に身につきます。勿論、人の好みや特性によって状況が異なる可能性は否めませんが、一般論としてこうした傾向があると言えるでしょう。

つまり、「書く」ことの本質は、実際に手を動かすことで脳を刺激し、活性化させ、「実際に書く」ことの経験として脳に刻まれていくので書けるようになるというわけです。外国語の単語の意味や綴りをマスターするのも同様でしょう。


ロジカルシンキングについても全く同じで、実際に書くことで脳を刺激し活性化させ、論理的に考える脳を鍛えることにつながり、経験として脳に刻まれ、結果としてロジカルシンキング力の向上がはかられるわけです。

かくして、少なくとも「実際に書く」、つまり脳を刺激し活性化させ、経験(体験)の積み重ねを行うことが、ロジカルシンキング力を養うために必要な“思考体験の蓄積”的トレーニングとなること、これが非常に重要であるということをご理解いただけたと思います。

書くことの重要性について、更に具体的に知りたい場合には、以下のリンクが参考になると思います。
「書く」ことで、なぜ人生に差がついたのか?脳にいい【成功者の習慣】

2)「ロジカルシンキング」アプリの例題では?

では、“思考体験の蓄積”的なトレーニングはスマホの「ロジカルシンキング」アプリのようなもので実現可能でしょうか。スマホのアプリでロジカルシンキングの例題に取り組むということを考えてみましょう。

一般論としてはスマホ特有の本来的特性(ハンディなモバイル性、小サイズ画面、限られた操作自由度等)故に、利用者が例題に対して「紙に解答を書く」あるいは、スマホ画面で「解答文などを入力する」というケースは少ないと考えられます。つまり、思考まではするけれど、自ずと“思考体験を蓄積”する機会は乏しくなるのではないでしょうか。

従って、具体的に使用するアプリが“思考体験の蓄積”的なトレーニングに特別に適しているような可能性が見いだせない限り、ロジカルシンキングの例題に取り組むトレーニングは時間の割に大した効果が期待できませんので、あまりお勧めできないということです。

もし、どうしてもスマホのアプリによる例題を活用したいというのでしたら、解答を考える過程で、問題をプリントした紙面に解答を書くなど、何らかの方法によって「書く(ことを伴う“思考体験の蓄積”的なトレーニング)」と同等の“思考体験の蓄積”が実現できる手立てを講じましょう。

3.ロジカルシンキング力は日常トレーニングによって身について行く

これから、ご紹介する本項「3.ロジカルシンキング力は日常トレーニングによって身について行く」に関する説明は、統計データや測定値に基づいたものではなく、多くの研修受講者の成長を見て来た筆者の、学習と実務体験に基づく考察によるものです。

従って、その点をご承知の上でお読みいただきたい内容ですが、きっとトレーニングによって能力が向上して行く様子のイメージは共有でき、有用だと思いますので、一通り眼を通していただきたいと存じます。

1)“思考体験を蓄積”する「場」数を踏むことで能力が向上する

「ロジカルシンキング力」が“思考体験を蓄積”する「場」数を踏むことによって向上して行く様子をイメージ化して示すと次の図のようになります。

横軸にはロジカルシンキング力(論理的思考力)を実際に活用して“思考体験を蓄積”した「場」の総数をとってあります。「場」の総数と言っても単なる回数ではなく、例えば、スポーツ競技のランキングに関わる獲得ポイントが、同じ1回の出場でも大会や順位で異なるように“質的な重みが掛け合わされた数”とご理解いただきたいと思います。

“思考体験の蓄積”「場」数が能力を向上させることを説明するイメージ図

例えば、難しい練習問題に取り組んで、やっと満足できる解答を作成した場合と容易な練習問題の解答を作成した場合とでは、前者の方が困難さの程度が高いと考えられます。論理的思考力を発揮して困難を乗り越える“思考体験の蓄積”を通じて、同じ1回の練習問題に取り組んでも、前者の方がより大きく、図の横軸を右に進むことになります。

このように、図の横軸は質を内包した“思考体験の蓄積”の「場」数であり、いわば「修練の大きさ」を合計した値と言い換えることもできます。従って、図の横軸をどれだけ右方向に進むかは努力にも大いに関係があります。

2)能力の向上は環境にも左右される

体験「場」というのは、往々にしてその人の置かれた環境や偶然に支配される傾向があります。例えば、同じ企業に身を置く人であっても思考業務のウェイトが大きい仕事にタッチしている人とマニュアル業務比率の高い人とでは、明らかに前者の方が「ロジカルシンキング」(論理的思考)を使う「場」数が多くなりますので、能力の向上機会に恵まれます。

