問題解決プロセス

第2章 問題解決の主役:続きページ(3)→2.4.1 本質的問題・課題を明確化する(課題形成プロセス)

2.4 問題解決のプロセスを正しく理解しよう

問題の分類とその解決方法にはここで紹介している考え方以外にも様々な方法がある.世の中に「~問題解決法」という名称がついた書籍やセミナー・研修が実に沢山ある.どのような「問題解決法」であっても解決したい「問題」が本当に解決できるならそれで良いと思う.

本書で紹介する問題解決法は,既に説明したように「問題」にもいろいろあって,問題のタイプに適し た解決アプローチ手法があり,それらすべてを共通の「ロジカル・シンキング(論理的思考)」という普遍的な考え方をベースにして解決する総合的なプロセスとして提案しているものである.

問題解決のプロセスというと「ある決められたプロセス」があって,そのプロセスに従って進めることになるので,本節はやや手法的な説明になるがご容赦願いたい.ただ,このように進めると旨く行くという経験から,まずは,忠実に「決められたプロセスに従って」問題解決に取組んでいただきたい.

慣れてくればコツが掴めるようになり,お仕着せのプロセスを柔軟に使いこなせるようになるものだ.繰り返し実施すれば問題解決能力は確実に磨かれる.

課題形成,解決策立案,実行の3 ステップで

通常,問題解決の手順は,先に示した「図2.1: 問題の定義と解決の関係」からイメージされるように,大きくは「問題の設定」と「問題の解決」という2段階に分けられる.世の中で提案されている問題解決プロセスについては,例えば,システム企画研修(株)「一般的問題解決手法の概要」等においても紹介されているので参照いただきたい.

ただし,単に「問題を設定」して「問題の解決」に取組むというのでは短絡に過ぎない.前段の「問題の設定」における要点は「一体,問題の本質は何であり,どのような課題を解決すれば問題が解消できるのかを明らかにする」という点にあり,解決すべき課題の明確化がゴールとなる.

続く後段の「問題の解決」においては前段で「明らかにした課題の最適な解決策を考える」ことが要点となり,当然ながら「解決策を実行する」ことが含まれる.

そこで、ここでは問題解決のプロセスを図2.3に示すように

問題解決のプロセスは大きく分けて
1) 課題形成プロセス(論理的思考能力を活用する)
2) 解決策立案プロセス(論理的思考能力と創造思考能力を活用する)
3) 実行プロセス(論理的思考能力と対人力を活用する)
の3ステップに分けられる.

という考え方で解説して行く.

問題解決プロセス全体の基本枠組み
図2.3: 問題解決プロセス全体の基本枠組み

図2.3 にはプロセスの前段に「あるべき状態」と「現状」も描かれているが,「課題形成プロセス」には問題(すなわち「あるべき状態」と「現状」とのギャップ)を認識することを含むので,誤解のないように捉えておいていただきたい.

以下,このプロセスの順に説明して行くが,その前に問題解決プロセスの全体を通じて重要な前提となる2,3の事柄について触れておくことにしよう.

寝ても覚めても目的達成志向で

どのような問題解決法を使うにしても問題解決において常に共通的に意識しておかなければならないことがある.それは何のために問題解決に取組むのかということを意識して取組むということである.

すなわち,問題解決には必ず目的があり,常に目的達成志向で問題解決に取組むことが肝要である.目的を明確にし,目的に合った方向に進むという考え方は論理的思考の基本的な姿勢である.

目的達成志向を持たずに問題解決に取組んでも無駄が多く,大変効率が悪いか,解決することができないまま力尽きてしまうような結果に終わる可能性が高い.問題解決プロセスにおけるどの段階においても,目的達成志向を持って問題解決に臨むことは非常に大事なことであり,今後の具体例の説明などを通じて触れて行く.

可能な限り上流で前提条件を確認・設定しておこう

問題を設定する,問題を解決するといった際には,その問題の範囲や境界が曖昧な状態では果たして問題が適切に設定できているのか,あるいは問題解決が適切に進められるのか等について正しく判断することができない.

どのような問題においても必ず何らかの前提条件というものが存在するので,問題解決に取組む際には前提条件を明確にして進めることになる.

問題解決に際しては,可能な限り「より上流プロセス」において,前提条件を明らかにしておくべきである.既存の制約条件となっているような前提条件や与件には疑いを持ち,先入観に惑わされず改めて確認し見直す必要がある.

同時に不合理でない適切な前提条件を明確に設定して進めるべきである.適切な前提条件の設定は課題を明確にし,どうでも良いことに無駄なエネルギーを使わず,考察を助け,本質部分に集中して頭を使えるようにするために大変役に立つ.

しかし,実際は下流プロセスに進んでから前提条件の設定必要性に気づくことも多く,「より上流プロセス」での設定が望ましいが,必要な段階で随時設定しても差し支えない.それ故,「前提条件の確認・設定」は問題解決の全プロセスに共通的な要素として捉えておくと良いだろう.

発散・収束,仮説・検証しながらスパイラルに進む

問題解決は多くの場合,プロセスに沿って直線的に進められるわけではない.一段階進むと,その先に進めるためにどこかしらの前のプロセスに戻り,内容を深化させて再度同じプロセスをたどることによって,更に一段階進むという具合にスパイラルに進むものである.

複雑な問題は分解して扱う

規模の大きな問題や複合的な問題に対しては,そのまま扱うと手に負えなくなる恐れがある.少なくとも予め切り離し可能な個別の問題に,出来うる限り徹底して分解してから取組むべきである.その際,分解した個別の問題の相互の関係を明らかにし,前提条件として設定しておくと良いだろう.

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