3)能力の向上は個人差があるが誰でも可能

図の横軸が“思考体験の蓄積”の「場」数を示している一方、縦軸は「ロジカルシンキング力」(論理的思考能力)の高さを示しています。

この図に、例えば、AさんとBさんが、それぞれ、“思考体験を蓄積”する「場」数を踏んで「ロジカルシンキング力」が伸びて行く様子をイメージ化した2人の「ロジカルシンキング力」向上曲線が太線で示されています。

2人の「ロジカルシンキング力」向上曲線に個人差が見られますが、それは「動機や資質的な要素」によって違いが生じているとご理解いただきたいと思います。

負けん気の強い人もいれば、一生懸命に頑張れる人もいるなど、持って生まれた頭脳や精神・肉体も能力向上曲線の形状に関係しています。生まれつき頭の良い人や運動神経の優れた人がいるのは事実であり、個人差はある意味ではどうしようもない面があります。

例えば、経験の割りに基礎能力の高い人もいますが、その能力向上曲線の勾配は大きく、つまり、少しの訓練で能力が大きく伸びるといった傾向になるということです。

しかし、明確に言えることは「横軸を右に進むことによって曲線上を上昇する」、すなわち「誰でもロジカルシンキング力を使うことによって(=修練を積むことによって)能力が向上する」ということです。逆に、資質の高い人でも修練を積まなければ伸びないとも言えます。ちょうど「才能」と「努力」の関係にあると理解しても良いでしょう。

例えば、図から「ロジカルシンキング力」に関して、Aさんは同じ能力を向上させるために多くの「場」数を必要としているなど、資質的にはBさんに及ばないようですが、努力して多くの「場」数を体験することによって、表面に現れている能力は現在のBさんより高いと見ることができるでしょう。

あるいは、現在の若手Bさんの「ロジカルシンキング力」は、“思考体験の蓄積”「場」数が少なく、以前から同じ仕事をやっているベテランのAさんには、まだかなわないと読取ることも可能です。

しかし、Bさんが更に「場」数を体験すればやがてAさんを超える可能性があるといったことも言えます。

4)日常トレーニングの意味

次の図はトレーニングや実践によって、つまり、“思考体験の蓄積”の「場」数によって能力が伸長して行くミクロな変化をイメージ化したものです。

トレーニングによって能力が身について行くことを示すイメージ図

図において「1回目トレーニング」とあるのは、「ロジカルシンキングの練習問題1題に取り組んで、自分の頭で考え、解答を書く」と捉えても宜しいでしょう。

第1回目のトレーニングでは時間がかかる割りに能力はそれほど伸びず、伸張した能力はトレーニング終了時点から急速に減衰します。放っておけば元のスタートレベルまで低下してしまいます。第2回目のトレーニングでは少し短い時間で再び能力を回復し、第1回目トレーニング終了時点より高いレベルまで達します。

5)手を抜くと能力は減衰する

しかし、やはりそのまま放っておけば能力はスタートレベルに向かって減衰して行きます。第3回目のトレーニングでは、更に短い時間で第1回、第2回の終了時点より高いレベルに達します。ただ、前回より減衰は緩やかですが、放っておけば能力は低下してしまいます。

かくして、何度かのトレーニングの繰り返しによって能力は高いレベルに達するとともに、極めて緩やかな減衰、実質的にはフラットな状態で保持されるようになります。その状態が「能力が身についた1人前の状態」なのです。更に磨けば少しずつ上昇を続けて行き、やがてプロフェッショナルのレベルに到達します。

ところで、ロジカルシンキングの練習問題と言っても、易しいものから大変難しいものまでありますので、それぞれ能力が身につく程度は様々です。

ロジカルシンキングの同じ分野、例えば「論理ピラミッドの構築(主張・説明論理の組立て)」分野に代表的な「1枚のロジカル・プレゼンテーション・シート」を作成する練習問題を仮定しますと、普通の人なら、通常10回くらい、つまり「10枚くらいの異なるプレゼンテーション・シート」を作成すると、「ロジカル・プレゼンテーション・シート」作成については1人前の能力が身についたと考えて宜しいでしょう。

勿論、1~2回で1人前になってしまう“チョー”優秀な人もいれば、中には30回もトレーニングしなければ1人前になれない人もいます。

ロジカルシンキング分野は大きく分けて15分野くらいありますので、各分野についても同様にお考えいただきたいと思います。

当然ながら、“思考体験の蓄積”としての実践の「場」を確保するということは必須ですが、論理的思考力に関する限り、日常の大半は実践の「場」にいるようなものです。つまり、 OJTが可能です。

あなたにお伝えしたいことは、「誰でも修練を積むことによって論理的思考力は向上する。最初は下手でも構わないから、意識して実務で何度も使いなさい。」ということです。ただ、残念ながら、「誰でも同じように能力が向上する」ということではありませんので誤解のないようにお願いします。当然、効率の良い人とそうでない人、向き不向きなど個人差があります。

4.ロジカルシンキングを意識して活用する

1)意識して活用しよう

トレーニングの実施に際しては、「今、自分はロジカルシンキングによって課題に取り組んでいるのだ」と意識して取組むことが効果的です。スポーツのトレーニングの場合と同じですね。体幹トレーニングであれば、体幹筋を鍛えていることを意識するという具合に。

また、日常業務の中で、今日はどのような場面でロジカルシンキングを活用しようか、あるいは、先週はどの仕事でロジカルシンキングを使ったかといったことを毎日、毎週の計画と振り返りにおいて、必ず実行することも検討してみましょう。

2)身近な人を活用しよう

身近な人と「ロジカルシンキング」(論理的思考)を使う場面で意見交換する・相談するのも宜しいでしょう。また、身近にいるハイパフォーマーを見習う、あるいは目標にする、アドバイザーにするなども能力を伸ばすには効果的です。

5.戦略的なトレーニング方法で「ロジカルシンキング力」を身につけよう!

それでは、ここまで読んでいただいたあなたに、「とっておきの大事な提案:トレーニング戦略」をプレゼントしましょう。この提案は、筆者がロジカルシンキング研修を実施した際に、受講者の皆さんに最後にコッソリお話した内容ですが、あなたにもご納得いただけるロジカルな提案だと思います。

さて、1年間は12か月ですね。
では、今後、1年間の仕事を11か月で終えることができますか。もし、それが可能でしたら、余った1か月分の時間のすべてをロジカルシンキングのトレーニングに充てましょう。

11か月で終えることはとても無理というのでしたら、12か月で終える仕事を、内緒で13か月かけて終えるようにしましょう。その代り、1か月分はすべてロジカルシンキングのトレーニングに充てましょう。

勿論、その「1か月分のロジカルシンキングのトレーニング」は、1年間の仕事の合間にちりばめて、確実に合計1か月分を充当すれば宜しいのです。

このように考えていただくと、あなたは、今後、例えば5年間ないしは5年と5か月間、仕事をしながらロジカルシンキングのトレーニングだけを合計5か月間、確実に実施することができることになりますね。

するとどうでしょう。5年ないしは5年5か月後の自分を想像してみてください。その5年ほどの間には、ロジカルシンキング能力も向上して行きますから、ロジカルシンキングの本の例題・練習問題などではなく、実務にロジカルシンキングを使う経験も積んでいると考えられます。

それ故、当初、最悪の場合5年5か月の予定で仕事を終えるつもりであったとしても、随所で論理的思考力を発揮していると予想されますので、仕事の効率も向上し、業務時間の5か月分くらいは短縮され、結局のところ、5年間で想定以上の成果を挙げている可能性もあります。

その時点で、きっと、あなたは「ロジカルシンキング力」(論理的思考力)の豊かな、バリバリの有能なビジネス・パーソンに成長しているはずです。

従来通りに5年間仕事をしてきた人と、もしかすると5か月間、仕事を遅らせてしまったかもしれないけれど、バリバリの論理的思考力を身につけた人とを較べて、今後、どちらが自分にとって、更には所属する組織・企業にとってプラスになるのか、明らかですね。

是非、この提案を受け入れていただき、今からすぐに決意を持って実行開始しましょう。

まとめ

「ロジカルシンキング力」(論理的思考力)を向上させるための日常トレーニングの必要性、方法、効果について紹介するとともにトレーニング戦略を提案させていただきました。

  • 「ロジカルシンキング力」を向上させるために日常トレーニングが必要である理由は、“思考体験を蓄積”する修練を積まなければ身につかないから。
  • “思考体験を蓄積”するには「考える」だけでなく「書く」ことが重要であり、スマホのアプリでは例題・練習問題に取り組んでも時間を無駄にする恐れがあるためお勧めできない。
  • 置かれた環境や個人差によって能力の向上には違いがあるが、「ロジカルシンキング力」は誰でも日常トレーニングによって次第に身について行く。
  • 1人前になる前に、日常的トレーニングを怠ると「ロジカルシンキング力」は減衰してしまう。
  • 1年間ないしは1年と1か月間のうち、1か月間をロジカルシンキングの日常トレーニングにグに充てる決意を持って、今からすぐに実行開始しよう。

このページでは、説明のために、修練によって人の能力が成長して行く様子をイメージして図に描きました。修練して腕を磨いて行くスポーツや楽器演奏などにおいても、人の能力の成長は同様なイメージになると考えられますが、実測した能力上昇カーブのようなものがあれば見てみたいものです。